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669.アーネストside53

「事情は分かったよー。ついでだし、私達も行こっかモルガン」

「ふむ……解析自体はどちらで行っても構いませんし、制限時間がある分、その世界の方が都合が良いかもしれませんね」


 時の世界に行く旨を話したら、母さんと、何故か一緒に居たモルガンさんも来る事になった。

 俺はこの人、神か。苦手なんだよな……なんつーか、魅了云々を抜きにしても近寄りがたい感じを受ける。

 特に何かされたわけじゃねぇんだけどな……。


 ちなみにシュウヤにミライ、リオ達に加えて、神島で生まれた剛史達も一緒に修練したいと頼み込んできたので連れて行ったが、全員その場から動く事が出来ず、あえなく参加不可となった。

 時の世界で修行する為の前提条件を満たせなかったって事だな。

 皆は元の場所で出来る限りの修行をすると張り切っていた。

 俺が負けたのを見て、奮い立ったようだ。

 情けねぇ姿を見せちまったし、挽回しねぇとな。


「モルガンさん、四聖天のアクエリアスが使ってた力って、あの時言ってた事だよね?」

「そうですね。神々で言うなら『ゾーン』、人間達が似た力を『固有結界』と呼んでいますね」

「!!」


 『ゾーン』、それがあの時アクエリアスが使った力。


「二次元の者が三次元の者に干渉出来ないように、『ゾーン』を使える者に『ゾーン』が使えない者では勝ち目はありません。例えそれが、『ゾーン』を使えない者の力が大きく勝っていたとしても、です」

「「!?」」

「『ゾーン』を互いが使える事、それが最低条件の戦いの前提に至るわけです。アクエリアスという者にアーネストの技が通じなかったのは、そういう事です。『ゾーン』の前にアーネストの攻撃はアクエリアスに干渉出来ず、アクエリアスの攻撃はアーネストに干渉出来る。そのまま続けていれば、どうなるかは火を見るよりも明らかでしょう」


 モルガンさんの言葉に、俺は心が沈むのを感じる。

 蓮華はもう、その『ゾーン』を身につけているのだろうか?


「成程……『ゾーン』ってこんな感じかな?」

「ふむ、流石ですね。ユグドラシルの体が元なだけあって、もう身につけていましたか蓮華」

「!!」

「感覚だけどね。こう言葉で説明できるような力じゃないよねコレ」


 蓮華の全身を、金色の薄い光が纏っているように見える。

 そして、俺は蓮華の魔力を感じられなくなった。


「『ゾーン』は戦いにおいて、無意識に発動させる系の力ですからね。それはあくまで対等に戦う為の前提条件の力。次元、格を合わせるとでも言いますか。その力を持つ者と持たない者で、一つの線引きとなるのです。おめでとう蓮華、貴女もこちら側に足を踏み入れましたね」

「あはは……まぁ、なんか気付いたら出来たから、あれなんだけどね」


 やっぱ蓮華はすげぇ。俺がまだ至っていない場所に、軽く行っちまう。

 俺も、負けてらんねぇよな!


「モルガンさん、どうやったらその『ゾーン』を身につけられる!? 教えてくれ!」


 そう詰め寄るが、モルガンさんは表情を崩さず言った。


「それは出来ません。何故なら、『ゾーン』とは己で感覚を掴むものだからです。例えばですが、両手両足の動かし方を、脳からの伝令に始まり細胞の動きや筋肉の動かし方から、一つ一つ説明できますか? そんな事を考えずとも、動かそうと思えば動かせるでしょう? そういう事です」

「!!」

「モルガン、言ってる事は正しいんだけど、もうちょっとこう、手心というか、ね?」


 母さんが苦笑しながらそう言うけど、否定しないという事は間違っていないという事だ。

 落ち込む俺を見て、モルガンさんは言った。


「手伝わないとは言っていません。先にする事がありますから、それが終わるまでは手を貸せませんが……終わった時にまだ獲得できていなければ、獲得できるまで導いてあげましょう。その稀有な体を、少し調べたくもありますから」


 ニヤリと笑うモルガンさんに、背筋がぞくっとした。


「もうモルガン。ま、時間はたっぷりあるんだから、気軽にねアーちゃん。この私にモルガンが居るんだよ? 大船に乗ったつもりでね!」

「はは……ああ。ありがとう母さん、モルガンさん」


 そう言ったら、背中をバシンと叩かれる。


「母さん達に比べたら頼りないけど、私も付き合うからなアーネスト。早くここまで来いよ?」


 そう笑う蓮華に、俺もつられて笑う。

 そうだ、落ち込んでいる暇はない。

 なんとしても『ゾーン』を身につけて、蓮華に並ぶ、追い越す!


「っし! 何をすりゃいいのか分かんねーけど、戦いが途中だったよな! 決着つけようぜ蓮華!」

「おう! 望む所だアーネスト!」


 お互いに剣を取り出し、戦いを始めようと……


「こーら! アーちゃん! レンちゃん! 家の中で始めようとしないの!」

「では転送してあげましょう」

「「!?」」


 気が付いたらリヴァルさんやタカヒロさんと訓練していた場所に居て、蓮華と顔を見合わせて笑ってしまった。

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