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682.アーネストside59

 ひとまずアクエリアスと別れた俺は、大会へと足を運んだ。

 決勝は麗華が彩香ちゃんに勝利して一位、彩香ちゃんが二位となったようだ。

 物凄い悔しそうな彩香ちゃんと、ふんすとどや顔している麗華が対照的だった。


 俺とリオはエクストラに出る予定なので、会場を移動する事にした。

 シュウヤ達にはブリランテの居た(今は蓮二と共に他の島に居る)場所に俺抜きでも出入りできるように『ポータル石』を渡しておいた。

 剛史や麗華も付いてきたがったが、そんな暇があるなら修練しておけと突っぱねた。

 どうせテレビで見れるんだし一緒だろ。


「いやいやアーネスト、やっぱ生はちげぇって!」


 とはシュウヤの談だが。


「アーネスト殿、このエキストラ戦は他の島での戦いとは違うようでござるな」

「ああ、ぶっちゃけあんまり期待されてねぇ奴らが集まるみてぇだからな」


 普通なら各島で大会に出る。

 なんらかの事情があって出れなかった奴がこのエキストラに出るわけだが、その中には他の島で負けた奴らもエントリーできるわけで。

 要は強い奴は大抵その島で全島大会に出れるわけだ。

 ここに集まるような奴は、そこまで強くない奴らだと思うのが普通だ。

 ま、俺やリオのように別の事情で参加する奴もいるわけで、全員がそうだとは言わねぇけどな。


 ちなみに俺は黒いフードを白い服の上から羽織っている。

 顔を見せないように、頭のフードを深く被る。

 その理由は、


「ちなみにアーネストさん、その顔で戦わない方が良いと思いますよ?」

「え? なんで?」

「モテない男達全員から最初に狙われますよ?」

「……」

「女性がわざと目の前で不自然な倒れ方したり、自分で怪我したりするかもしれないわね」

「……どうしろってんだよ」

「フードで隠すしかないですね」

「そうね。師匠はそのままだと目立ちすぎるわ」

「……」


 という経緯があったからだ。

 今まではそんな事考える必要も無かったから、複雑な気持ちだ。


「アーネスト殿、どうしたでござるか?」

「あ、ああ、いや。なんでもねぇ」

「そうでござるか?」


 きょとんと首を傾げるリオも十分可愛い見目をしているので、一緒に居る俺に熱い視線が飛んでくる。

 熱いと言っても殺意の方だけどな。蓮華で慣れているとはいえ、特別公爵家っていう貴族の立場があったし、そこまで無遠慮なものは無かった。

 けれどここでは俺もただの一般人の一人に過ぎないからか、やきもちや嫉妬の対象になっているようだ。

 なんとなく新鮮で、面白くも感じる。


「あ、いよいよでござるな」


 どうやら審判が会場に現れたようだ。

 リオの言葉を聞いてから視線をそちらへと向ける。


「お集まり頂いた参加者の皆様、ようこそエクストラバトルへ。皆様すでにご存知でしょうから、長々とした説明は抜きに、簡潔に致しましょう」


 いやご存知じゃねぇんだが?

 まぁ、良いけどよ。


「このエクストラバトルは他の島と同様に、バトルロイヤル形式をとっております。違いはこの一戦で決まるという事。上位二名になるまで、戦ってください」


 ぶはっ。単純で良いな!

 なら、リオ以外全員倒せば良いわけだな!


