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691.アーネストside62

「「「「「……」」」」」


 ホテルの一室。

 俺に割り振られた部屋に集合した神島で知り合った仲間達に、『ワイドランド』からの侵略を受けている事を説明した。

 魔物が突然現れる現象が、『ワイドランド』から侵入してきたものだという事も。

 今まで確証が無かった事でもあるし、すぐには信じられないだろうと思うが……。


「ここまでで、他に聞きたい事はあるか? 一応言っておくけど、嘘でも冗談でもねぇぜ」

「一つ良いかい、アーネスト君」


 真剣な表情をして、竹内さんが手を上げて聞いてきた。


「ああ、なんでも言ってくれ竹内さん」

「今の話を聞いて、我々サザンアイランドは全力で防衛に力を入れるつもりだ。この話を、このタイミングで他の皆にしても良いのだろうか?」

「!! ああ、それは構わねぇよ。……竹内さん、皆からしたらかなり突拍子もない事を言ってる自覚はあるんだけどよ、そんな簡単に信じて良いのか?」

「はは、それは愚問だね。アーネスト君の事はよく分かっているよ。君はこんな嘘を吐くような人ではないし、ここに集まっている皆は、アーネスト君が信じられると思った人達なんだろう? なら、アーネスト君の話を疑わないのは大前提であり、その内容に対してどう動くかを話す事こそが、本題ではないかな?」

「竹内さん……」


 いけねぇ、年甲斐もなく(まぶた)が熱くなりやがる。

 無条件に信じて貰えるってのは、こんなに嬉しい事なんだな。

 隣で兄貴がウンウンと頷いているのは、少し恥ずかしいけど。


「アーネストよ、『ワイドランド』から魔物が侵入し、この神島を統合しようとしてくるのは分かった。だがいかんせん、神島は47の島国だ。俺達が守れるのは、せいぜいそのうちの1島が限界になる。要は、俺達は俺達の島しか守る事は出来んという事だ」

