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710/713

710.蓮華side68

 それから大会は滞りなく進んでいった。

 アーネストの友人達は他の出場者達よりワンランク上の力があるようで、全員勝ち進んでいたけど、最終的にアーネストとぶつかり敗れた。


 おおよその想定通りで、アーネストが優勝して幕を閉じた。

 優勝トロフィーを受け取るその際に、アーネストは麗華さんのSNSで伝えた事を再度、ヤマトの全国民へと伝えた。


 『ワイドランド』から、ヤマトを侵略しようと大勢の魔物が押し寄せてくる事。

 普段突然出てくる魔物達は、『ワイドランド』から溢れた空間に居る。

 ヤマトと空間が合わさった瞬間に、その魔物達は侵入している事。

 等々を伝えて、最後にこう締めくくった。


「俺はこの世界も好きだから、元凶を叩く側でワイドランドへ行くつもりだ。けど、そうなると守る事ができねぇ。だから、こうして伝えさせてもらった。お前達の住む世界だろ? お前達で守って見せろよ」


 実力をヤマト全体に見せつけたアーネストが味方であるという事実に、皆が沸いた。

 そして、皆で守って見せるという雰囲気が見事に作られた。

 アーネストはこれを狙っていたんだろう、流石だと思う。


 興奮冷めやらぬまま、世界サミットが翌日に開かれた。

 これにはアーネスト達も当然参加する事になった。

 議題が『ワイドランド』から神島ヤマトを守る対策会議となったからだ。


 アーネストがこの世界で知り合った人の中には、島のリーダーや権力者の方達が多くいるようで、話もすでに回っているらしい。

 私も一応参加させて貰ったけど、アーネストの隣で基本的に黙って見ているだけだ。

 まぁ、チラチラと私を見ては視線を逸らす人が多いけど、慣れたものだよ、うん。

 すまし顔をしてたら、アーネストが見かねてちょっと笑ったのを確認したので、皆に見えないようにツネっておいた。


 会議は世界サミットでの各島リーダー達の話し合い。

 それ故に、うちではどうするのが良いか等、皆協力的な姿勢だ。

 そりゃそうだろうけどね。だって何もしなければその島は滅ぶだろうから。


 支援の話も出たが、アーネストの仲間に召還ってスキルを使える人がいて、その人が召還するドラゴンが各島を繋ぐ形をとるそうだ。

 他にも聖域といった広範囲の支援ができるスキルを使える人もいるそうで、皆の援護をするらしい。

 来る方面が分かっていれば良いけれど、敵はどこからでも出現する。

 そういう意味でも、気は一時たりとも抜けない。


 攻め側として私のグループからは私とカレンにアニス、そしてサスちゃんにアデルが協力してくれる。

 アーネストの側はほとんどがこの世界を守る側についてくれるそうだ。

 唯一例外として、今回は兄さんも協力してくれる。

 これだけでも百人力なのだが、その兄さんから言われた事が、


「ヴィシュヌは強力な神であり、邪神です。一度で滅ぼせると考えない方が良いでしょう」


 つまり、今回の作戦ではヤマトと接触している『ワイドランド』の排除のみになる可能性が高いという事。

 ヴィシュヌの退治にまではいけないと兄さんは見ているって事だね。


 それでも良い。急ぎではないのだし、こちらの戦力を整えてから攻め入る方が安心だからね。

 今回はヤマトを守るという事が第一。

 その為に接近している『ワイドランド』を潰す。


 ブリランテという神も、この『ワイドランド』に浅くない因縁があるようで、一緒に攻め入るそうだ。


 ホテルの一室で、今日あった事をこうして色々と考えていたら眠れなくなったので、ベッドから立ち上がる。

 部屋から出て廊下を少し歩き、自販機の前についた。

 おお、どれでも無料だよこれ。

 私は炭酸が好きなので、カルピスソーダのボタンをポチリ。

 すぐに用意されるカップにカルピスソーダが注がれるのを見ていると、声を掛けられた。


「よっ、眠れねぇのか?」

「ナンパはお断りしておりまして」

「まぁそう言うなよ。別にあんなことやこんなことをするつもりねぇからさ」

「しつこいナンパは嫌われるぞ?」


 そう言いながら、もう取っても良い表示に変わったので、カップを取り出す。


「俺は㏄レモンにすっかなぁ」

「無料なの凄いよな」

「だなぁ。自社の自動販売機でも、安いって事はあっても無料じゃなかったわ」


 ナンパ者、もといアーネストはそう言いながら、ボタンをポチッと押した。

 それを見ながらカルピスソーダを一口飲む。

 よく冷えてて美味しい。ほどよい炭酸が舌に刺激を与えて、脳がクリアになる。


「ってお前、一個取り終えて同じの押すなよ」

「良いじゃねぇか、他に誰もいねぇし。この量じゃ足りないんだよ俺は」

「まぁ気持ちは分かるけど」


 カップの大きさがそんなでもないので、量は少ないんだよね。

 一息つくのには丁度良い量なんだけど、喉が渇いている時に飲む量としては、やはり物足りないだろう。


「で、どうしたよ。悩みがあって眠れねぇのか?」

「別に悩みじゃなくてさ。今日の事振り返ってて、なんか眠れなくなっただけだよ」

「あー、成程な。俺はついさっきまでトランプやっててさ、ちょっと喉が渇いたから出てきたんだよ」


 トランプっておい。今何時だと……。


「男勢は大部屋だったっけ?」

「いんや? ただ単に俺の部屋に集まってきやがっただけ」

「……はは。私はそういうのなくなったなぁ」

「あー、まぁ女同士だとそういうのあんまねぇのかな? いや女子会とか聞いた事はあんぞ?」

「あったとしても、苦手だなぁ。どんな男が好きとかの恋人トークになりでもしたら、私は悶え死ぬ未来しか見えない」

「ぶはははははっ!!」

「笑いすぎだろお前!」

「はははっ! わりぃわりぃ! いや、まぁ気持ちは分かるぜ? 俺も中に混ざってたら我慢できねぇだろうしな!」


 そもそも混ざる機会がお前には無いわけだけどな!


「ま、こればっかりはなぁ。一応神様は性別変えれるって話は聞いたけどよ」

「可能かどうかは置いておいて、ここまで女として過ごしてきて、男に戻したらそれはそれでどうなんだ?」

「それもそうだよなぁ。ま、でも俺はお前の意思を尊重するぜ? お前が男に戻りたければ協力するし、そのままで良ければそれで良いし。要は、俺にとってお前はお前だからよ」

「……ああ、ありがと。ってこんな湿っぽい話になんでなるんだ?」

「さぁ? 俺とお前だからじゃねぇか?」

「うん、違いないな」

「「はは」」


 少し渇いた喉をカルピスソーダを飲みつくす事で癒し、ゴミ箱へと捨てる。


「それじゃアーネスト、私はもう寝るよ」

「おう。おやすみ蓮華。寝れるか分からんから、もし徹夜したら朝回復魔法かけてくれね?」

「もう自分で掛けれるんじゃないのか?」

「俺は全魔法を使えるってわけじゃなくてさー」

「そっか。まぁ今回は大目に見てやるよアーネスト」

「おお、さんきゅ! そんじゃまた明日な!」

「ああ、おやすみ」


 そう言ってアーネストと別れ、部屋へと戻った。

 軽く話しただけなのに、心が凄く軽くなったのを感じる。

 うん、良い夢が見れそうだ。

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