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674.蓮華side52

「『オーラ・オーバーブースト』からのぉっ! くらぇぇっ! 『アルティメットストライク』!」

「はぁぁぁっ! ユグドラシル流剣技・壱ノ型『絶刀』!」


 全てを断ち切る『斬鉄』の次に威力の高い、『絶刀』だ。

 流石のモルガンさんもこれには錫杖を翳し、ガードした。

 目に見える分厚いシールドを貫く為、力を込める。


「うおおぉぉぉぉっ!」

「ふむ……」


 余裕そうなモルガンさんの表情が、少し変わる。

 いや、恐らく他の人が見たら変わってないように見えるだろう。

 しばらく一緒に居たからこそ分かる、僅かな違い。


「よっ! はっ! やるね、アーちゃん!」

「はっ! おぉっ! へへっ! もうアーネスト呼びはおしまいか母さんっ!」

「そぉいっ! えへへ、やっぱり無理、だよねっ! アーちゃんもレンちゃんも、敵と思えないからねっ! てやぁっ!」

「うぉっ!? くっそ、これも全部防がれるのかよっ! なら、更に『オーバーブースト』重ねがげだぁっ!」

「!! ならこっちもよ! 『オーバーブースト』」

「「おおおぉぉぉっ!!」」


 横を見れば、アーネストと母さんが凄まじい剣撃を繰り出していた。

 私も負けてはいられないっ!


「これも、くらぇぇっ! 『エターナルウインド』!」

「!!」


 『絶刀』を右腕で繰り出しているので、左手を前に出し魔法、ではなく必殺技を使う。

 これは魔法でもなく、その上位の精霊魔法ですらない。

 ユグドラシルオリジナルの力だからだ。

 その為構築された魔法陣を読んで解除させたり、同等の魔法で相殺なんてことが出来ない力。

 しかし、流石はモルガンさん。

 それすらもシールドで防いで見せた。


「やりますね蓮華。私も初見なら、合わせられず受けたでしょう。ですがその力は、以前一度受けましたからね」


 淡々とそう語るモルガンさんの目は、先程までと違う。

 冷静沈着とした、落ち着いた目をしていたのに……今やギラギラとした、とても楽しそうな目をしている気がする。

 口角が少しだけ上がっているせいだろうか。


「さぁ、もっと貴女の力を見せてください蓮華。ユグドラシルではない、貴女の力を」


 モルガンさんは何を言っているんだろうか?

 私の力は、全てユグドラシルの力なのに。


「蓮華っ!」

「!?」


 突然アーネストが呼ぶので、意識はそちらへと向ける。


「お前は誰だっ! 蓮華だろっ!」

「そりゃそうだけど、何を……」

「いつまでもユグドラシルの代わりだと思ってんじゃねぇぞ!? お前はお前だろっ! 蓮華! 蓮華=フォン=ユグドラシル! それがお前だっ! 体がなんだ、器がなんだ! 俺の親友は、ユグドラシルじゃねぇ!」

「!!」

「今だから分かる! 俺も母さんの体をもらった! でも俺は母さんじゃねぇ! 体と魂を、一致させろ! 俺は俺で、お前はお前だろ! あるがままを受け入れろよ! 今のお前は、蓮二じゃねぇ!」

