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659.蓮華side45

「追加だ蓮華、これも食べると良い」

「う、うん。ありがとうスルト……」


 テーブルの上には、色とりどりのデザートが所狭しと並んでいる。

 事の発端は私のお腹がきゅぅと鳴った事が原因だ。

 それを聞いたスルトが、すぐに色んなお菓子やデザートを持ってきてくれた。


 しかし、いくら女性が甘い物は別腹と言っても、私はこの体になってから小食になったのもあって、すでに胃液が逆流しそうである。


「……遠慮せずに食べて良いぞ。いくらでも買ってくるからな」


 しかも買ってるんかい!

 私は魔法とか魔術で出してるものかと……。

 まずい、いや美味しいんだけどそういう意味ではなくて。

 このままでは私の胃が限界を迎えてしまう。

 何か話題を探さなくては……! そ、そうだ!


「ね、ねぇスルト。天上界って、なんで天界と二つに分かれてるの? 全部含めて天界でもおかしくないよね?」


 ずっと気になっていた事を聞く事にした。


「天上界は、ユグドラシル様が創造なされた世界だ。元々は天界だけだったのだが……その世界を覆うように天上界があるのは、一種の監視の為だろう」

「!!」

「ゼウスは善悪の区別が無い。いや、無いと言うよりは……自身が行う事こそが正義であり、正しいと"決めて"いる」

「決めてる……?」

「完全なる王制度という事だ。王が全てを決める。人間の世界にある王制度のように他者の諫言を必要としない、独裁者とも言うな」


 それは……国のトップに立つ人が、この場合神だけど……そうだと、間違った事が起きた時、被害を受けるのは国民達じゃないか。


「それで察したとは思うが、ゼウスの独裁を制御する為に、ウルズやラケシスを天上界に派遣したのだろう」

「!!」


 そうか。それで二神とも、私に好意的だったんだ。

 天上界を守る為、そして天界の為、ひいてはユグドラシルとの約束の為に。


「天上界にはユグドラシル様の治める自治領も存在した。それが先程話した件に繋がるが……私はそこで、ユグドラシル様と出会えたんだ」


 ユグドラシルの事を話す時、スルトの表情はとても優しくなる。

 きっとその時の事を思い出しているんだろう。


「そっか。……そういえば、もう一つ疑問なんだけど……」

「私が答えられる事であれば、答えよう」


 急に無表情に変わるスルトに苦笑しながら、質問を投げかける。


「どうして天上界と魔界は争ってたの? 天上界をユグドラシルが創ったのなら、そんな行為はしなさそうなんだけど……」

「……。ユグドラシル様が、世界樹と成った事は知っているだろう?」

「うん」


 だからこそ、というべきか、私はこの世界に呼ばれたのだから。


「その後、天上界は割れた。ユグドラシル様を"犠牲"にした世界など滅ぼしてしまえという派と、ユグドラシル様が守ろうとした世界を守ろうという派でな」

「!!」

「蓮華も知っての通り、現唯一魔王と呼ばれているリンスレットは、前魔界の魔王でもあった女神イグドラシルの後継者でもある。彼女はユグドラシル様の守った世界を守る派だった」

「……」

「天上界に居るユグドラシル様を"犠牲"にした地上と魔界を許さない派、それが魔界に攻勢に出ていた勢力だ。そしてその勢力に加担した神が、ゼウスだ」

「ゼウスも許さない派だったって事……?」

「いや……恐らく違うだろう。奴は奴で別の魂胆があったはずだ」


 確かに、それは私もそう思う

 ゼウスは何か、別の意図を隠してる気がする。


「それで、食べないのか?」

「!!」


 うぅ、やはり食べないとダメか。

 パクリとケーキを一口食べる。

 うん、とても美味しい。

 甘くて柔らかくて口が幸せな感じに。


「美味しい」

「……それは良かった。いくらでも食べて良い」

「……」


 普段無表情のスルトが、こういう時は少し嬉しそうにする為、もうお腹一杯と中々伝えられない私は、天上界と天界の話を聞きながら、時間を潰すのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 美味しくても いくら美味しくてもエンドレスというのは、軽く地獄ですよねぇ……
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