622.蓮華side30
あけましておめでとうございます。
色々あって更新が遅れました、すみません。
今年も宜しくお願い致します。
魔法陣の中心で横たわるユグドラシルの肉体に、魔力を通していく。
人間の体に血液が循環しているように、手足の指の先から、徐々に心臓に至るように……この場合は神格だろうか。
ゆっくり、でも着実に。
山にトンネルを作るかのように、魔力で道を作って行く。
自分の体内と同じ構造だからだろうか、迷うことはない。
私の知識で知らなくても、私の体が知っている。
「くっ……」
「蓮華さんっ!」
「蓮華っ!」
アリス姉さんとノルンが、よろめいた私を隣で支えてくれる。
流石に必要な魔力量が膨大だ。
でもそれは当然だ。私の魔力量はユグドラシルの魔力量。
いくら膨大な魔力量とはいえ、本人もそれと同等、もしくはそれ以上の魔力量があるのだから。
「レンちゃん、自身の魔力だけに頼らないで。私達の魔力は異物になるから渡せない。だけど、この世界にはユグドラシルの魔力が漂ってるの」
「蓮華、この世界のユグドラシルのマナが多少減ろうと、気にする事はありません。またすぐに世界樹が補充するでしょうからね。そうでしょうユグドラシル」
母さんと兄さんが、ユグドラシルの方を見る。
ユグドラシルは微笑みながら、頷いた。
「分かった。私の魔力だけだと、ちょっと無理みたいだから……使わせて貰うね、ユグドラシル」
空気中にあるユグドラシルのマナを、体内に取り込み混ぜていく。
そして私の魔力と成ったマナを、ユグドラシルの体へと注いでいく。
ユグドラシルの体は、いつしか光り輝いている。
「……うん、今だよユーちゃん!」
「分かりました。蓮華、ありがとう」
ユグドラシルの魂が、肉体へと吸収されていく。
それを全員が見守っている。
やがて光が収まり、私は疲労感から片膝をついてしまう。
「蓮華、大丈夫?」
「うん。ちょっと休めば回復すると思うから。それより、成功したかな?」
「分からない……けど、大丈夫よ。アンタだけじゃない、リンスレットや皆が補助してくれてたんだから」
そう、私が魔力を送るのと同時に、皆がその補助をしてくれていた。
私の魔力が通りやすいように、また暴走しないように。
そして同調率を限りなく100%にするように。
そのお陰で、私の魔力はほとんど無駄にならずに、ユグドラシルに流す事が出来た。
私だけだったなら、確実に魔力が底をついて、例え空気中のユグドラシルの魔力を借りても無理だっただろう。
「アリス姉さん、分かる?」
「……うん、成功はしてると思う。もう少し、待ってみよう」
そうアリス姉さんが言うので、起き上がらないユグドラシルを見つめる。
まるで死んだように眠っているユグドラシル。
私の魔力を通した事で、その透き通るように白い肌が、ほんのりと赤みが増している。
どれくらい経っただろう。誰も声を出さずに見守っている中で、かすかにユグドラシルの指が動いた。
「「「「「!!」」」」」
「う……。ふぅ、やっと制御出来ました。慣れない体を動かすのは難しいですね」
「ユーちゃんっ……!」
「ユグドラシルッ!」
「おっと……アリス、マーリン……ただいまです」
「うんっ……うんっ……」
「ええ……おかえり、ユグドラシル」
上半身だけを起こしたユグドラシルの元へ駆け寄り、アリス姉さんと母さんはユグドラシルを抱きしめた。
ユグドラシルもアリス姉さんと母さんの背中へと手を回し、ポンポンと叩いている。
良かったね母さん、アリス姉さん。
ずっと、何年、何百、ううん何千年もの間、会えなかった友人と、こうしてまた一緒に生きる事ができる。
それは言葉にできないほど、嬉しい事だと思うから。
本当に、良かった。
さて、後は……あれ? 体に力が、入ら、ない。
「え……? 蓮華!?」
「「「「「!?」」」」」
そうして私は、意識を手放した。