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639.アーネストside39

 エキストラ。

 それは、なんらかの理由で島のランキングに参加出来なかった者や、上位三名に入れなかった者が参加できる戦いらしい。

 各島の一位から三位、つまり決勝戦に参加した二人と準決勝の敗れた二人で戦った勝者の一人が世界サミットに招待されるわけだが、エキストラとは敗者復活戦のような形なんだそうだ。

 エキストラの枠は二名。

 つーことで、俺とシュウヤとリオで枠の取り合いになるかと思ったが、(ミライは辞退した)


「あー、俺も本気出すにはミライが居た方が良いしな。今回はリオに任せるぜ」

「任されたでござるよシュウヤ殿!」


 との事で、そのエキストラ戦には俺とリオが参加する事に決まった。

 神島は四十七の島で成り立っていて、元の世界で東京の位置にある島がキリングフィールドだったわけだが、キリングフィールドの首都が東京なんだそうだ。

 俺の記憶とブリランテが元々考えていた世界が融合して生まれた世界が、この神島。

 対ワイドランドを想定して創っただけあって、全ての島の住人がなんらかのスキルを扱える。


 ワイドランドの侵食の影響で魔物が現れる島はマチマチみたいだが、それでも全島でランキング制を導入する事によって、戦いの腕を磨かせたそうだ。


「ブリランテが言えば、すぐに済む話な気もするな?」

「アーネストさん、そんな元も子もない事を……」


 彩香ちゃんに若干呆れられたけど、事は世界の危機なんだしさ。


「あらん、アーネストちゃんは突然出てきた人が、『アタクシはこの世界を創った神で、これから世界が魔物に襲われるから自衛なさいねん』なんて言われて、素直に従えるのかしらん?」


 ……まずは何言ってんだこいつってなるな。


「それにねん、想いは想像以上の力になるものよん。やらされるより、自分達が守ろうと思えるように流れを作った方が良いと思うわよん」


 ブリランテの言は俺も理解できる。

 それに、常識はずれの力を見せられたら、まず守ってもらおうと考える人だって多くなるだろう。

 最悪の場合、そんなに強いなら貴方が守ってくれとか思う人も出るだろう。

 俺はそういう他力本願な奴は嫌いなんだよな。

 お前には力があるんだから、守ってくれよなんて言われたら、俺は腹が立つし。


 少なくとも、強くなるには何らかの努力をしているはずだ、例外はあるかもしれないが。

 その努力をして強くなった人に、守ってもらうのが当たり前のように言う奴は俺は好かない。


 その人が努力している間、お前は遊んでたんじゃないのか?

 他の事をしていたんだろう?

 それなのに、その努力をしていた人が他の事にかまけていた人を守らなければならないのか?


 そういう考えになるし、腹立たしい感情が生まれてしまう。

 勿論努力をしても強くなれなかった人だって居るだろうし、全ての人がなんて言うつもりは無いけど……それでも、守ってもらう事を当たり前に考えるような奴は、俺は嫌いだ。

 俺は弱くても努力をする奴が好きだし、弱くても自身の出来る事を見つけて、大切な物を守ろうとする奴はもっと好きだ。

 だから、俺は世界を救うなんて言うつもりは無い。


 ただ、この世界に生きる剛史や彩香ちゃんのような、前を真っすぐ向いて努力を(いと)わない、そんな友人達の未来の為に、戦おうと思っただけだ。


「はぁっはぁっ……考え事か、アーネスト……」

「ん? おお、悪い、ちょっとな」

「くっそー、考え事しながらでも簡単に防がれるとか、どうなってんだ……」


 息を荒くして大剣を振るう剛史に苦笑する。

 俺は自分の筋力を魔法でブーストをかけ、そこにオーラで更に強化している為、滅茶苦茶な力になっている。

 このまま地面を殴れば大きなクレーターが出来るだろうし、山を殴れば消し飛ばせるだろう。


「言っただろ、オーラを使えって。まだ大剣を覆いきれてねぇぞ剛史」

「止まってる時ならなんとか全部包めるんだけどなぁ。動かすと難しいんだよな……なんかコツとかないのかよアーネストー」

「コツは慣れだな。寝る時もずっとオーラを意識して皮膚を包んでおくと良いぞ」

「いやいやいや! これ五分でもめっちゃ気力なくなるんだけど!? 全力ダッシュ何本もした後みてぇにさ!」


 それはそうだろうな。

 オーラは気力を常時消費するし、体力の消耗も激しい。

 魔力と同じで使いきれば最大量が上がるから、何度も繰り返すしかないしな。


「はぁっはぁっ……剛史、交代だ」

「お、蓮二! こっちはこっちできちぃんだよな……っし、頑張ってくっか!」


 剛史は蓮二と入れ替わり、ランニングに戻る。

 そして蓮二が今度は俺の前に立ち、刀を構えた。


「よろしく頼む、アーネスト」

「おう。蓮二は流石にオーラの使い方が剛史より上手いな」


 剛史が途切れ途切れにオーラが包んでいる状態なのに比べ、蓮二は全身を均一にオーラが包んでいる。


「目の前に良い見本が居るからさ。真似してただけだよ」

「ははっ。ああ、存分に俺達を利用しな。俺達が居なくなった後、この世界を守る(かなめ)はお前達になるかもしれねぇんだからさ」

「!!」


 そう、俺達はワイドランドの侵食を防いだら、この世界から出る事になる。

 だけど脅威がそれで全て去るかは分からない。

 また何かに巻き込まれないとも言えない。

 その時に、この世界を守る戦力の中心は、きっと蓮二達になると思っている。

 だからこそ、蓮二達には強くなって貰おうと思っている。


「そこまで考えてくれてたんだな。なら、その期待には力で応えて見せるよアーネスト」

「おう、信じてるぜ蓮二」


 俺もネセルを構える。

 こうして日曜日は過ぎていき、剛史と彩香ちゃんは学校へ行く為、家へと帰った。

 蓮二もブリランテの分身が居るという場所へ行く為、この場所から出て行った。

 残された俺とシュウヤ、ミライにリオは、このままここで特訓をしていたんだが……


「アーネストさん! 助けてください!」

「「「「え?」」」」


 次の金曜日の晩に、この場所へ来た彩香ちゃんから思いもよらない話を受けたのだった。

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