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663.蓮華side47

 母さん達を追って天上界へと向かっている途中で、ユグドラシルと合流した。

 なんでも、神界へ行っていたらしい。

 その帰りに、私の魔力を感じたのでこちらへと来てくれたのだと。


「ユグドラシル様、私は……」


 それから、スルトは自身に起きた事をユグドラシルに説明した。

 全てを聞き終えたユグドラシルは、微笑んで言った。


「そうでしたか。それならば、もう大丈夫ですよスルト。その対策を、授かってきましたからね」

「「!?」」

「蓮華が効かなかったのは、私と魂が繋がっているからです。私にその力が効かないようになったからなのですよ」

「「!!」」


 驚きの連続だけど、問題がこんなに簡単に解決してしまうとは思わなかった。

 いや、実際は簡単なんかじゃなかったはずだ。

 そもそもが創造神なんて別次元の存在と会えるって時点でユグドラシルが凄いわけで。

 ユグドラシルが居たからこそ、対応出来たんだから。


「ふふ、蓮華の尊敬のまなざしは嬉しいですが、これもひとえに貴女のおかげなんですよ蓮華」

「え?」

「やはり気付いていませんでしたか。全ては蓮華から繋がっている事なのです。蓮華が居なければ、私は今ここに居ません。蓮華が居なければ、古の神々が手を取り合う事など無かった。マーリンにアリスは、未だロキと中立だったでしょう。そも、アリスが顕現出来ても居なかった。全て、全て……貴女のお陰なのです、蓮華」


 そう穏やかな、優しい声で言ってくれるユグドラシルに、私はきっと顔が真っ赤になってるだろう。


「そ、そっか。私は私のしたいようにしてきただけだから、あれなんだけど」

「ふふ、蓮華はそれで良いんです。私達はいつまでも貴女とアーネストを見守っていますからね」


 ユグドラシルがずっと照れる事を言ってくるので、話を変える為に母さん達の事を聞く事にした。

 どうやら、天界にユグドラシルの領があるらしく、今はそこで皆待機しているらしい。

 そしてそこには、あのゼウスも居るのだとか。


「ゼウス……!」

「スルト、気持ちは分かりますが……どうやら誤解があったようなのです」

「……誤解、ですか?」


 ユグドラシルの言葉に、流石のスルトも落ち着きを取り戻した。


「ええ。スルトが操られたように、ゼウスもまた操られていたようなのです」

「「!!」」

「私が異界の神に操られる事と、ゼウスが操られる事が繋がりませんが……異界の神の眷属である私をゼウスを操り襲わせる……どういう意図なのでしょう?」

「それは私にもまだ分かりません。これから、今後の対応を含めて話をする所です」

「成程……」


 ゼウスが異界の神に操られていて、天界の兵を使ってスルトを襲わせた。

 たまたま天上界に居るユグドラシルの庇護を受けられて、その命を助けられたけれど……一歩間違えれば死んでいたかもしれない。

 何を考えて、スルトを襲わせたんだろう?

