649.アーネストside43
【】……撮影を見ながら視聴者がスマホやパソコンからコメントを書いています
『』……生放送中の撮影内の音声
「」……いつもの
「おー、中々レベルたけぇな」
「でござるなー。お、彩香殿が映ったでござるよアーネスト殿!」
映像を見ると、彩香ちゃんが相手を手刀一発で気絶させている場面が映った。
それを見たギャラリーが割れんばかりの歓声をあげる。
全島のランキング戦までの間、特訓を続けた俺達は、仕上がりも万全でこの日を迎えた。
俺とリオはエクストラ戦に参加の為、日程が後になる。
だから今はのんびりとテレビ観戦をしている。
「よっしゃ! そこだっ! やれ剛史ッ!」
「わわっ! 危ないよっ! うしろ、うしろだよ剛史さんっ……!? あ、彩香ちゃんがフォローしてくれたね!」
「第一回戦は各闘技場四名まで勝ち残るんだったよな。ったく、同じ闘技場になったから良かったものの、危なっかしいな剛史は」
シュウヤとミライの二人は、各島の中継の中でも剛史と彩香ちゃんがいる闘技場が映っているチャンネルを見ている。
ランキング戦はテレビ中継されており、各島ごとに上位三名が全国戦に出場する事になるが、各島のランキングを決める重要な大会でもある為、この日はテレビの放送陣や参加者で溢れるようだ。
参加者も負けた時点でテレビを見る側になる。
第一回戦の闘技場は八つあり、そこで上位三十二名を決めたあと、トーナメント方式になるんだと。
その為、第一回戦は凄まじい人数でのバトルロワイヤル。
前回の上位三名はシード枠とかあるのかと思ったが、そういうのはないそうだ。
って事は、前回の上位者は初戦で厳しい戦いになるのは当然と言える。
前回二位の彩香ちゃんに、前回三十二位の剛史は開幕から滅茶苦茶狙われているからな。
とはいえ、この二人は今回協力してるのもあって、周りも攻めあぐねているようだ。
清田は別の闘技場になったみたいだが、召喚獣のヴァルキリーは攻守ともにそこらの奴より数段上だ。
清田を守るのは他の召喚獣に任せて、攻撃をヴァルキリーに任せれば安全に勝ち抜けるだろう。
実況者の解説も熱が入ってるし、画面下に出るコメントも盛り上がっているのが分かる。
『あーっと! やはり強いっ! 前回二位の玉田彩香選手、得意の影移しで瞬時に背後を取り、首を一撃ですっ!』
【やっぱ前回準優勝者は強いな】
【あれだけ囲まれてるのに、誰も動きを捕えきれてないんよ】
【見てても残像っていうんだっけ? そのせいで気付いた時には違う場所に居るんだよね】
【流石ブラッドアサシン……】
【前回一位の霧島さんは第三闘技場か。うわ、あっちも圧倒してる】
【多分前回の最上位者はばらける様にしてるね】
【俺は早々に負けたから観戦に戻った】
【お疲れw】
チャンネルは複数あって、島のくくりと、第一から第八闘技場まで区分けされている。
一応複数映す事も可能みたいだ。
俺達はブリランテが用意してくれた大画面で見ているが、それでも全ての島は映せていない。
とりあえず流し見してるけど、実際に注目してみるのは上位三十二名が揃ってからの一対一のバトルからで良いと思ってるしな。
一応チラッとサザンアイランドの映像を見たら、成瀬川の爺さんやクラウドが出ているのを確認した。
あの二人は確実に上がってくるだろうな。
「おっしゃ剛史! その調子だっ!」
「彩香ちゃん、負けるなー!」
シュウヤとミライの声が届いたのか、映像でアップになった二人がこちらに向けてピースした。
いや届いているわけがないけど、タイミングバッチリでこの兄妹が更にヒートアップする。
「ふふ、こういうの良いでござるなアーネスト殿」
横でそう言いながら笑っているリオを見て、
「はは、そうだな」
俺も参加したいという言葉をグッと我慢して、そう言った。