712.蓮華side70
アーネストから連絡を貰った後、カレン達に話し早速行く事にした。
準備は事前にしていたからね。
ヤマトに着くと、異常な魔力をすぐに感じる事が出来た。
この世界の魔力と、『ワイドランド』が迫っている事による魔力漏れがこの世界を覆っているのだろう。
接触まで、そう時間は無いと分かる。
いつもと違う肌感を、皆感じているのだろう。
落ち着きのない感じを受ける。
「蓮華、それに皆、来たか」
アーネストが私達を見つけて声を掛けてきた。
その場には最低限の人達だけが居た。
「他の皆は?」
「ああ、ここに集まったのは、『ワイドランド』に攻め入るメンバーだけだ。後はヤマトを守る為に、守備について貰ってる」
成程ね。
更に聞くと、すでに兄さんから接触が近い事を聞いて、SNSを通じて配信を行い、また政府が全島へと報道をした後らしい。
「ブリランテさん、それに兄さんとアーネストに私、カレンとアニス、サスちゃんにアデルの計8人で攻めるわけだね」
「おう。で、まとまって動くのは効率がわりぃから、二手に分かれるつもりだ」
「戦力を分けるのか?」
「ああ。俺と兄貴、ブリランテ組と、お前らで分けたら丁度良いだろ? 人数差はこっちのは少ねぇけど、まぁ兄貴がいるからよ」
うん、そう言われたら何も言えない。
「アーネスト、目的は『ワイドランド』の消滅だよな?」
「ああ。『ワイドランド』を形成している"コア"を見つけ出して、壊す。そうすりゃ維持できなくなって消滅する」
「それを守る守護者を見つけて倒せば良いんだったな。で、世界は広いから二手に分かれる、で良いんだよな?」
一応事前に聞いていた事の確認もしておく。
「合ってるぜ。付け加えるなら、見つけたらすぐに連絡を入れる事な。こっちが見つけたら俺が蓮華にメッセージを送る。蓮華が見つけたら、俺に送ってくれ」
「了解。それじゃ、どっちが先に見つけるか競争だなアーネスト」
「……ははっ! 良いぜ、勝負すっか蓮華!」
あれ? どことなく、不自然に感じた。
いつもの笑みとは、少し違う感じ。
気のせいだろうか?
「よし、そんじゃ外に出て待機しとくか。兄貴、接触したらすぐに教えてくれ」
「分かりました。とはいえ、アーネストもすぐに気付けますよ」
「ま、今でこんなに空気が変だもんな」
「うん。漂ってる空気が重い。これが侵食する側の『ワイドランド』の纏ってるモノか……」
そうして私達は空が見える外に出た。
今はまだ青い空。雲がところどころあって、見た目だけならいつもと変わらない。
「「「「「!!」」」」」
それが突然、歪んだ。
空に大きな亀裂が入り、青色から紫色へ。
毒々しい雰囲気の空へと、急遽変貌した。
「「「「「キシャァァァァァッ!!」」」」」
亀裂から、見るも気持ちの悪い造形をした魔物が数えきれない程出てくる。
まるでゾンビ映画のようなソレは、兄さんが手をかざすと一瞬で消えた。
「さぁ、ここからは時間との戦いです。雑魚に構わず、行きましょう」
「ああ、兄貴!」
「うん、兄さん! 皆、行こう!」
「「「「はいっ!」」」」
空へと飛び、亀裂へと向かう。
近づけば近づく程に、異質な魔力を肌で感じる。
ハッキリ言って、凄く気持ちが悪い。
思わず鼻をつまみそうになるくらいに異臭もする。
「おい蓮華、防護フィールド張っとけ。これは直で受けると俺達でもきつい」
「!! そうだな、頭から抜けてた。ありがとうアーネスト」
言われた通り、全身を覆うように光の加護で包むと、随分と楽になった。
私と一緒に行くカレン達にも掛けておく。
「「ありがとうございます蓮華お姉様」」
「あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"……れ、蓮華様、蓮華様……」
「アタクシ達に、光魔法はその、浄化されてしまいますわぁ……」
「うわわわわっ!? ご、ごめんっ!」
慌てて解除する。
そういえば、この二人は『ワイドランド』側の存在だったよ!
「ふぅ……い、いえいえ、蓮華様がウチらを気遣ってくれたの、わかってます、から……」
「そうですわ。ちょっと猛毒状態になりましたけれど、問題ないですわ!」
「ぶはっ! お前らホントコントみたいな事してんな」
「わざとじゃないんだよ!」
良かった、今のアーネストの笑みは普通だった。
戦いを前に神経質になっているのかもしれないね。
「うっし、そんじゃこっからは別行動だ蓮華」
「ああ、アーネスト。兄さんが居るから大丈夫だろうけど、気をつけろよ?」
「ったく、信用ねぇなぁ。大丈夫だって!」
「……」
一瞬だけだけど、兄さんが悲しそうな表情をしたような……?
いや、今はいつも通りだし、考え過ぎか。
なんでだろう、今日はやけに胸騒ぎがする。
何も起こらなければ良いんだけど……。
こうして私達は、『ワイドランド』の中へと侵入する事に成功する。
これから、どんな事が待ち受けているかも知らずに。
お読み頂きありがとうございます。
しばらく不定期の、更新に感覚が空くかもしれませんが、書くのを辞めたりするつもりはありませんので、ブックマークはそのままに、お待ち頂けたら幸いです。