「っ!!」


 アーネストの叫びが、心にストンと落ちる。

 そうだ、私はずっと、ユグドラシルの代わりだと思っていた。

 この力も、借りものの力だ。

 どれだけ扱えるようになっても、私の力じゃないと。


 それは全て、ユグドラシルの力だ。

 ううん、それは間違いじゃない。

 だけど、正しくも無いんだ。

 そう……今の私は……蓮華。蓮華=フォン=ユグドラシル。


「ふふ……殻を破りましたね蓮華。素晴らしい、それが貴女の力」


 全身から魔力が溢れる、高まる。

 この力は、ユグドラシルだけのものじゃない。

 私自身の魂に、ユグドラシルの魔力が融合していく。

 変わる。今まで周りにあったユグドラシルの魔力と、明確に違う。


「これが、私自身の魔力……」

「うわぉ……『エターナルマナ』をここまで……やっぱりレンちゃんはとんでもないね」

「ははっ! やっぱお前はそうでないとな……蓮華!」


 全身を魔力が覆い、金色と緑色の波動が波のように足元から頭の上へと流れていく。

 今なら、なんでもできるような全能感が意識を支配しようとしてくる。


「……行くよ、モルガンさん。『エターナル・ブレード』」

「!!」


 私の魔力を凝縮して纏わせたソウルで、一撃を振るう。

 先程まで全く歯がたたなかったシールドは、まるで鏡のようにパリンと音を立てて割れた。


「ここまでとは……。良いでしょう、私も揚げていきますよ」


 錫杖をトン、トンと地面を叩く度に出てくる魔力の刃を、私は感覚で捉えて斬り捨てていく。


「ククッ……素晴らしい。今の貴女は、神々の中でも最上位と言っても過言ではありません、蓮華。ならば……こちらも宝具を展開致しましょう」

「モルガン!? ……ううん、それくらいでないと、か。よし、アーちゃん。こっちも本気で行くよ」

「!! 望む所だぜっ!」


 モルガンさん、そして母さんから、今までの比ではない魔力が吹き荒れる。

 私はアーネストを見る。

 あいつは、楽しそうな表情をしていた。

 私が見ているのに気付き、頷く。

 私も頷き返し、前を見る。


 そうだ、私達は母さん達に並びたい。

 その想いをずっと胸に、鍛錬を続けてきた。

 母さん達の本気の一撃を凌いでこそ、私達はきっと、本当の意味で認められる。

 守るべき庇護の対象から、仲間へと。

 その為にも……この一撃、絶対に防いでみせる!


「さて、いきますよ蓮華」

「いくよ、アーちゃん!」

「「おおおおおぉぉぉぉっ……!」」


 私は結界を展開する為の魔力を全力で構築する。

 アーネストは母さんへと突っ込んで行った。

 恐らく相殺するつもりなんだろう。

 私はアーネストに結界を張る事も出来た。

 だけど、今回はそれは違うと思ったから、張らなかった。

 きっとアーネストもそれは望まない。

 私は、目の前の最強の一神、モルガンさんの奥義をただ防ぎきる事に全力を尽くす!


「さぁ、頭を垂れなさい。妖精国女王、ティタニア=フェア=モルガンの聖名の元、私の足元で許しを請いなさい。『ロード・オブ・エデン』」

「蓮華=フォン=ユグドラシルが命じる! 我が身に宿る魔力よ、顕現せよ! 『エターナル・イージス』!」


 モルガンさんから放たれる宝具を、最強の結界で防御する。

 次々に襲い来る巨大な槍の形をした魔力の塊が、地面より生えてくる。

 その全てを結界が防いでくれる。


「まさか、この宝具すら防ぎきりますか……」


 ようやく静かになったと思ったら、モルガンさんの驚いた声が聞こえた。

 私の周囲は凄まじいクレーターが出来ており、ボコボコなんてレベルじゃなかった。


「ふふ……流石は蓮華。ユグドラシル以上の結界能力かもしれませんね」

「!!」

「これなら、並大抵の者に負けることは無いでしょう。この私の攻撃をしのぎ切ったのですから」


 そう言ってわずかに笑うモルガンさんに、本当の意味で認められた気がした。


「「はぁっはぁっはぁっ……」」


 少し離れた位置で、母さんとアーネストが座り込んでいるのを見つけた。

 モルガンさんと一緒に、ゆっくりと歩いて近づく。


「だ、大丈夫か? アーネスト」

「はぁっはぁっ……お、おぅ……ちょっと、魔法の反動で動けねぇだけだぜ……」

「しびびび………」

「ほほう……」

「ひゃうん!? ちょ、今はやめなさいモルガン!」

「……つんつん」

「ひぃやぁぁぁっ!? やめろって言ってるでしょーう!?」

「あはははは!」

「笑ってないで助けてレンちゃん!? 母さん今足が痺れて動けないの全身版なの!」

「それは良い事を聞いてしまった」

「やりますか蓮華」

「うん!」


 モルガンさんと一緒にニッコリと笑う。


「この悪魔~!!」


 時の世界に、母さんの叫び声が響き渡るのだった。

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