 異界の神、ヴィシュヌ……奴の目的は一体なんなんだろう。


「とりあえず、皆を待たせていますから、戻りましょう。少し速度を出しますから、遅れずについてきてくださいね」

「はっ!」

「了解」


 そうして、ユグドラシルについていく事少し。

 天上界はどこも見晴らしが良いけれど、この辺りはそれに輪をかけて綺麗だ。

 まず空気が違う。

 清涼感が凄い。それに、ただ居るだけで良い匂いがする。

 楽園、それが一番近い言葉かもしれない。

 すぐ傍にある泉では、水の精霊達が気持ち良さそうに眠っている。


「レンちゃんっ!」

「蓮華!」

「蓮華さんっ!」

「おぐぅ!?」


 周りを見て感嘆してたら、いきなり三人に抱きしめられる。

 母さん、兄さん、アリス姉さんのフルコンボである。


「うぅ、心配したんだからねぇ……!」

「蓮華、すみません。私の結界が破られるとは……なんたる失態か! 兄失格です……!」

「蓮華さぁぁぁんっ! 無事で良かったよぅ……!」


 大切な家族達が、私の事を心から心配してくれる。

 その事に心があったかくなる。


「うん、心配かけてごめんね。兄さんは言い過ぎ。スルトが守ってくれたから大丈夫だよ」

「「「スルト!」」」

「あっと、その説明を私がしましょう。スルトの事を含めてね。皆、集まって貰えますか?」


 ユグドラシルの呼びかけに、周りでそれぞれ散っていた神々が集まりだす。

 その中で見知った顔も居て。


「無事だったようだな。マーガリン達程ではないが、心配したぞ」

「リンスレットさん!」

「お久しぶりですね蓮華。息災でしたか?」

「モルガンさん!」


 二人共私を見つけると、すぐに傍まで挨拶に来てくれた。


「おお蓮華ではないか!」

「げっ……」

「「寄るな変態」」

「何故だっ!?」


 ゼウスが近寄ってこようとするのを、リンスレットさんとモルガンさんが槍と錫杖をクロスさせ、阻む。

 正直助かる。


「まず最初に、創造神様達のお言葉があります。心して聞くように」

「「「「「……」」」」」


 先程までざわざわとしていた雰囲気が、一気に変わった。

 ここに集まった全ての神々が、ユグドラシルを見つめている。


「『この世界に何をされようと、我々が手を下す事はない。逆を言えば、お前達が何をしようと、我々が手を下す事もない。好きにせよ。しかし勘違いはするな。我々はお前達を愛している。故に、少し援助を贈った。好きに生きよ、我が子らよ』以上です」

「「「「「……」」」」」


 神様の神様の言葉だもんね。一見冷たいような感じを受ける言葉だけど……そこには確かな子への愛を感じられる気がした。


「そしてこれが、異界の神の力に対抗できる《アンブロシアの実》です。流石に多くの数ではありませんが、ここに居る神々には行き渡ります。後はマーリン、モルガン。これを解析し、複製を頼めますか」

「うへぇ、イザナギ様のアーティファクトでしょこれ。簡単じゃないわよぉ?」

「ふふ、それは研究のし甲斐がありますね。マーガリン、しばらくユグドラシル領に滞在しても構いませんか?」

「え? それは勿論構わないけど、あっちの世界の維持、大丈夫なの?」

「私の変わりをオベロンに任せています。オベロンであれば、向こう1000年程であれば大丈夫でしょう」

「いやそれ全ての魔力を維持に当てた場合じゃ……相変わらず妖精達にはスパルタねモルガン……」

「?」

「あー、まぁ良いわ。大丈夫なら良いわ。レンちゃんも良いよね?」


 何故そこで私の許可が要るのだろう?


「モルガンさんなら大歓迎だよ」

「ありがとう蓮華」


 そう言って微笑むモルガンさんが、ホントもう綺麗で。

 兄さんと並んだら破壊力が天元突破してしまう気がする。


「マーリン、モルガンを貴女の部屋に居れるなら、まず散らかってる魔道具をなんとかしてくださいね? あの部屋にある魔道具が暴発したら、それだけでこの世界が半分は消し飛びますからね?」

「大丈夫だってば! そんな爆発滅多に起きないから!」


 いやそれは一度でも起こしたらダメなやつでは?


「はぁ……ロキ、私も気を付けますが、貴方も気を付けてあげてくださいね」

「ククッ……無理ですね」

「そんな!?」


 兄さんの返答にユグドラシルが驚愕してる姿を見て、もう駄目だった。

 私は笑ってしまう。


「フ……まぁ、蓮華が居るのです。マーガリンも気を付けるでしょう」

「!! ふふ。それもそうですね」

「私への当たりが酷い件について!」

「まぁ事研究については、マーガリンにモルガンは信用ならないからなぁ……」

「アリスまで!?」

「おっと、私にも流れ弾が来ましたね……」

「あはははっ!」


 何気ない会話だし、そんな場面ではないのは分かっているのだけど、私は今とても楽しい。

 家族と、普段会えないけれど、会えた友達との会話は、聞いているだけでとても嬉しい。


「もう蓮華、今は真面目なお話なんですよ? 貴女が笑顔だから、雰囲気が和やかになってしまったではありませんか」

「あはは、ごめんごめんユーちゃん。でも、ユーちゃんもまんざらでもない顔してるよ?」

「あら、これは一本取られてしまいましたね。では、この和やかな雰囲気のまま、次のお話にいきますね」


 そして、今度は天界と天上界の勢力圏の話題に移っていった。

 アーネストや皆はどうしているだろうか。


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