685.蓮華side56
「はい、それで合ってますです。クヒヒッ……ウチ、もう話せる情報無いですけど、助けて貰えますか……?」
「約束は守ろう。命だけは助けてやる。ただ、五体満足でとは言っていない」
「ヒィィッ……!」
「兄さん、ただいま」
「おや蓮華、もう終わったようですね。こちらも必要な情報は得られましたよ」
すぐ傍でガタガタと震えてるピエロに目をやると、最初の威厳は迷子になっていた。
まるで子猫のように見えてくる不思議。
「えっと……確かガンダム試作2号機だったっけ?」
「クヒッ!? サイサリス=ゲルデですけどぉ!?」
冗談だよ勿論。アーネストが居たら乗ってくれただろうに。
「うん、そのサイサリスさんは、『ワイドランド』から来たんだよね?」
「クヒヒッ。直、ではないけどねぇ。あと、サスちゃんって呼んでねぇ?」
「というと?」
「間に派生した『ワイドランド』を経由するのさぁ。母島である『ワイドランド』から、いくつも派生して出来た『ワイドランド』を経由して、この『ラース』へ道を繋げてるのさぁ」
成程……それで本体というか、大元に辿り着きにくくしているわけか。
まるでネットワークみたいだ。
「そっか。それでサスちゃんは帰る時、どうやって帰るの?」
「それはねぇ、こうやって『ゲート』を開いてだねぇ」
サスちゃんが手を前にやると、紫色の丸い空間が出来上がった。
これが『ワイドランド』へと繋がっているのだろう。
「それじゃ行こっか兄さん」
「フ……良いでしょう」
「え?」
きょとんとしているサスちゃんの腕を掴み、『ゲート』の中へと入る。
「ちょぉぉぉっ!?」
なんか叫んでるけど気にしない。
『ゲート』を潜ると、なんていうか……島だった。
見渡す限りの大きな島。
ただ、海に浮かんでいるとかじゃない。
下を見れば真っ黒で、飛べない者が落ちれば、恐らく助からないだろう。
「な、なんで『ワイドランド』に入っちゃうの!?」
「え? そりゃ勿論、消そうと思って」
「……」
「兄さん、この島で等級はどれくらいかな?」
「そうですね……そこまで大きな世界ではなさそうです。それでもロード級といった所ですか」
言葉では大体の大きさを聞いていたけれど……実際に目にすると、結構な広さの世界に思える。
ただ、千里眼で周りを見ても、人間が生きている気配はしない。
「ま、待って待ってぇ!? この世界、ウチのお気に入りなの! 壊さないでホントにぃ! この『ワイドランド』は他の世界に浸食させるつもりもないからぁ!」
「どういう事? 『ワイドランド』って自動で他の世界を侵食して行ってるわけじゃないの?」
「さ、さっきも言ったように、『ワイドランド』には派生した『ワイドランド』があるの。アンタ達神々は、その派生した世界の大きさをロードだったりタイラントだったり、名称をつけてんでしょ? 母島である『ワイドランド』以外の派生した『ワイドランド』は、ウチ達魔神将か、四聖天が管理してんのぉ!」
なんと。知らない情報が次から次へと出てくる。
「サイサリス」
「はいっ!」
兄さんに呼ばれたサスちゃんは、凄まじい勢いでビシッと敬礼した。
軍隊かな?
「この地を中継地点として、我々に使わせろ。拒否権は無い」
「ヒ、ヒヒッ……そ、それで見逃してもらえますか……?」
「蓮華、どうでしょう? この地に拠点を作り、他の『ワイドランド』へと攻め入る足掛かりにするというのは。幸い、サイサリスが管理する世界ならば、他から邪魔が入る可能性も低いでしょう」
「成程……それは良い考えだね兄さん! なら、消さずに置いておこっか!」
「クヒヒッ……有難き幸せぇ」
うん、このピエロことサスちゃん、凄まじい強さを感じるのに、なんでこんなに卑屈なんだろう?
「それじゃ、やっぱり世界の中央当たりに拠点を作りたいよね兄さん!」
「フ……分かりました。では移動しましょうか蓮華」
「うん!」
「ちょ、ちょっと待ってぇ!? ウチにも事情があってですねぇ!?」
サスちゃん、なんかちょっと可哀想可愛い気がしてきたぞっと。
新しく、前世魔王の最強ヤンキー娘を投稿始めました。
ふたゆめの更新はいつも通り行いますので、そちらも良ければ気軽にお読み頂けたら嬉しいです。
前世が魔王の最強ヤンキー娘が無双するお話です。
ブックマークや評価、いいねで応援して頂けると嬉しいです。
お読み頂きありがとうございました。