63.学園に向けて
大精霊達の住む家が出来てから数日。
家具等を色々買いに行って、ホールにたくさん置いていった。
時々バニラおばあちゃんの家に行って、販売する物を見せて貰いに行ったり。
驚いたのが、すでに色々と商品化して、王都・エイランドではすでに販売しているとの事。
電気も普通にあるので、乾電池もあった。
なんか私とアーネストの口座も作ってくれてるみたいで、魔力認証だけさせられたんだけど、私の知らない所で私の使えるお金が増えてる。
母さんにあげようかな、私あっても意味ないんだよねホント……。
あと、VRゲームも作る予定って聞いた。
魔法も魔術もある世界で、どんな内容の物を作るのか、ワクワクがとまらない。
凄すぎるよバニラおばあちゃん……。
試作が出来たら、私とアーネストに試してもらっても良い?って聞かれたので、もちろんOKした。
それから毎日、アリス姉さんと模擬戦をしながら(大分手加減が上達してた。私が上達しただけかもしれないけれど……)夕方は勉強の繰り返し。
もちろん花畑の手入れは忘れないよ。
ドライアドがずっと花畑の傍で寝転がってて、見ててくれてるようだった。
水やりをしようとしたら、ディーネが手伝ってくれて嬉しかったよ。
母さんや兄さん、アリス姉さんも、時々様子を見てくれてるとドライアドから聞いた。
なんでも、私に隠れて来てるようで、名前を覚えようと必死だとか。
それを私に伝えたら意味ないと思うんだけど、皆の気持ちが嬉しかったので、今度私だけで作った料理を振る舞おうと思う。
まぁ、その……小学生の家庭科で作るくらいの出来は、あるんじゃないかなぁ……(自信無し)
アーネストが居ない生活に若干の寂しさはあるけど、あいつも頑張ってるんだろうし、私も頑張らなければ。
そんな毎日を繰り返していたある日。
「レンちゃん、アリス、制服持ってきたよー」
母さんが学園の制服を持ってきてくれた。
そして、慣れたはずなのに思わず引いてしまった私を見て、笑う母さん。
「あはは。レンちゃん、やっぱり女の子の制服は、まだ着るのに抵抗があるかな?」
「う、うん。なんていうか、普段着はそこまで気にならなくなったんだよ?だけど制服って、やっぱり女の子は女の子って思っちゃうというか……」
しどろもどろになる私だった。
「蓮華さんは可愛いし、綺麗だからすっごく似合うだろうし、気にしなくて良いのに」
なんてアリス姉さんが言ってくるけど、可愛いのはアリス姉さんだよ!とつっこみたい。
「私は蓮華さんとお揃い嬉しいよー?」
ぐっ……その無邪気な笑顔が今は眩しすぎて辛い。
「さ、着て着て!」
と言って母さんがぐいぐい押してくるので、仕方なく着替える事にする。
服に手を掛けたところで、アリス姉さんが驚いたように声を掛けてくる。
「ちょ!蓮華さん!ここじゃ」
ベストタイミングというか、降りてくる兄さん。
「おや、なんの騒……」
「……」
固まる私と兄さん。
私は服を上にたくし上げているところだったりする。
「ロキー!回れ右ぃー!!」
「は、はい!すみません蓮華!」
母さんが叫んで、兄さんが素直に謝罪する。
「蓮華さんー!なんでここで着替えようとするかなー!?」
とアリス姉さんが叫んでくる。
いやだってね、昔から着替えろって言われたら、部屋の中ならどこでも良かったんですよ。
だから、服を渡されたら、そこで着替えるじゃない?
