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640.アーネストside40

 彩香ちゃんの話を聞くと、どうやら学校の通学路に巨大な魔物が現れたらしい。

 学校への道はそれだけではないので、遠回りすれば大丈夫らしいのだが、彩香ちゃんの通っている中学校と蓮二と剛史の通っている高等学校へと道が交差する位置に丁度出現したらしく、とても邪魔なのだと。

 それなら倒せすか退かせるかすれば良いと思うが、それがずっと眠っていて攻撃してもすぐに全快してしまうらしく、倒す事が出来ないらしい。

 カビ〇ンかな?


「それで、俺達に頼みにきたわけか」

「うー、お願いしますよぅ。私そんなに攻撃力は無いですし、剛史さんの全力でもブヨンって弾かれてしまったんですよぅ……」


 それはちょっと驚きだ。

 剛史はあれでも攻撃力は中々ある方だ。

 武器も大剣で重力も加えての攻撃は、普通の魔物なら一撃必殺に近いだろうし。


「アーネスト殿、彩香殿の力になってあげましょうよ」

「そうだな。うし、それじゃ行ってみるとするか!」

「へっ、そうこなくちゃな! ずっと特訓してっから、息抜きも必要だしな!」

「もう兄さん。それじゃ彩香ちゃん、案内よろしくね!」

「皆……ありがとう!」


 というわけで、俺達は皆してその問題の魔物が居る場所へと移動した。

 勿論だけど、俺には認識阻害の魔法を掛けてあるので仲間以外は俺を俺として認識できないようにしている。


「そんじゃ最初は俺から行くぜ! おらぁぁぁっ!」


 シュウヤが魔物に右ストレートパンチを繰り出す。

 しかし……


「おわっ!?」

「兄さん!?」


 そのまま弾かれて尻餅をついてしまった。

 慌てて駆け寄るミライに支えられながら、立ち上がったシュウヤは驚いた表情をしている。


「マジか……これは弾力で弾かれたんじゃないぞアーネスト。俺が込めた力と同じだけ返された感じだ」

「!!」

「なら、次は我がやってみるでござるよ」


 そう言って構えを取るリオ。

 あの蓮華ですら防げたかどうかと言わせる程の攻撃力を持ってるリオなら、まず間違いなく倒……


「ぬぁぁっ!?」


 凄まじい勢いでリオが吹っ飛んでいった。


「「リオさーん!?」」


 彩香ちゃんとミライが急いで駆け寄っている姿を見ながら、これは参ったと思った。

 リオの攻撃ですらダメージを与えられていない。

 しかし、彩香ちゃんから聞いていた話と違う気がするな。


「なぁ彩香ちゃん。彩香ちゃんの攻撃と、剛史の攻撃は普通に通ったのか?」

「あ、はいアーネストさん。こんな反射みたいな感じじゃなくて、普通にゴムみたいにブヨンって」


 うーむ、違いはなんだろうか?

 ま、考えるよりやってみる方が早いか!


