76.大精霊との契約 ☆
現在、いつもの集まれる場所にてソファーではなく、正座させられている私。
今回はカレンにアニスまで加わっているので、人口密度が上がってるというのに、この部屋の広さには余裕があるので暑いという事もなかったり。
なんてどうでも良い事を考えるくらいには、色々と言われているわけでして、はい。
いやね、ちゃんと経緯は説明したんだよ?
したんだけど、詳しい事なんて私自身分かっていないわけでして……。
「蓮華さん、蓮華さんがモテてるのは凄く、すんごーく理解してるよ?理解してるけど、行く所行く所で人を魅了しちゃうのはどうなのって思うんだよぉ!」
「はい、すいません」
「心がこもってな-い!」
「えぇぇぇー!!」
なんてやり取りをアリス姉さんとしているんだけど、どうしたら正解なの、これ。
「蓮華お姉様が正座して怒られてるなんて、なんてレアな……アニス、心のフィルムに焼き付けておきますわよ!」
「はいカレンお姉様、もちろんです。すでに永久保存しています」
この双子、息ぴったりなのは良いんだけど、原因なんだから助けてほしい。
「聞いてるの蓮華さん!」
「はいぃっ!!」
なんてやり取りをしていたら、突然笑い出すアーネスト。
「ぶはっ!ははははっ!もういい加減勘弁してやれよアリス。蓮華だって、多分なんでそうなったか分かってないぜ?」
「それは、そうなんだけどー」
「それに、そんな蓮華だから好きになったんだろ?なら、俺達の方が慣れていかないとな」
「むぅ、そう言われちゃったら否定できないけど。はぁ、仕方ないなぁ……蓮華さん、妹分を増やすのは別に構わないけど、蓮華さんのお姉さんは私なんだからねっ!」
なんて意味の分からない事を言ってくるから、答えるけど……。
「えっと、言葉の意味はよく分からないけど、私のただ一人の姉さんは、アリス姉さんだけだよ?」
「うぐぅっ!?」
なんか変な声を出して、心臓を押さえているアリス姉さん。
なんか、初めてアリス姉さんって呼んだ時に似てる気が……。
「って事は、俺はただ一人の兄貴ってわけだな!」
なんて笑って言うけど。
「え?違うよ?私のたった一人の兄さんはロキさんだよ?アーネストはなんていうか……親友じゃん」
「ぐはっ!あ、ああ、俺もうそれで良いや……」
アリス姉さんとアーネストが悶えているんだけど、なんでこんな普通の事を確認しただけでそうなるの。
「流石ですわ蓮華お姉様。いとも容易くお兄様とお姉様を撃破なさるなんて。そこに痺れますわ!」
「はい、憧れます!」
二人が言ってくるけど、別に倒してないからね。
「というかカレン、アニス。私は学園でお姉様と呼ぶな、と言ったよね?」
と軽く睨んだんだけど、平気な顔で返してくる。
「はい、確かに蓮華お姉様はそう仰いましたけれど、どうせいつかポロッと出てしまうに決まっていますわ。なら、最初に公にしておけば、以降気にしなくて良くなるではありませんか」
それは、そうなんだけど。
くっ、理解しちゃいけないのに、確かにとか思ってしまう!
「ってちょっと待て蓮華。なんでそういう話ができたんだ?」
「うん?どゆことアーネスト」
「だから、お姉様と呼ぶなって奴だよ。もしかして、蓮華はこの二人が来る事を知ってたのか?」
「あー……。知ってたわけじゃないよ。ただ、私が学園に行くって話をしたら、きそうな会話をしたから、もし来るなら呼ぶなって言ったんだよ」
「あ、ああ、成程な」
皆も納得したようで。
そろそろ言いたい。
「あの、そろそろ正座、解いても良い?足が痺れてきたんだけど……」
と、おずおずと言ったら、皆が笑い出した。
理不尽だ。
アリス姉さんからお許しが出たので、立つと足がジンジンするぅ……。
このこしょばいような、なんともいえない感覚、昔から慣れないんだよね。
気を取り直して、セルシウスに問いかける。
「セルシウス、アニスをちょっと見てくれる?」
「彼女を?……ふぅーん、氷の適性があるのね」
流石、一発で見抜いたみたいだ。
「できたらで良いんだけど、アニスと契約したりできる?」
「はぁ、レンゲ、貴女ね……」
呆れた顔で見られるけど、だってカレンはサラと契約したんだよ。
妹のアニスだけできないなんて、なんていうか……。
いや、アニスは多分自分ができなくても構わないだろう。
カレンが契約できた事を、自分の事のように喜べる彼女だ。
そんな彼女だからこそ、契約して欲しいと思う。
「セルシウス」
「あぁもぅ、分かったわよレンゲ。良いアニス、私は契約とか、ほんっとうにしないの。だから、レンゲに感謝しなさい」
「セルシウス様……!ありがとうございます……!蓮華お姉様、このご恩は一生忘れませんっ……!」
本当に嬉しそうに言ってくれるアニス。
いやでも、一生とか大げさだから……。
「あの顔は、どうせそんな大した事じゃないと思ってるよね、アーくん」
「ああ、間違いないな」
うぐっ……あの二人は私の考えてる事なんてお見通しなのが悔しいんだけど、今回のは事実じゃないか。
「蓮華お姉様、大精霊と契約できた人間が、歴史上どれほどおられるかご存知でしょうか?」
とカレンが聞いてくる。
え、その聞き方だと、少ないんだろうか。
「えっと……100人くらい、とか?」
全員が苦笑する。
げ、これは間違えた反応だ。
もっと多かったのかな、恥ずかしい。
「蓮華お姉様は本当に……。聡明なお方ですのに、どこかずれておいでですわね。そこがまた魅力的なのですけど……。蓮華お姉様、正解は私で2人目です」
え!?嘘!?