「レンちゃん、そういう所を矯正しないと、学園にそのまま行ったらえらい事になっちゃうよ……!」
「うん、相手がドラゴンでも、飢えた狼にこの肉美味しいよーって見せびらかし続けたら、理性を失って襲っちゃうかもしれない……!」
アリス姉さんが意味の分からない例えを言う。
「だ、大丈夫だよ。その、今のはつい」
「「ついじゃ駄目なの!!」」
「はい……」
としか言えない私だった。
ずっと後ろを向いている兄さんに言う。
「その、兄さんは悪くないのに、ごめんね」
と。
そうしたら兄さんは、むしろ申し訳なさそうに言う。
「いえ、こちらこそすみません蓮華。マーガリン師匠にアリスだけなら気にもしなくて良いのですが、蓮華がいるのに無神経でしたね」
「「どういう意味よー!!」」
母さんとアリス姉さんがハモってる。
うん、二人とも綺麗だし可愛いのに、なんで兄さんはそう思わないのか不思議だ。
「い、いや兄さん、普通に降りてきただけなんだから、悪いのは私だよ。それと、母さんもアリス姉さんも綺麗で可愛い女性なんだから、そんな事言っちゃ駄目だよ兄さん」
「蓮華は優しいですね。分かりました、蓮華が言うなら気を付けましょう」
いや、それを言っちゃ駄目だと思うの。
何故兄さんには伝わらない。
「レンちゃん……もう、どうしてこんなに可愛いの!」
母さんに抱きしめられる。
「蓮華さん、蓮華さんさえそう思ってくれてるなら、私は良いからね!」
……うん、二人とも兄さんの言葉を気にもしてないな。
これはこれで仲は良いと言えるのかもしれない。
それから、アリス姉さんと2階に上がって、制服に着替える。
着方が分からなくて、アリス姉さんに質問しながらだったけどね、恥ずかしい。
アリス姉さんも滅茶苦茶可愛いから、娘のような子の着替えを堂々と覗いてるというか、見てる気がして罪悪感が半端なかった。
それに、アリス姉さんは私の元の姿を知ってるのに、気にならないんだろうか。
でも、流石にそれは聞けない……。
「よし、バッチリだね蓮華さん!……蓮華さん、天使に見えるんだけど」
「ごめん、何を言っているのかわからないよアリス姉さん……」
私はと言えば、女の子の制服を着るという羞恥プレイに顔が真っ赤な事を自覚している。
しかし、アリス姉さんにはそんな所も良く映るらしく。
「か、可愛い……!蓮華さんマジ天使だよー!」
もはや、何も言えない私だった。
それから下に降りる。
「レン、ちゃんっ!それにアリスも……か、可愛すぎ……!」
なんか母さんの足取りがやばい。
フラフラしてるよ、大丈夫なの。
「くっ……蓮華、その姿で学園に行くというのですかっ……!」
そりゃ行くよ兄さん。
その為の制服でしょうが。
「ろ、ロキ、これはヤバいわね。破壊力が凄すぎるわ」
「え、ええ。全くの同意見ですよマーガリン師匠。この蓮華をそのまま学園へ行かせる事などできましょうか、いやできません!」
「その通りよロキ!」
なんか阿呆になった二人はしばらく放っておく事にしよう。
「アリス姉さん、大精霊の皆の所に行かない?」
その言葉にニッコリと笑うアリス姉さん。
「良いよ蓮華さん!お披露目だね!」
そう言って、私の手を取って走り出す。
「レンちゃん!アリス!待って!私も行くからー!」
「待ちなさい蓮華!そのまま外に出るのは許可できませんよ!?」
と言いながら、慌てて後を追いかけてくる二人が面白かった。
それから、大精霊の皆とホールで集まって話をして。
楽しい毎日はあっという間に過ぎて行った。
そして、明日はいよいよ学園に入学する日。
試験とか普通はあるらしいんだけど、私は母さんの娘という事で、免除された。
アリス姉さんも一緒だ。
母さんがずっと心配そうにソワソワしてるんだけど、私は逆だった。
すでにアーネストが居る学園。
一度は経験した学園生活だけど、今回は体が女の子だ。
色々と違うだろうけど、アーネストにアリス姉さん、それに大精霊の皆も居る。
不安よりも、楽しみの方が大きくても、しょうがないじゃないか。
こうして私も、明日からは学園生だ。
どんな毎日になるのか、楽しみだな。
-第二章・大精霊編・完-
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
これにて、第二章・大精霊編は終わりとなります。
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