653.アーネストside47
【春盛の召喚スキルヤヴァイな。あんなん一個小隊、いや軍隊にも匹敵するだろ】
【マジでそれ。中核のヴァルキリーを筆頭に、巨大な蜂に恐竜まで居るし】
【でもそれを突破して春盛に攻撃仕掛ける玉田ちゃんもすげぇな】
【今の所全部ヴァルキリーが凌いでるけど、見ててドキドキするね】
「レイドスッ! 尻尾で後ろを叩きつけろっ!」
『グォォォッ!』
「甘いよ春盛君っ!」
「ヴァルキリー!」
『ハイッ!』
「っ!?」
ブラキオレイドスが大きな尻尾を地面に叩きつけたのを、彩香ちゃんはジャンプして避けた。
そこへすかさずヴァルキリーが空を駆けて肉薄し、槍を振るった。
「クッ……! コレモサケマスカ、アヤカサマッ」
「良い線行ってたけどねっ! これで、先にリタイアしててねっ!アサシンスキル《雪風》」
『グゥッ!? マス、ター……モウシワケ……』
「ヴァルキリー!? くっ、流石は玉田さんっ……レイドスッ!」
『グォォォン!!』
「レイドス君は動きが遅いよっ!」
『グォッ!?』
「そんなっ!?」
ヴァルキリーを仕留めた彩香ちゃんが、そのままブラキオレイドスの背後へと回る。
そして振り向きざま、首を狩り取った。
『クゥゥン……』
「レイドスッ……すまない、俺がもっと上手く指示できていればっ……」
「取った!」
「!!」
『『『ブゥゥゥンッ!!』』』
「ちぃっ!」
清田の後ろに一瞬で肉薄し、その首筋にダガーを当てた所で、空を飛んでいた巨大蜂達が彩香ちゃんを襲う。
これには流石に彩香ちゃんも下がるしかなかったようだ。
「すまないっ……ありがとうお前達。そうだな、まだ諦めるわけにはいかないんだっ!」
『ブゥゥン♪』
「人型サイズの蜂とか、ホントあの人はとんでもないのを召喚できるようにさせるんだから……」
「ハッチ達、玉田さんの素早さはお前達以上だ。だから、数で押すしかない。いけるか……?」
『『『ブゥンッ!』』』
「よし、頼む!」
『『『ブゥゥンッ!』』』
「アサシンスキル《ステルス》」
『こ、これはなんと!? 玉田選手の姿が完全に消えてしまったぁ! 春盛選手、これにどう対応するのか!?』
【ブラッドアサシン本領発揮だな】
【姿を消して、気付けば傍に居て首を掻き切るんだよな】
【強すぎて草】
【蜂って目で対象を確認してるなら、不味そう】
巨大蜂は彩香ちゃんを確かに見失っている。
けれど、清田が指揮官として働いているからな。
「ハッチ! 俺ごと飛ばせっ!」
『ブゥゥゥンッ!』
「ちょっ!?」
巨大蜂のハッチが清田目掛けて体当たりする。
すぐ傍に着いたであろう彩香ちゃんを巻き込んで、清田と共に吹き飛んだ。
「ぐぅっ……」
「あいったぁっ!? もう、ホント無茶するね!?」
肉を切らせて、というか。
しかし、その手段は今回に限っては悪手でしかない。
彩香ちゃんは軽傷、清田はかなりのダメージを受けている。
元々の身体能力に差があるんだから当たり前だが、同じ攻撃を受ければどうなるかは清田も分かっていたはず。
「あはは……どうにかして玉田さんに一矢報いたくて。でも、俺じゃここまでみたいですね」
「あ、気付いた?」
【え、春盛くんの後ろに玉田さんが居る?】
【あー、アサシンスキルの分身だあれ】
【見分けつかないんだけど!?】
【春盛くんの召喚スキル滅茶苦茶強かったけど、玉田さんはそれすら圧倒して見せたね】
『勝者! 玉田彩香選手! 敗れたとはいえ、素晴らしい戦いを見せてくれた春盛選手にも、惜しみない拍手をお願いしますっ!』
「ふぅ、完敗です。でも次はきっと、勝ってみせますから!」
「ふふん、十年早いよ♪ って言いたいですけど、あの人に師事されたらホントに抜かれちゃいそうなので、私も頑張らないとです」
二人は晴れやかな笑顔で、舞台を降りる。
そして次の試合の選手達が舞台へと上がる。
『さぁ続きましての試合はっ! 知らない人など居ない、昨年度の覇者っ! 霧島麗華選手!』
【うぉぉぉぉっ! 麗華様ぁぁぁぁっ!】
【麗華様、今日もお奇麗ですぅぅぅ!】
【流石人気あるな、コメ欄の流れる速度がヤバイ】
『対するは、前回惜しくも敗れはしましたが、今年は去年よりもかなり腕を上げているのは皆さんご存知の通り! 郷田剛史選手!』
【剛史ぃぃっ! 勝っても負けても、悔いのないように戦うのよっ!】
【お母さん居たw】
【郷田選手も独特な力を得てるみたいだし、いい勝負するかもしれんな】
【麗華様に勝てると思ってるの!?】
【ガチ勢落ち着け】
舞台に上がった二人は、お互いに見つめあった。
「……前回より、かなり腕を上げたようね」
「!! お前も分かるのか、そういうの」
「ええ。かなりの腕前の師匠がついたと見るわ。貴方と、あの玉田さんも」
「!?」
「前回は手加減をした。けれど今回は、真面目に行く」
「!! お前も、オーラを!?」
「この力をオーラと言うの? そう、貴方も使えるのね? 楽しみだわ」
「……こりゃ、最初から全力で行かねぇとだな」
『両者、気合十分! 観客の皆さんももはや待ちきれないでしょう! それでは、第二試合、開始っ!』