「ああ。だから、この世界サミットを利用させて貰おうと思って参加者になったんだ。自分達の島を、自分達で守ってもらう為によ」

「「「「「!!」」」」」

「各島のランキング一位から三位までの強者が集まるこの大会。その参加メンバー全員に知らせるのと同時に、全国の視聴者にも伝えられる絶好のチャンスだろ?」

「ククッ……ハハハハッ! 成程な、それは確かにこれ以上ない広報活動だな」

「あの、アーネスト様。私達はアーネスト様の言う事を嘘だとは思いませんけど、他の方達はそう簡単に信じるでしょうか……?」

「ま、信じないならそれはそれでしょうがねぇさ。ただ、事前に伝えとくってだけさ。後は、なんにも対処しねぇなら、自業自得だ。そこまで面倒は見きれねぇ」

「そう、ですよね。機会を与えられているだけ、マシだとは思います」


 しょぼんとしてしまう雪さんだが、これだけはどうしようもねぇからなぁ。


「ま、信じて貰えるように、当日俺は力を見せつけるつもりだ。あと……皆に話していなかった事がもう一個ある。それが……これだ」

「「「「「!?」」」」」


 俺は、自身に掛けていた認識阻害魔法を解除する。

 今までの俺は、皆が以前に見た俺に映っていたはずだ。

 けれど魔法を解いた事で、俺の姿が変わって見えているだろう。

 母さんに似た姿に。


「あ、アーネスト君、かい?」

「ああ。それと、俺は人間じゃないんだ」

「今までは擬態していたという事か、アーネストよ」

「それも違うんだ。ただ、色々あってこの姿に後からなったんだよ」


 母さんの力を受け継いだからなんだが、説明が難しいんだよな。


「ククッ……ワハハハッ! やはりお前はとんでもない小僧だな。俺も長く生きてきたが、お前のような小僧は初めてだ。アーネストよ、面白い奴だなお前は」

「はは。勉さんじゃないが、本当にアーネスト君には驚かされてばかりだよ」

「ほわぁぁぁぁっ……あーねすと様が超絶イケメンに……お兄様と並んで目の抱擁すぎますぅ……!」

「分かる、分かるよ雪さん……!」

「未来さんっ!」


 成瀬川の爺さんと竹内さんはともかく、雪さんとミライは何をアホな事を言ってるのか。


「師匠、隣の方はお兄さんなんですよね?」

「ああ、そうだけど?」

「ヤバイ、師匠と結婚したら、そのお兄さんとも家族になれるの? 玉の輿すぎない?」

「私には蓮二さんが蓮二さんが蓮二さんが……でもイケメン二人も捨てがたいぃぃ……! ダメダメ、私には蓮二さんが……でもでもぉっ!?」

「おいシュウヤ、うちにはミーハーな女子しか居ねぇのかよ」

「言うな剛史。考えてもみろ? アーネストじゃなく蓮華さんで、その横に超絶美女のお姉さんが居るってよ」

「!! それは、ああ、そうなるな。まぁ蓮華さんと結婚とか、高望みにも程があって、スンって真顔になっちまうけど」

「それはそう」


 麗華に剛史とシュウヤもアホな事を言ってた。


「うう、玉田さん……いや、今の俺だとダメなだけだ! もっといい男になって、必ず……!」

「アーネスト、話を戻してもらっても良いか? その、彩香ちゃんの視線が俺とアーネストを交互に見てて、居心地が……」


 清田はなんかブツブツと言ってるみたいだが、蓮二の言葉も哀愁に満ちていたので、話を戻す。


「ま、とりあえずこれが俺って事だ。今までは蓮二に似てたからあれだけど、これでもう似ても似つかないし、テレビに出ても問題ないだろう」

「エクストラ戦、フード被っておいて良かったですね師匠」

「はは、だな。それは麗華とミライちゃんのお陰だな」

「本当? 師匠の好感度上がったりします?」

「ギャルゲーかよ。いやこの場合乙女ゲーか? ともかく、ゲームじゃねぇんだから、好感度何て常に上下すんぞ?」

「ガーン」


 というか似たような話を以前蓮華とした気がするな。


「ククッ……」


 気付けば、兄貴が下を向いて震えながら笑ってる。

 チクショウ、滅茶苦茶面白がってるな兄貴……!


「島の代表者のうち、幾人かは俺も知り合いが居るから、先に話を通しておくよアーネスト」

「俺も何回かサザンアイランドの代表として来た事があるし、その際に知人も多くいる。信頼できる奴には先に話しておこう」

「竹内さん、成瀬川の爺さん、さんきゅな!」

「礼を言うにはこちらさ、アーネスト君。本来、アーネスト君はこの事を知らせる必要はないはずだ。だというのに、教えてくれて、力を貸そうとしてくれている。こちらの方が、礼を言うべきさ」

「だな。今日明日はメンツの集まる日で、明後日から大会が始まる。それまで各自、出来る事をしておくべきだな」

「明後日からか、そうだな」

「師匠、私も各島の代表選手に知り合いが結構居る。事前に伝えておこうか?」

「おお、頼めるか?」

「任せて。伊達に何度も出場してないから」

「そういえば、麗華さんって島では一位で、全国でも二位だったもんね」


 彩香ちゃんがそう言う。

 へぇ、麗華の強さでも負ける奴がいんのか。


「一位はなんて奴なんだ?」

「そこに居るじゃない」

「……」


 皆の視線がクラウドに向いた。

 え、マジで?


「つまり、サザンアイランドが全国一位だったって事かよ!」

「はは、そうだよ。だから割と顔が効くんだ」

「だが、俺はアーネストに負けたぞ」

「師匠はカウントに入れても仕方ない」

「どういう意味だよおい」

「師匠が自分で言った。人間じゃないって」

「そりゃ言ったけどな!?」

「「「あはははっ!」」」


 最初に笑い出した女子組につられて、皆も笑い出した。

 おのれ、確かに俺はもう人間じゃないけど、なんか理不尽だな!?


「フ……まぁ、試合で最初の方で当たらない事を祈るか」

「そうね。師匠と当たったら絶対負けるし。初戦敗退なんて恥ずかしいから絶対嫌だわ」

「組み合わせはいつも通りなら、当日だよね? 竹内さん、私がアーネストさんと当たらないように組み合わせ弄れないですか?」

「確か玉田君だったね。ふむ……実行委員に知り合いがいるし、少し当たってみようか」

「ってうぉい!? 竹内さん、それ不正ってやつじゃねぇの!?」

「そうだが、今回はこの世界の危機だからね。多少の不正は仕方がないだろう? アーネスト君と当たったら負けになる以上、アーネスト君はこちら側と決勝戦や準決勝戦以外で当たらないようにしなくては」

「ククッ……お前は(したた)かになったな」

「勉さん程では」

「うわー、リアル版のお代官様お主も悪よのぅを初めて見ましたよ」

「彩香ちゃん時代劇好きだもんな、俺も初めて見たけどさ」

「ああもう勝手にしてくれ……。そうだ清田、お前の召喚獣で空を飛べる奴を追加するから、明日朝付き合え。防衛戦になる時に、清田の召喚獣は必須になるだろうからな」

「は、はいっ!」


 真剣な話もソコソコに、雑談でその日の夜は更けていった。

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