「おいアーネスト、全力はやめろよ? お前が本気でやって、仮に反射されたらどこまでぶっ飛ぶか分からんぞ?」


 シュウヤの言葉に苦笑する。


「反射される事が分かってるなら、反射される時にもう一回同じ力以上で押せば良いと思わないか?」

「刹那のタイミングでそんな事が出来るのはお前くらいなもんだよ」


 いやー、割といっぱい居ると思うけどな。


「それじゃ、行くぜっ!」


 ネセルを握る手に力を入れ、オーラを纏わせる。

 地面を強く蹴り、跳躍しつつ左手のネセルで斬りかかった。

 それとほぼ同時に、右手のネセルを左手で放ったネセルに重ねた。


「グモォ!?」

「「「「「!!」」」」」


 初めて苦しそうな声を上げた魔物を、斬り裂く。


「グモォォォォッ……」


 そのまま魔物は消えた。

 どういう事だ? 確か、この世界の魔物も死体が残るはず。


「彩香ちゃん、この世界も魔物は死体が残るはずだよな?」

「あ、はい。普通はそうなんですけど……これは、ですね……」


 うん? なんか彩香ちゃんの目が泳いでるな。


「嘘だろっ!? 俺の最強のゴレムスがまさかやられるなんてっ……」


 口をポカーンとあけながらこちらへと近寄って来る学生が居た。彩香ちゃんと同じ制服を着ているから、中学生か。


「だから言ったでしょ。アンタなんかのスキルじゃ相手にならないって」

「ぐっ……玉田さん……」


 ふむ? 彩香ちゃんの知り合いか。制服が同じだし、同じ学校なら友達なのかもしれないが。

 それはともかく、今聞き逃せない単語が出たな。


「彩香ちゃん、どういう事か聞いても良いか?」

「うっ……それは、その、ですね。お、怒らないって約束してくれます?」

「それは内容によるな?」


 俺がニッコリと笑ってそう言うと、観念した彩香ちゃんは肩を落としながらあらましを教えてくれた。


 なんでも、同じ学校の同じクラスである春盛(はるもり) 清田(きよた)に告白されたそうだ。

 で、自分には好きな人が居るからと振ったそうなんだが、彼は諦めなかったそうで、色々と付きまとってくるようになった。

 それがハッキリ言って迷惑だからやめろと言ったら、ならその好きな人と勝負させてくれと言ってきたらしい。


 最初は彩香ちゃんもふざけるなって言って断っていたそうだが、余りにもしつこいので、その人に負けたら潔く諦めると言質をとったと。

 で、彼は召喚のスキルを持っているから、自分の召喚の中で最強の魔物を召喚しておき、倒されたら負けを認める、倒されなければ付き合ってほしいという流れになったそうだ。


 まぁ最近は告白すら面と向かってせずに、メッセージで済ませる人も増えている中で、正面から言うのはやるなと思うけど。

 それにしても俺達を巻き込むなという目を込めて彩香ちゃんを見ると、物凄く申し訳なさそうにしているので、溜息をついてしまったが、許す事にする。


「春盛君って言ったか?」

「は、はいっ!」


 ビクッとしつつも、俺に気をつけの姿勢で立っている。

 学生なら一個上なだけで先輩だし、会社よりある意味縦社会だしな。


「好きになって告白するのは良い。諦められないのも分かる。だけどな、好きになった子の迷惑になるような事をしてたら、意味がないだろ?」

「!!」

「どうせなら、自分を振った事を後悔させてやるくらいの気持ちで、恰好良い事しようぜ? その方が自分にとっても、相手にとっても良いだろ?」

「それは……はい、そうですね。俺、自分の気持ちを押し付けてました。……ごめん玉田さん。俺、かっこ悪かったよな」

「はい、それはもう」

「ぐぅ……」


 流石彩香ちゃん、きっぱり言う。


「俺、もっと強くなる! ランキング戦、絶対に上位になってみせる! そうしてカッコいい所を見せて、また告白する!」

「ごめんなさい」

「振るのが早くないかな!?」


 笑いそうになるのを懸命に堪えた。

 シュウヤなんて我慢しきれてないし、ミライとリオは横を向いて震えている。

 あれは絶対に吹き出すのを我慢してる。


「ふぅ、まぁおかしいとは思ったんだけどよ。ここに居た魔物がずっと居たなら、他の人達がもっと集まってただろうしな」

「すみません……」

「ま、それはもう良いさ。それより春盛君、さっきの召喚は何体くらい出来るんだ?」

「えっと、今のレベルだと六体です。強さも俺の強さは関係なくて、召喚できる魔物それぞれにレベルがある感じなんです」

「へぇ……。それってさ、使役するのにどんな条件が必要なんだ?」

「俺か召喚した魔物が倒して、魂を集めてそれが100%になれば召喚できる感じです。さっきの魔物は本当に偶々なんですけど、死にかけだったのをとどめだけさせた感じで……一体で100%になったので、特殊個体だったみたいです。俺の手持ちの中で、最強の耐久力があるんですけど……まさか一撃で倒されるなんて思いませんでした……」


 成程……春盛君の力は、かなり有用だな。

 だから俺は、提案する事にした。


「なぁ春盛君。滅茶苦茶強い召喚獣、欲しくないか?」

「え?」


 ワイドランドからの侵略に対抗できる、大きな力になってくれるかもしれない。

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