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681.アーネストside58

「成程な……それでアクエリアスは、そのメシアって姉さんの大切な人を助ける為の戦力を集めようとしてたのか」

「ああ。ただ、私の目に叶う者は今までお前を除いて居なかった」


 片付けを終えた俺達は、コタツに座りながら話をしていた。

 俺はコタツに足を入れてるけど、アクエリアスは座布団の上に正座だ。


「足、崩して良いぞ?」

「主の前でそれは出来ない」

「……」


 仲間にしたいとは思ったけど、別に従者が欲しかったわけじゃねぇんだけどなぁ……。


「んじゃ、主として命令だ。楽にして良い」

「むぅ……分かった」


 そう言うと、アクエリアスもコタツに足を入れた。

 掘りごたつというやつで、足を下に入れるタイプのコタツだ。

 大勢でコタツを囲んでも足をぶつけ合わない利点がある。

 冬に道場の門下生で集まった時は、普通のコタツだったから中が戦争だったな……。


「そういえば、鎧とかガントレットってのか? そういう金属部分のは無くなってるんだな?」


 今のアクエリアスは、黒いけど普通のドレスだけを身に纏っている。

 銀の髪にエルフのように尖った耳が特徴的だ。

 というか、戦いの時は黒い兜を被っていたし気にならなかったが、超美人だこいつ。


「私の魔剣は鎧化出来るのでな。戦う時は自然に体に装着する」

「おお、アムドってやつ? 魔法が効かねぇとか?」

「アムド? それは知らないが、魔法は普通に効くぞ」


 効くのか、そりゃそうか。

 アムドは転生組しかやっぱ分からねぇよな、残念。

 カッコイイんだけどな、あれ。


「そういやさ、お前はこの後どうするつもりなんだ?」

「その事なんだが……アーネストは神島を侵食されたくはないのだな?」

「そりゃ勿論だ。一応、この島は俺の記憶を元にして創られた島らしくてさ。それが侵食されるのは見てられねぇし……知り合った奴らも多く居るしな」

「ならば、『ワイドランド』として浸食された後、切り離して独自の世界として定着させるか?」

「どういうこった?」

「『ワイドランド』は様々な世界を侵食し、同一化する事で世界を広げている。だが、中には『合わない』世界もある。そういった世界は、『ワイドランド』から切り離す。その取捨選択は、我々四聖天が行っている」

「……成程。お前が俺側に着いたとバレないように、浸食は進める。けれど、実際はそのままの形でこの世界を存続させてくれるってこったな?」

「そういう事だ。そしてそれには、アーネストの協力が必要になる」

「……俺がお前側についたと思わせないといけないわけか」

「そうだ。アーネストの信頼する者には話しても良いが、それでもリスクは極力抑えたい。話すにしても一人、もしくは二人までにしてほしい」


 一番最初に浮かんだのは勿論蓮華だ。

 だけど、すぐにそれはダメだと思いなおす。

 あいつは良くも悪くもまっすぐな奴だ。

 演技が、出来ないとも言う。

 多分、俺と敵として出会っても、本当は味方だって分かってたら、あいつは態度に出てしまうだろう。

 それじゃヴィシュヌにバレる可能性がある。

 なら、こういう事を話しても一番大丈夫なのは、やっぱあの人しかいねぇよな。

 俺がこの世界に来て、誰よりも尊敬している兄貴に連絡をする。


 ……けれど、何故か兄貴からの返事が来なかった。

 あの兄貴に何かあったなんて考えられないが……連絡がつかない以上、仕方がない。


「事情を俺の一番信頼する人には話しておく。後から謝らないといけねぇしな」

「分かった。それと、お前はこちらでは名前を変えて貰えると助かる。私も切り替えがしやすい」

「切り替え?」

「こちらでは、私の部下という形になるからだ」

「ああ、成程。そんじゃ……そっちでは白騎士とでも呼んでくれ」

「フ……それはお前の服装からか?」

「おう。黒い騎士王に仕える白騎士ってのも、オツなもんだろ?」

「フフ……それは良いな。戻ったら、まず最初に姉さんに紹介しよう」

「分かった。後はこの世界、あー神島じゃなくってな。俺が居る世界と連絡が取れる手段は用意しておきたい」

「ヴィシュヌの覗き見と盗聴を防がなければならないからな、難しいが……姉さんなら可能だろう」

「その姉さんってのは、やっぱ強いのか?」

「強いぞ。四聖天の姉妹の強さに大きな差はないが、長である姉さんだけは……私達三人を合わせるよりも強いだろう」

「!!」


 このアクエリアスの強さを三人合わせてなおそいつのが強いってのか。

 いやむしろ、そんな奴だからこそ……ヴィシュヌに人質を取られて従わせられているって事か。


「今日はこの世界で何かの大会が行われているのだろう? それが終わった、そうだな……一週間後。『ワイドランド』側からの侵食を始めよう。その時までに、場を整えられるか?」

「一週間か……分かった。そんだけありゃ、この世界の皆に『ワイドランド』の事を伝えられる。ただ、やっぱ被害無くってわけにゃいかねぇよな」

「そこは割り切れ。仮に私がアーネスト側に立ったとしても、他の姉妹が担当になり攻めてくるだろう。そうなれば、被害無くどころか……壊滅的なダメージを負うだろう」


 そうだよな。被害が出来るだけ小さくなるようにして、かつ……俺は『ワイドランド』側に行かなきゃなんねぇ。

 敵側に入り込むスパイってやつだな。

 その敵側に味方が居るわけだから、ややこしい事になりそうだが……兄貴にさえ話が出来たら、なんとかなる気がする。


「よし、アクエリアス。こっからは共同戦線だ。まずはお前の姉の大切な人を助け出す。そん次は、俺の目的に力を貸してくれ!」

「フ……元より、私は今日よりお前の臣下だ。だが……その前に、力を貸してくれアーネスト」

「おう!」


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