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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第六章 天上界編

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633.蓮華side33

 抜刀術、またの名を居合術。

 刀を鞘に収めて帯刀した状態から、鞘から刀を抜き放つ動作で相手に一撃を与えて続く太刀捌きで更に攻撃を加え、血振るい残心、納刀するに至る形・技術を中心に構成された日本の武術だ。

 鞘から抜いて構えた状態で開始するのが剣術、鞘に収まった状態から開始するのが抜刀術、居合と認識されていると思う。


 通常では「刀を抜く」「斬る」という二段階に動作が分けられる所を、抜刀術・居合術では主に1つの動作に集約させている。

 不意な敵の攻撃、害意の起こりに対して、「後の先」または「先々の先」によって、これに応ずる技術を指している。

 いわば、常に帯刀する武士の文化から派生した、平時における襲撃から身を守る護身術としての側面もあると父に教わった。


『居合と剣術とは本来表裏一体で一つのものだ。どちらも身につけろ、蓮二』


 とは父の口癖だった。

 異世界などではない、刀で斬られれば即死だってある元の世界。

 刀を抜いたその動作から一気に斬りつけ、相手がその動きを一瞬の間に気づいて避けない限り、敵の頭を二つに両断することができる抜刀術・居合術は殺人技でもある。

 自分を守る為の力は、使い方を変えれば理不尽な暴力と化すのは、どの世界でも変わらない。


 目の前のリオちゃんの構えは、確かに見た事のある構えだ。

 我流と言う通り、通常の抜刀術の構えとは少し違う。


 抜刀術は片手で刀を抜き打ち、さらに速さと強さを両立することが必要だし、全身の体の細かい動作や刀を握るコントロールなど複雑な挙動が必要なものだ。

 だというのに、リオさんは体を大きく左に寄せ刀を構えている。

 抜刀術には鞘引きという、刀が鞘を離れる瞬間に鞘を素早く引いて加速を出すという技術が必要不可欠だ。

 このことから、抜刀術を行う際に鞘を体に限界まで引き寄せているリオさんの構えは、鞘引きが不可能な体勢となっている。

 高い速度と威力を出す抜刀術を行うには極めて困難だと思うけど……ここは元の世界じゃない。


 抜刀術・居合術は本来一撃必殺の技。

 つまり、初撃が大事だ。

 私はリオさんの一挙手一投足を見逃さないように全身を見る。


「……行きます、蓮華殿っ!」

「!!」


 リオさんの声と同時に、凄まじい勢いで刀が振るわれる。

 ソウルでクロスするように防ぐと、凄まじい金切り音が鳴り響いた。

 ビリビリと大気が震え、周りの木から葉が舞う。


「……ふはっ! 凄い、流石です蓮華殿っ! 我の最強の二の太刀要らずの抜刀術を、こうも簡単に凌がれるとは!」

「いやー、正直声掛けが無かったら防げたかどうか。凄まじい速度と技の冴えだね。アーネストと同じくらい速かったよリオさん」

「リオは一瞬だけなら俺より速ぇからなぁ。リオ、体は問題なさそうか?」

「大丈夫でござるよアーネスト殿。蓮華殿もありがとうございました。我も戦えそうです!」


 目をキラキラさせてそう言うリオさんに笑顔で応える。


「よし、それじゃ皆の元へ戻ろうか。それで良いんだよなアーネスト?」

「おう。これで一個目の目標は達成したからな」

「そういえば、勢力を作るんだったな。名前とか考えてるのか?」

「それがまだなんだよな。皆が言うには、俺と蓮華はネーミングセンスがあれらしいからさ、皆に相談しようと思ってるぜ」


 あー、それは……その方が良いかもしれない。

 私も自分の名づけに自信ないし。


「そっか。私も勢力ってわけじゃないけど、そういうの作ろうかなぁ」

「でしたら我、蓮華殿の仲間にな……」

「リオは俺の仲間だよなぁ!?」

「うむむ、しかし蓮華殿には大恩が……」

「あはは。良いよ良いよリオさん。アーネストの仲間なら、私の敵にはなりえないから」

「……それなんだけどよ、事情があったら俺は蓮華と敵対する事もあるかもしれねぇ。そん時に、リオがどっちつかずじゃ困るんだよな」

「成程。ならリオさん、無いとは思うけど、一時的にアーネストと敵対する事があった場合、アーネストについてあげて」

「蓮華殿……」

「万が一にもアーネストと敵対なんてないと思うけどね。けど、リヴァルさんの未来の件もあるし、絶対は言いきれない。その時は、アーネストに力を貸してあげて欲しい。例え私と敵対する事になったとしても。約束できる?」

「……。分かりました。蓮華殿、我は蓮華殿の味方ですが、アーネスト殿を第一にするように誓います」

「うん、ありがとう」

「すまねぇな、蓮華」

「良いんだよ。それに、アーネストと敵対するなんて本当無いだろうし」

「ま、それもそうなんだけどよ」


 そう言って笑いあう私達だったが、そう遠くない未来に、それが現実となる事を……今の私達は知らない。

 

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