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701/713

701.蓮華side66

「カレンさん、そしてアニスさん。アタクシは今回の戦いに小手調べは必要ないと思っておりますの」

「「!!」」

「うん。蓮華様が戦力として二人を呼んだ以上、一定以上の強さがあるのは分かってるデス。なので、最初からウチも本気で行かせてもらうデス」


 アデルとサスちゃんはそう言い放った後、どす黒いオーラを体から放出させる。

 魔力ではなく、オーラ。

 それも、単純なオーラではない。通常オーラと魔力はその性質から磁石のように反発する。

 水と油のように、混ざらないのではなく……弾き合う。

 だと言うのに、二人の黒い、闇のオーラは(かす)かに魔力を帯びている。


「フフ、凄まじい"力"ですわね。ならばこちらも、戦闘形態へ移行させて頂きますわね。『ブラッディ・ロウ』」

「こちらも、です。『ブラッディ・カオス』」

「「「!?」」


 カレンとアニスの全身を、赤い血のような魔力が覆う。

 常時体を守る為に肌の上にまとわせるオーラが全て、その赤い魔力に変わっている。

 障壁、すらもだ。


「……凄まじいですわね。それが、戦闘形態の貴女達という事ですか。クス……相手にとって不足なし、ですわっ!」


 呼応するように、アデルは両腕を前に出す。

 その両手には銃が握られていた。


「サイサリス、行きますわよ!」

「クヒッ……任せてっ!」


 アデルとサスちゃんが同時に前へ出る。

 それをカレンとアニスの二人はそのまま一歩前へと出て、細剣と鎌を完全に同時のタイミングで振り抜いた。


「「っ!?」」


 コンマ一秒たりとも狂いの無い、完全な同時攻撃。

 銃という形状から、間合いを取るのかと思ったアデルは、至近距離から踊るように銃を乱撃する。


「避けられますかしらっ! 『エンドレス・ワルツ』!」

「避ける必要、ない、です!」

「「顕現せよ最強の盾! 『イージスフィールド』!」」

「しゃらくさいですわっ! サイサリス!」

「任せて。それも魔法なら、ウチには効かないっ! 消えろっ! 『マナバニッシュ』!」

「「!!」」


 これは凄い。

 アデルの乱撃を避けるのは無理と一瞬で判断した二人は、結界系の魔法の中でも最上位の魔法、『イージス』を使った。

 フィールドを付け足す事で、範囲が広がるから、それで二人を完全な結界が覆った。

 だけどそれを、サスちゃんが使った魔力を消失させるバニッシュ系の魔法で打ち消した。

 バニッシュ系の魔法を扱える人は多くない。

 属性としては無属性に分類されるけど、ほとんどの人は扱う事が出来ない系統の魔法なんだ。

 身近な人でなら、ノルンが使えるけれど……それ以外だと、本当に上澄みの人達しか扱えないだろうね。


「これで通りますわねっ!」

「「ならばっ!」」


 避けきれないと判断した二人は、武器である程度を弾きつつ後ろへと飛んだ。


「カレンお姉様! 『アイスシクルロード』」

「ええ、行きますわよアニス!」

「「!!」」


 空中へと氷の道が二本出来上がる。

 その道はまるで二人の進む道が分かっているかのように、二人が駆ける少し前を凍らせていく。


「器用な真似をなさいますわねっ! けれど、アタクシ達は飛べましてよっ!」

「……違う、罠だアーデルハイトッ!」

「「捕まえた」」

「!?」


 二人の道を作るように凍っていた場所が、動いてアデルの体を包みこんだ。


「ふふ、勿論私達も飛べますわ。蓮華お姉様から受けた古代魔法はいの一番に習得致しましたもの。ですが、飛べないと思わせるのも戦略の一つですわ」

「氷も、操っているのは、私です。以前は、一通りしか、操れませんでしたが……今は、ご覧の通り……自由自在、です」

