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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第六章 天上界編

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665.アーネストside49

『くっ……物凄い数のモンスターだな……こいつらに挟撃されたら、全滅は免れない。だから……』


 手に持った杖を前へと翳し、彼は後ろへ顔だけを向け、言い放つ。


『ここは俺に任せて、先に行けーー』


「くぁぁぁぁっ! かっっっこ良いよなぁっ!」

「分かるわっ! 人生で一度は言ってみたいセリフよ!」


 テレビ画面に映るのはアニメのワンシーン。

 それを剛史と、さっき戦ってたはずの前回優勝者、霧島麗華が一緒に見ていた。


「この後にちゃんと仲間が魔王を倒すんだけど、こいつだけ帰れないんだよな……」

「で、帰ってこれたと思ったら数年経ってて、世界が変わってるのよね」


 どっちも原作履修済みらしい、このオタク共め。

 俺も混ぜろ、ではなくてだな。


「よぅ剛史。怪我は大丈夫なのか?」

「おお! 見舞いに来てくれたのかアーネスト!」

「アー……外人? には見えないけれど……」


 嬉しそうにする剛史と、怪訝そうな顔で俺を見てくる霧島麗華。

 まぁ確かに、日本人の名前ではないもんな。


「初めましてだな。俺はアーネスト=フォン=ユグドラシル。一応外人で合ってるぜ」


 元日本人の異世界人だし、外人扱いで良いだろ。


「そうなのね。凄いわね、外人なのに流暢な言葉で違和感がないわ。っと、失礼したわね。私は霧島麗華。アーネストと言うと、剛史が試合中に言っていた師匠ね?」

「師匠ってお前。確かに教えはしたけど、別に師匠じゃねぇよ。ただのダチだ、ダチ」

「ははっ! 良いんだよ、俺が勝手にそう思ってるだけだからよ!」

「そう。なら師匠、私とも一戦交えてくれないかしら?」


 さっきまでの態度と一変し、氷のような目をして俺を見てくる。


「あー、構わねぇけどさ。明日お前はベスト4の試合があるだろ」

「あら、気遣ってくれるの? 大丈夫よ、そこまでの死闘になると思っていないし」

「お、おい。やめとけって!? アーネストはマジで……」

「気にするな剛史。ちょっとボコって終わらせっから」

「アーネストォ!?」


 病室を出て廊下でフィールドを形成し、即戦える場所になる。

 マジで便利だなあの腕輪。


 で。


「嘘……嘘よ。私が手も足も出ないなんて……」


 四つん這いになりながら、信じられないという表情をしている霧島麗華。


「だから言わんこっちゃねぇ……アーネストは俺とは格が違げぇっていうか、もう次元が違うんだよ……」

「刀が当たるイメージすら出来なかったわ……しかも、それでも貴方手を抜いているわね!?」

「おー、そりゃな。でもお前も中々強かったぜ? この島で出会った中では、一、二を争うレベルだな」

「くっ……普通なら悔しいのに……もう差がありすぎて、悔しいとすら思えないなんて、なんなのよ……」


 凄まじい落ち込みを見せる霧島麗華に、なんと声を掛けるべきか。

 そこに、いたたまれなくなったのか剛史が要らん事を言った。


「ま、まぁよ。アーネストは人間じゃねぇし、仕方ねぇって」

「え?」

「おい……」

「あ……」


 慌てて口を紡ぐが、時末に遅し。


「どういう事?」


 今更冗談でしたと言っても逆に信じてもらえないだろう。

 仕方なく、俺がこの世界の外から来た事と、この世界に迫っている災いについても話す事にした。

 実力者なのは分かっているので、巻き込んでしまえという魂胆だ。


「成程……そんな事になっていたのね。私が知らない間に、面白い事が起ころうとしているのね」

「お前、割と戦闘狂だろ」

「勿論。子供の頃からずっと鍛錬をしてきた。道場破りも沢山してきたし」


 随分とバイオレンスな子供時代を送っていたようだ。

 そりゃ強いはずだな。


「ベスト4には玉田さんも残っていたし、私の相手は玉田さんではないから、玉田さんが勝てば決勝で相手になるわね」

「だな。図らずも去年と一緒か」


