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688/713

688.蓮華side59

 ラースのユグドラシル領に戻ってから、私はすぐにディーネを召喚し、事情を説明した。

 ディーネはやり方を実戦形式で教えてくれた。

 わざと水を汚すのはディーネ的に嫌なんじゃないかと思ったけれど、別に気にしないようだ。

 海の中が少し汚れた程度で変わらないのと同じだろうか?


「流石ねレン。後は、この子をその場所に連れて行くと良いわ」

「わっ、ちっちゃいディーネ?」


 手のひらに乗る大きさの、ミニマムディーネが肩に乗ってきた。


「最初の汚水を綺麗にしても、維持は難しいでしょう? その管理を、その子にさせると良いわ」


 成程、確かに。私がずっとその世界に居るわけじゃないし。


「良いの? ディーネの魔力が減ったり……」

「ふふ、ないわ。その子を生み出した時に少し減ったけれど、それももう回復してしまったし。世界樹の近くに居る私達大精霊は、一種の無敵な存在なのよレン」

「そっか、それなら良かった。でも、その理屈だとこのミニディーネは……」

「その点も大丈夫。レンが一度その世界の水を綺麗にすれば、後はこの子が循環する環境を作るから。そうすれば、精霊が増えていくと思うわ。水の精霊だけでなく、他の精霊も増えるでしょう」


 そんな効果もあるのか。私精霊王って位に居るだけで、全然そういう知識が無いんだよね。

 もっと精進しないとダメな気がする。

 そんな私の想いを察してか、ディーネがクスクスと笑った。


「良いのよ、レンはそのままで。私達に助けられて頂戴? なんでも出来てしまっては、つまらないでしょう? ね、私の最初のお友達」

「!!」


 思えば、ディーネはこの世界に来て、一番最初に友達になってくれた。

 アーネストは例外として、ね。

 そんなディーネの笑顔に、私も応じる。


「うん、ありがとう。これからも力を貸してねディーネ」

「ええ、勿論。遠慮何てされたら寂しいわ。後、他の大精霊の皆もレンと話せなくて寂しがってるから、適度に呼んであげてね?」

「あー、最近忙しくて中々会えてなかったね。うん、分かったよ」

「ふふ、宜しくね」


 とりあえず今はあの世界の環境を整えるのが先だからね。


「もう行くの?」

「うん。ちゃっちゃと終わらせてくるよ。次は神島にも行かないといけないし」

「そう。何かあれば召喚するのよレン」

「了解。それじゃ、行ってくるね!」

「ええ、いってらっしゃい。お土産は期待できるかしら?」

「茶色い食べられる木で良ければ?」

「……それは、ドライアドは喜びそうだけど」


 そう苦笑するディーネに手を振り、私は『ポータル』を出現させる。

 この世界の中で移動する『ポータル』ではなく、世界間を移動する『ポータル』だ。


 これを使えば私が元居た世界にも行けるんだそうだ。

 こんな、元の世界で言えば圧倒的な力を持って行くとか、大丈夫なんだろうか? と最初に疑問に思った。いや勿論、道徳に反する事をしようなんて微塵も思っていないけれど。

 ただ、この世界間の移動ができる『ポータル』は、一部の神々にしか使用が許可されていないらしい。

 なので、色んな人が使える力ではない為、大丈夫なようだ。 

 一般的に、神々は世界にあまり干渉しようとしないから、だと聞いた。


 私の場合はかなり特殊なケースだけど、ユグドラシルが私を認めているのと、数多くの上位の神々が私を擁護している為、許可が下りているのだと兄さんが言った。

 恐らく、その筆頭に兄さんや母さんが居るのだろう。

 アリス姉さんもかな。

 家族の信頼を裏切るような真似を、私はしないよ。

 元の世界に渡る事が出来ると言っても、お別れはアーネストがしてくれている。

 それに、今の私が行っても混乱させるだけだ。

 願うのは、元の家族が幸せに天寿を全うしてくれる事だけだ。

 私は両親が死んでも、友達が死んでも、生き続けるから。

 寂しさがないと言えば嘘になる。

 だけど私には、今の家族と……アーネストが居てくれる。

 だから、乗り越えられる。


 話が逸れてしまったね。ちなみに、兄さんは今回行かない。

 なんでも、


「おや、アーネストから連絡が来ていますね。ふむ……蓮華、私は一足先に神島へ向かうとします」

「アーネストから? うん、分かったよ! こっちは私だけでもなんとかなりそうだから、安心して行ってきて良いよ!」

「ええ。アーネストに蓮華も自慢の弟に妹ですからね。では、また後で」


 というわけで、兄さんはアーネストの元へと先に向かった。

 あんまり連絡を寄こさないアーネストが、兄さんに連絡をするという事は、何かあったんだろうか?

 とは思うけれど、あのアーネストに何かあっても大体大丈夫だろうという安心感と、兄さんが行くなら何があったとしてもすぐ解決するだろうと思って、特に気にしなかった。


 それが、まさかあんな事になるなんて、この時の私は想像もしていなかったんだ。

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