641.アーネストside41
「ぎゃぁぁぁぁっ! 死ぬ、死にますってアーネスト先輩ぃぃっ!!」
「大丈夫だ、そう言って死んだ奴は居ない!」
「それは漫画やアニメの世界で、おわぁぁっ!?」
今、俺達はユグドラシル領の森の中で魔物、ではなく。動物達を相手にしている。
ユグドラシル領に魔物は存在していないが、それよりも強い動植物が沢山生息してる。
そいつらは俺や蓮華が特訓で相手をした事もあって、実力は折り紙付きだ。
ワイドランドの浸食から神島を守る為の力。
人の力も勿論大事だけど、召喚の力はかなり使えると思った。
蓮華の大精霊召喚のような力が扱えるのであれば。
仮想蓮華、とまではいかなくても……それに近い状態を作れるのであれば。
神島を守る大きな力になるはずだ。
という考えに至って春盛君……っと、清田と呼んで欲しいって言われたんだったな。清田をユグドラシル領へと連れてきた。
俺が神島に入れたのだから、逆も大丈夫だろうと思ったからだ。
けど、そこは通常では無理だった。
清田では結界を超える事が出来なかったのだ。
そこで事情をブリランテに話すと、一時的に清田を通すようにしてくれた。
何故俺が通れたのかというと、兄貴が俺に加護を付与してくれていたからなんだとか。
俺だからというか、兄貴の力というのはなんとも。
まぁ、兄貴が力を貸してくれるのは俺や蓮華だけなので、俺だから大丈夫だったとも言えるのかもしれねぇけどさ。
「はあっはぁっ。よし、とどめだっ! ヴァルキリー、いけっ!」
『イエス、マスター』
清田の召喚したヴァルキリーが、ブラキオレイドスを貫く。
俺が大分削ったとはいえ、ブラキオレイドスの装甲を破るのは中々だ。
「や、やった! 倒せたぁぁぁっ! ありがとうヴァルキリー!」
『ハイ、オヤクニタテテ、ウレシイデス』
まだカタコトだが、大分聞き取りやすくなった言葉を話す人型モンスター。
ヴァルキリーってのは清田が付けた名前なだけで、戦女神というわけじゃーない。
ただ、女性型だし、顔も人間と変わらない。
元々は小さな蜘蛛だったのを育てていたら、上半身だけ女性のアラクモというモンスターに進化したそうだ。
そこから更に、ここで戦わせていたらレベルが急激に上がり、また進化した。
そうして今では二足歩行可能な、見た目だけなら完全に人のモンスターになった。
亜人って言うんだっけか、その種族の一つなんだろう。
「清田、ブラキオレイドスは召喚できそうか?」
「アーネスト先輩っ! えっと……はいっ! コンプリート表示になりましたっ!」
「よし。なら召喚してくれ。手は多い方が良いし、レべルもついでに上げないとな」
「分かりました! ブラキオレイドス召喚!」
『グォォォッ!』
「うわぁっ!?」
清田のすぐ隣に巨体のブラキオレイドスが出現し、その衝撃で清田が尻餅をつく。
ヴァルキリーが慌てて清田に手を貸し、それを見たブラキオレイドスが困った顔をしているように見えた。
「ははっ。清田はブラキオレイドスの背に乗せて貰ったら良いんじゃないか?」
「あ、それは良いかもですね! えっと、ブラキオレイドスだから……お前はこれからレイドスだ! よろしくなレイドス」
『グルゥ!』
意思疎通が出来るってのは良いもんだな。
ま、それも良し悪しな気はするけど、この場合は良いもんだ。
「よし、次は熊行くぞ熊!」
「はいアーネスト先輩っ! レベルもどんどん上がってるので、召喚限界数も100超えました!」
「おお、良い調子だな。今日は一日これを繰り返すからな、どんどん強くなれ清田!」
「はいっ!」
清田にはワイドランドの話をして、協力してくれる事になった。
彩香ちゃんへの下心もあるかもしれないが、強くなりたいという想いは本物だったし、自分の力が人を守る為の力になるのなら、と言ってくれた。
まだ中学生で幼い清田。でもそれを言えば、蓮二達だってまだ高校生だ。
俺はすでに社会を経験した大人だし、この体になってからもう人生何十回分も経っているから、精神面にかなりの差があるだろう。
だから、もし弱気になるような場面があれば、守ってやらないとな。
「よーし、行くぞヴァルキリー! レイドス!」
『ハイ、マスター』
『グルゥ!』
ブラキオレイドスの背に乗りながら、進み始める清田の後ろから、空を飛びながらゆっくり俺もついていく。
まだ敵わなそうな相手は俺が体力を削るが、それ以外では全て清田達に任せるつもりだ。
魔法の召喚と違い、スキルの召喚は魔力を消費しないらしいが、召喚された者が一度体力が尽きてしまうとその日は召喚できなくなるそうだ。
なので基本、召喚し続けるのは最強の手持ちのみにしているようだ。
「清田、経験値は召喚しなくても全体に割り振られるんだったよな?」
「はい! 召喚しているメンバーよりは半分近く減るんですけど、レベルアップはします!」
それなら良いか。下手に多く召喚して、味方に攻撃が当たって倒してしまったら目も当てられないしな。
ゲームみたいに仲間には当たらないとかあれば良いんだが……スキルならそういう判定あったりしないだろうか?
と思い聞いてみたが、
「俺達の同士討ちはないんですけど、仲間判定しててもアーネスト先輩に斬られたら即死すると思います……」
そううまくはいかねぇか。