 すでに自分は絶対に勝つものとして言っているのが、自身の強さへの自信の表れなんだろうな。


「そうね。師匠、聞きたいのだけれど、私と玉田さんはどちらが上かしら?」

「また難しい事を聞くな。って師匠ってなんだ。剛史はともかく、お前には何も教えてないだろうが」

「これから教わるもの」

「あっけらかんと言いやがるなこいつ……」

「当然よ。私より強い人に、人? に教えを乞うのは普通の事でしょう?」


 人で疑問を挟むんじゃねぇよ。

 まぁもう種族的には人ではないけどさ、心は人なんだよ。


「つってもな、お前に教えるような事はあんまなさそうなんだよな。技術的な事はすでに出来てるし……教えれるとしたら、オーラの質や量の上げ方くれぇだぞ?」

「むしろそれが一番聞きたいわ!」


 前のめりになりながら、そう言ってくるので苦笑するしかない。

 本当に強さに貪欲なんだな。

 俺はそういう奴は嫌いじゃない。


「そうだ、最初の質問に答えるが……実力はほぼ互角だな。どっちが勝ってもおかしくねぇと思うぞ」

「……そう。他の奴が言うならいざしらず、師匠がそう言うなら受け止めるしかないわね。師匠、早速教えて欲しいのだけれど……」

「待て待て。俺が剛史の見舞いにだけ来たって思ってんのか」

「ちげぇの!?」

「なんでお前が驚くんだよ剛史。っていうより、俺からしたら霧島さんと一緒に居る方が驚きなんだよ」

「麗華」

「うん?」

「麗華と呼んで師匠。霧島さんなんて他人行儀じゃない、私達の仲で」

「どんな仲だよ。今初めて知り合ったばかりの他人だろうが」

「へへん、俺はアーネストとはダチだからな!」

「ぐぬぬ……剛史めっ……」


 どんなマウント取ってんだよ剛史は。

 そんな事で本気で悔しそうにするなよ。


「分かった、麗華と呼ばせてもらう。俺も堅苦しいのは苦手だからな、助かる」

「!! ありがとう師匠!」

「それで礼を言われるのもなんかちげぇ気がすっけど……ともかく。大丈夫そうだから、おばさん呼んでくるぞ剛史」

「げっ、母さんを!?」

「おう。怪我してるのを見たら失神しそうだから、先に見て来てってお願いされたんだよ」

「ぜってぇそれだけじゃねぇだろ? アーネスト」

「……おう。試合頑張ったもんな、盛大に祝われろ。行くぞ麗華、この場所に居たら巻き込まれる」

「なんだかよく分からないけれど、分かったわ。また後で剛史」

「ちょっ、待ってくれよ二人共!? 母さんのアレはマジできついんだってばよぉー!?」


 ベッドから転げ落ちながらそう言う剛史を無視し、俺達は病室を出る。

 ロビーで待っているおばさんは、心配そうに同じ道を行ったり来たりしていた。


「アーネスト君! 剛史は、剛史は大丈夫だった!?」

「はい、問題ないですよ。おばさん、早く行って元気な姿見せてやってください」

「!! ええ、ありがとうアーネスト君! 行ってくるわね!」


 そう言って、早歩きで病室へと向かって行った。

 走らない辺りは理性が残っていたようだ。


「もう良いぞ麗華」

「ん」


 麗華は空気を読んで、少し離れていた。

 そりゃ、剛史を病院送りにしたのは麗華だしな。

 見舞いに行っていたあたり、優しいとは思うが。


「剛史は強かった。今まで戦った中でも、割と上位。去年は、そうでもなかったけど。師匠のお陰と聞いた」

「あー、まぁ半分は間違っちゃねぇけどさ」

「半分?」

「ああ。あいつは本気で強くなりたいと思ってた。だからその想いに俺が応えただけで、あの強さになれたのは剛史本人の意思が強かったからだ」

「……ふぅん。なら、私も強くなれるね」

「はは! ああ、なれるさ。強くなりたいという想いと、行動が出来る奴なら、絶対に強くなれる。それは俺が保証してやるぜ」

「!! ん、楽しみ。師匠の予定、早く終わらせて。私を強くして」

「へいへい……」


 なんだか犬のような猫のような、強さに対するやる気だけは人一倍の奴に懐かれてしまった。

 まぁウチにはシュウヤにミライ、リオも居るし……あいつらにぶん投げても良いか。

 とりあえず、俺がこの病院へと来たもう一つの理由を済ませるとしよう。

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