「一応言っておきますけれど、最初の1人は蓮華お姉様ですわ」
え、えぇぇぇ!?
いやだって、皆簡単に、っていうか向こうから契約してきたし、きっと皆してるもんだと……!
「あくまで個人間で、という事ですけれどね。種族での加護とは別で、大精霊が個人間で契約をした方なんて、聞いた事がありません。蓮華お姉様を除けば、私とアニスで2人ですわ」
そう、だったのか。
そりゃ、皆が苦笑するわけだ。
私はその辺の事をまったく理解していなかった。
でも……それを知ってても、アニスには契約してほしかった。
それに、もう大事な友達だ。
友達が強くなるなんて、素敵じゃないか。
「はい、おしまいよ。これで貴女には私の加護があるわ。それは、今の私が例え死んでも続く加護よ」
「ありがとうございますセルシウス様!ですが、例えでもそんな悲しい事は仰らないでください。私は蓮華お姉様とセルシウス様との繋がりを、宝物に思っておりますから」
そう微笑むアニスは、年頃の女の子に見えて、可愛らしかった。
そこに、空気を読まない者が一人。
「セルシウスさん!俺も、俺もセルシウスさんの加護が欲しいです!!」
「嫌よ」
「ぐっはぁ!?」
一刀両断すぎて、笑ってしまった。
「な、何故ですか!?」
「私は貴方に興味ないもの」
答えが前と全く変わっていない。
明先輩、全然関係が進歩していませんね……。
「レンゲさん、レンゲさんからも言ってくださいホントお願いします……!」
泣きそうに頼んでくる明先輩を見て、いたたまれなくなったので、聞いてみる事にした。
「え、ええとセルシウス、理由とか、聞いても良い?」
「はぁ、正直に話すなら、そこの彼には氷の魔力の適性が無いわ。だから、私の加護は受けれない、そういう事よ」
しっかりとした理由があって、項垂れる明先輩。
ちなみに何の適性があるんだろうか。
「はいはい、聞きたいのねレンゲ。風よ、だからシルフね」
聞く前に答えてくれた。
私はそんなに分かりやすいだろうか。
ともあれ、聞いてみるか。
「えっと、明先輩。シルフなら私と契約してるから、呼べるよ?聞いてみる?流石に断られたら、私にもどうしようもないと思うけど……」
「本当かい!?なら、お願いしても良いかな?」
そう言ってきたので、シルフを召喚してみた。
「やぁレンちゃん、久しぶりだね!ボク全然呼ばれないから、寂しかったよ?」
そう私の周りを飛び回るシルフに苦笑して返す。
「あはは、ごめんね。私も学園で色々大変で」
「ふふ、分かってるよレンちゃん。ちゃんと行く前に聞いてるからね。それで、今回はボクに何をしてほしいの?レンちゃんの頼みなら、なんだって聞くよ?」
そう言ってくれるシルフに、明先輩を紹介する。
「へぇー、アキラくんは風の適性があるんだ。うーん、一つだけ聞いて良い?」
「ええ、俺に答えれる事ならなんでも」
「うん、聞きたいのは簡単な事。レンちゃんの身にもし危険が迫ったら、守ってくれる?」
「当然ですよ。レンゲさんは友人だし、親友のアーネストの妹ですからね。それは契約とは関係なしで構いませんよ」
「ふふ、そっか。君の周りの風に、全く揺らぎが無かったし、本心な事が分かったよ。うん、良いよ!アキラくん、よろしくね!」
そう言って明先輩とシルフは契約をしたみたいだ。
うん、良かったね明先輩。
その力を使い熟せれば、今よりもずっと先へ行けると思う。
私はオールラウンダーなせいもあって、一つの力を極める事ができていない。
だから私より速く、カレンもアニスも、明先輩も上に行くと思ってる。
うん、頼もしいね。
大事な友達だ、強くなって欲しいと思う。
「あら、初めて少しだけ好感度が上がったわよ」
「ホントですか!?やったぜ!!」
言いながら小躍りを始める明先輩。
アーネストも一緒に踊りだした。
何やってんのアーネスト……。
言ったセルシウスはまた溜息をついている。
……これが無ければ、明先輩は本当に良い先輩だと思うんだけど。




