642.アーネストside42
ランキング戦に備えて各自特訓をしている最中。
皆が休憩している中、気になっていた事を聞く事にした。
「なぁ剛史、ランキング戦って全島で行われてるんだったよな?」
「ぜぇっ……ぜぇっ……あ、ああ、そうだぞ……」
座り込んで息を整えながら、剛史は応えてくれる。
「少し気になってたんだけどさ。例えば、シュウヤを迎えに俺達で行ったキリングフィールドなんかは、一つの島としてまとまってたよな?」
「ふぅ……ああ、そうだな」
「で、次のミライを迎えに行ったサザンアイランドではさ、勢力っつうのかな。色んなグループがあって、争ってたんだよな。そんな島でランキング戦はどうなってんのかなって思ってさ」
サザンアイランドはもう、竹内さん達が統一をしたし、大丈夫としてもだ。
他の島でまだ争っている島もあるかもしれないしな。
「あー、各島の中央にさ、ランキング戦の為の不可侵エリアがあんだよ。そこではランキング戦以外の戦いはご法度で、違反したら神罰が下るから皆ルールを守ってんだよな」
「!!」
ブリランテが作った聖域みたいなものか。
皆がそれを違和感なく受け入れているのが不思議だが、スキルなんてものがある以上、受け入れやすいのかもしれないな。
「成程、サンキュ」
「大分息も整ったし、礼ついでにもういっちょ頼むわアーネスト」
「あー! 次は私ですよ剛史さんっ!」
「お、おお。やけに気合入ってるな彩香ちゃん」
そう言うと、彩香ちゃんは頬をぷくぅっと膨らませた。
「アーネストさんのせいですよぅ! なんなんですか、春盛君の召喚スキル! 強すぎじゃないですか!? 私このままじゃ負けちゃいますよぅ! もっと私を鍛えてくださいよぉ!!」
「……」
召喚スキルの有用性に気付いた俺は、清田の召喚獣を増やす事を重視した。
ユグドラシル領に存在する数多の獣や昆虫達を、あらかた召喚できるようにしたのだ。
そして、倒しまくったお陰で召喚獣達のレベルが爆上がりした。
普段、この神島に出る魔物達は多くても一日に数匹倒せるかどうからしい。
それをユグドラシル領で数千を超える獣達を倒した清田達は、恐ろしいペースでレベルが上がったのだ。
ワイドランドに行くのは俺と蓮華、シュウヤとミライ、リオ。そしてブリランテに兄貴の合計7名だ。
他の皆には各島を守る力になってもらう。
でも神島の数は四十七ある。とてもじゃないが手が足りない。
そこで、清田の召喚獣に手伝ってもらおうと思ったわけだ。
魔物と混同されても困るので、その対策は必要だが。
「うぅ、アーネストさぁん……」
もはや半泣きの彩香ちゃんを見て、俺は頭をかきながら言う。
「分かった、分かったよ。強さを上げるには大雑把に、鍛錬とレベルアップの二種類だ。レベルアップは神の恩恵で強くなる事で、鍛錬より明確に力が上がる。ただ、この恩恵はただ与えられた力って事を忘れちゃならねぇ。それを扱うのも鍛錬ではあるけどな」
「神の恩恵……」
「神の力は、神を相手にした時には無力だ。レベルアップで得た力ってのは、結局自分の力を磨いたわけじゃないからな。その力を扱うのとはまた別の事だ。それを踏まえた上で、お前達もレベルアップに行くとするか!」
「「「おおっ!!」」」
全員が元気よく返事をするが、
「シュウヤとミライ、リオは明日な。全員で行くと効率が悪いだろ」
「「「えぇぇ!!」」」
単純にレベル差があるだろうし、こいつらが瞬殺したら意味がないしな。
そういう理由を伝えると、皆納得してくれた。
さて、ランキング戦の開始まで、皆のレベル上げを手伝わないとな。
次話から蓮華sideです。