「成程、アーネスト殿以外を全員倒せば良いわけでござるな!」


 横で同じ事を考えていたリオに笑いつつ、ネセルではない普通の双剣に手をかける。

 俺の身長以上の長さであり、扱いに多少難がある剣だ。

 けど、こういう多対一の戦いでは楽なんだよな。


「それではっ! テレビの前の皆さんもお楽しみください! はじめぇっ!」


 審判が勢いよく手を振りおろし、大会が始まる。

 最初は様子見するかと思ったが、隣の奴へすぐに襲い掛かる奴らばかりだった。


「おー、皆やる気満々だな」

「そうでござるなぁ。ではアーネスト殿、我も参加してくるでござるよっ! でりゃぁぁぁぁっ!」

「なっ!? おわぁぁぁっ!!」

「は、速っ……きゃぁぁぁっ!!」


 リオが前に駆けだすと同時に、その進行方向に居た人達が薙ぎ払われていく。

 逆刃にしているようだから、死ぬ事はねぇだろうけど。

 そんなリオを見送っていたら、俺の周りに数名の奴らが集まっていた。


「へへっ、あんな可愛い子と友達とか勝ち組め……俺が成敗してやるっ!」

「ああ、俺達陰キャの嫉妬心を見せてやる……!」

「後であの子に、弱いなんて幻滅~って言わせてやるぜっ!」


 ……なんで後ろ向きにポジティブなんだこいつらは。


「ははっ。ま、やってみな」

「こいつっ……! 行くぞお前らっ!」

「「「「「おおおおおっ!!」」」」」


 せっかく俺を囲んでいるのに、三人が一列になって突っ込んできた。


「「「俺達の必殺奥義、避ける事は出来ねぇぞ!!!」」」


 なんかどっかで見たなこれ。

 とりあえず先頭の奴を蹴り飛ばす。


「ぐげぇっ!? お、俺を踏み台に……!?」

「してねぇよ、蹴り飛ばしただけだ。ほい、後ろががら空きだ!」

「ゴフッ!? 」

「く、くそぉっ! これでも喰らっ……がはぁっ!!」

「甘いぜ。俺の剣の範囲内だ」


 三人全員ほぼ同時に倒れる。それを見ていた他の奴らは、足を止めてしまっている。


「どうした。せっかく数の利があるのに、こねぇのか? こないならこっちから行くぜ?」

「「「「「!!」」」」」

「そらよぉっ!」

「「「「「ギャァァァァァッ!!」」」」」


 双剣を振るい、全員まとめて吹き飛ばす。

 オーラで覆い、打撃のようにしているので致命傷にはならない。

 ま、痣ぐらいは出来てるかもしれねぇけど。


「……やはり、強いな」

「!!」


 少し離れた所でこちらを伺っていた男が、ゆっくりと歩きながらこちらへと来た。


「我が名は……」

「チェストぉぉ!」

「ぐぼぁぁっ!!」

「……」


 名を名乗る前に、横から突っ込んできた女の子に吹き飛ばされていった。


「おー、強そうな人発見ですっ! そのフードの下の顔、見せてもらうですよっ!」

「ははっ。……やってみな!」


 双剣を構える。すると、女の子はいきなり汗を目に見えるレベルでかき始めた。


「あばばば……ちょ、ちょっとレベルが違うですねこれ! 私じゃ勝てなそう……くっそー、さっきの袴の女の子を避ければなんとかなると思ったのにぃ! なんで今回のエクストラバトルはこんな強い人が居るんですか!」

「ま、俺の強さを感じれるだけ、お前は見込みあると思うけどな。次回に期待しときな」


 次回は俺は確実に参加しないし、次回を開催出来るようにしてやらねぇとな。


「うー、そうですね。多分私一撃でぶっ飛ばされる気がしますし。審判、棄権しまっす!」

「分かりました。エントリーナンバー1298番、ミリオネアさん、失格です!」


 ミリオネアって言うのか。というか、この子で1298番って事は結構な人数が参加してんだな。

 そう思って周りを見るが……どうやらすでに大分リタイアしているようだ。

 その原因は間違いなく……


「フハハハハッ! ぬるい、ぬるいでござるなぁっ!」

「「「「「ぎゃぁぁぁぁっ!!!」」」」」


 人をまるでおもちゃのように吹き飛ばしている、リオだろうなぁ。


「な、なんなんだよあの化け物は!?」

「可愛い顔してなんであんな強いんだ!?」

「それだけじゃねぇぞ、刀を振るうごとにあの大きな胸がぶるんぶるんと上下に揺れ……ぐぁぁぁぁっ!!」

「「「トニー!!」」」

「邪悪な視線を向けてるのはお前達でござるな! 成敗ー!」

「「「ぬぁぁぁぁっ!!」」」


 ……うん、俺はもう何もしなくても良いかもしれないなこれ。

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