「フフ……アハハハハッ! ふぅ、お見事ですわ。このアタクシを捕えるなんて、並大抵の力ではないですわよ。これ、どうやったら解けるんですの?」

「アーデルハイトの馬鹿力でも壊せないの?」

「誰が馬鹿力ですかっ! とはいえ、解けないのは事実ですわね」

「うへぇ、それじゃウチもそれに捕えられたら動けないネ……」

「アニス」

「はい、カレンお姉様」


 カレンがアニスに目配せをしたら、アニスは氷の捕縛を解除した。

 ううん、あれ魔法に見えて魔法じゃない気がする。

 近いと言えば、ユーちゃんの使う必殺技だろうか。

 多分、あの氷はバニッシュじゃ消えない気がする。


「あら、ありがとうですわ。アタクシ達でこれ以上戦う必要はないでしょう。お互い切り札を見せる必要もないでしょうし」

「ふふ、そうですわね。ちなみに、私は炎の力を扱いますわ」

「炎氷の姉妹、なんだ。二人なら消滅の力も扱えそう、デス」

「ああ……一度試そうとしたのですけれど、腕が消えましたわ」

「はい……痛かった、です」

「「……」」


 二人がのほほんとそう言うので、アデルにサスちゃんが軽く引いている。

 確か炎の魔法も氷の魔法も、熱エネルギーを操るという点で同じだから、同じ熱量に合わせたらスパークして消滅の力になるんだったかな?

 二人は戦闘時の行動が、お互いに完全に理解しているから……もしかしたら、消滅の力を扱う事が出来るかもしれないね。

 ちなみに、私には無理だ。

 私は魔法を全種類扱う事が出来るし、合成魔法も色々と使えるけれど……得手不得手というか、やはり得意な魔法がある。

 不得意な魔法はないけれど……完全に同じ魔力量で二つの力を合わせる、とか……難しいにも程があると思う。

 だけど、カレンとアニスならもしかしたら……そう思ってしまう。


「さて、お互いに納得いったかな? 四人には、これから『ワイドランド』にいるヴィシュヌを倒す為に協力してもらう事になる。今すぐってわけじゃないけれどね。アーネスト達にも協力してもらうから」

「「アーネスト?」」

「「成程」」


 二人は何度も会っているし、なんなら特訓までしているから知っているけれど、アデルにサスちゃんは会った事ないもんなぁ。


「うーん、それじゃ二人も一度顔合わせしておこっか。ちなみに、私の兄だよ」

「「!!」」

「強さも私と変わらないから、そこも安心して良いよ」

「蓮華様と互角!?」

「それは、心強い、デス」

「くっ……やはりアーネスト様は蓮華お姉様に並んだままですかっ……」

「大丈夫、です、カレンお姉様。今度は、きっと勝てますっ……!」


 何故かこの二人、あの特訓でぼろ負けして以来、アーネストに対抗心を燃やしているんだよね。


「とりあえずアーネストに一報入れておくから、返事が来たら行こっか。それまで、この拠点でゆっくりしてよっか」

「賛成ですわ!」

「あ、ならウチそれまで人生ゲームやりたいデス」

「構いませんが、何故人生ゲーム?」

「……ウチ、大勢でやるゲームってやったことなくて……」

「「「「……」」」」

「テトリスとかなら、永遠とプレイできるよ……フヒヒ……」

「や、やりましょう人生ゲーム! トランプやモノポリでもよろしくてよ!」

「です! です!」

「サイサリス……し、しかたないですわね! 付き合ってあげない事もないですわよ!」


 サスちゃん、割と友達に飢えているんじゃなかろうか。

 まぁ付き合うけどね、面白そうだから。

 おっと、忘れないうちにアーネストにメールを送っておこう。

いつもお読み頂きありがとうございます。

5月に入りましたので、毎年恒例ですが朝倉山椒の摘み作業でしばらく更新をお休みする事になります。

今話か、次話の投稿からしばらくの間(五月後半から六月前には再開見込みです)お待ちいただけると幸いです。

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