714.蓮華side72
「行くぞ白騎士っ!」
「遊んでやろう……!」
正面から仮面へと斬りかかる。
けれど流石はアーネストの体を操ってるだけの事はある。
余裕で受け止めた。
「その程度か。ならばこちらからも行かせてもらうぞ。『アルティメットストライク』」
「くっ!?」
アーネストの得意技を、こいつも使えるのか……!
凄まじい速度の剣閃、以前までの私だと避けきれなかっただろう。
「ふむ……やるようだな」
「アーネスト、いや白騎士。お前の力は、お前のものじゃない。その体は、アーネストが鍛えて、努力して、至った。その想いを、お前なんかが継げると思うなよ……!」
「……」
少し体を振るわせたように見えた白騎士だったが、その奥から見える瞳からは、何故かアーネストの眼そのままに感じた。
「返してもらうぞ、私の大事な親友を……!」
「フン、不可能だと知れ……!」
私と白騎士が戦いを続けている中、四聖天アクエリアスとの戦いも見えていた。
「ククッ……どうした、四人合わせてその程度か?」
「やっぱりこいつ反則じみた強さしてるデスよ……!」
「銃も当たりませんか、厄介ですわね……!」
「これが『ゲート』を扱える者と、そうでない者との差、という事ですか……!」
「です、が、引け、ません……!」
魔神将の二人は『ゲート』を扱えているけれど、力量がアクエリアスの方が上。
カレンにアニスは力量だけならばアクエリアスに遜色ないけれど、『ゲート』を扱えない為ダメージを与えられない。
あのままだと次第に押されて負けてしまうだろう。
私が早く白騎士の仮面を壊さなければ……!
「はぁぁぁぁっ!!」
「フ……どうした。何を焦っている? それでは俺を倒す事などできはしない」
「くっ……」
アーネストの体を気遣いつつだと、これは無理だな。
ごめんアーネスト、でもお前が悪いんだからな。
「!!」
私は力を解放する。
その仮面、粉々にしてやる……!
「ふむ……潮時だな。我が盟友アクエリアスよ、ここは退くぞ」
「良いだろう。お前を得られたのならば、『ヴィシュヌ』様も満足していただけるだろう」
「!! 待て……!」
「また会おう」
「!!」
そう言ってアクエリアスとアーネストの姿が消える。
魔力探知にも引っかからない、完全に別の世界へと移動したようだ。
「アーネスト……!」
また私は、アーネストを助けられなかった……!
いつもそうだ、アーネストはいつも私を助けてくれるのに、私は……!
「……。蓮華、そう思い詰めるものではありません。確かに私も不覚を取りましたが、何もしていないというわけではありませんよ」
「え?」
「『ヴィシュヌ』の場所を知るチャンスでもありましたからね、あえて泳がせたのです」
「!!」
「まずは、この『ワイドランド』を消滅させましょう蓮華。ブリランテ、いけますね?」
「はい、お任せくださいロキ様」
先程まで傷だらけで戦えそうになかったブリランテさんが、今は傷一つない。
凄い再生能力だ。
「……(さて、後は上手くやるのですよアーネスト。こちらは私がフォローしておきましょう)」
「兄さん?」
「おっと、なんでもありませんよ蓮華。コアのおおよその位置ならばすでに把握できていますから、行きましょう」
「うん、分かったよ兄さん」
アーネスト、待っていてくれ。必ず、助ける。
「「蓮華お姉様」」
「うん? どうしたの二人とも」
「私達は、強くなった気でおりました」
「はい」
「うん、普通に強いと思うよ? 普通にってなんだっていうのは置いといて」
あのアクエリアス相手にだって、『ゲート』が使えたなら決して劣っていたとは思わない。
「ありがとうございます。ですが、私達はあの騎士相手に手も足も出せませんでした……」
「はい……」
「それは仕方ないんだ。2次元の者が3次元の者を視覚出来ないように、高次元の存在に……」
「どうしたら、私達もあの力に対抗できますか!?」
「……」
「やっと、蓮華お姉様の、力になれると、思いました。なのに、最初から、これでは……悔しい、です……」
「カレン、アニス……」
さてどうしたものか。『ゲート』について、私は教えられる事がない。
息を吸うのと同じで、出来てしまうから。
息を吸うのに、やり方を考えたりしないのと同じだ。
アーネストなら、もしかしたら教えられるかもしれないけれど……。
「あら、貴方達『ゲート』を扱えなかったのですか。それなら、お教え致しますわよ?」
「「「!?」」」
「宜しいのですか!?」
「ええ、勿論ですわ。戦力は多い方が良いですもの。この『ワイドランド』の制圧が終わりましたら、サイサリスと共に教えますわ」
「ウチも勝手に入れられてる!?」
「一人一人教えた方が良いでしょうサイサリス」
「うー。まぁ、この二人なら良いデスけど……」
「「ありがとうございます!」」
うん、周りが優秀だとこういう場合本当に助かるね。
「それじゃ、コアに行こうか」
「絶対にこの『ワイドランド』を消滅させる……!」
何故かやたらと張り切っているブリランテさんが印象に残った。
でも、もう名前も思い出せない友達の仇なんだもんね。
「ふぅ、なんとかなったか?」
「ああ。違和感は無かったぞ」
「それはそれでなんか複雑だな。とりあえず白騎士としては、あの性格で通すぜ」
「普段もそうしていても私は構わないぞ?」
「勘弁してくれ。キャラのなりきりとでも思わねぇとやってられるか」
「はは」
「とりあえず、これでメシアには会えそうか?」
「ああ、大丈夫だ。案内しよう」
「頼む。……すまねぇな蓮華。少しの間、敵対するぜ」
こうしてアーネストはアクエリアスと共に、ヴィシュヌの居る『ワイドランド』へと向かうのだった。
お読み頂きありがとうございます。
大体月一更新になってしまっていますが、書くのは止めませんので、良ければお付き合いくださいー。




