614.アーネストside28
「なっ……あれはっ……アーネスト、か!?」
「どうしたシュウヤ、何が見えたんだ?」
「あのディメンジョンホールの中から、アーネストそっくりの奴が出てきたんだよ!」
「!!」
それはもしかして、この世界では行方不明になっている、蓮二か!?
「なんだ? 手をこっちに向けてんぞ……?」
「!! 下がるぞシュウヤ! ミライ!」
「「!?」」
慌ててスカイツリーから飛び降りたのは正解だった。
俺達三人が居た場所を、光が貫いてスカイツリーの一部が破壊された。
「この距離から攻撃してきやがったのか!?」
スカイツリーから落ちている俺達の元へ、新たな人影が増える。
「お前達が、異物か」
「「「!!」」」
その姿は、まさに俺そのもので。
双子の兄弟と言われても信じられるような、いやむしろドッペルゲンガーと言われても信じてしまうくらいそっくりで……。
「お前は、蓮二か?」
「俺の事を知ってるのか。そうだ、俺は三木 蓮二。この世界に侵入してきた異物を滅する為に来た」
「おいおい、異物って俺達の事か!?」
シュウヤの叫ぶような言葉に、蓮二は頷いた。
「そうだ。お前達はこの世界の住人ではないのは聞いて知っている。そして、倒すように頼まれた。借りは返さないとな。ってわけで、お前達にはここでこの世界から退場してもらう」
そう言ってどこからともなく刀を出現させる蓮二。
どうやらこっちの話は聞く耳もたねぇようだ。
俺はシュウヤとミライに目で合図する。
「「……」」
二人は黙って頷いてくれた。
「色々言いたい事はあるが、まずは自己紹介だ。俺の元の名は三木 蓮二。今はアーネストって名乗ってる」
「何?」
「分かるだろ、お前もアーネストって名前、好きだろ?」
「っ!」
おー、驚いてる驚いてる。どうやらこの世界の俺も、同じみたいだな。
なら、あれ言ったらダメージ受けるだろうな。いやしかしこれ諸刃の剣なんだが……。
「中学一年生になった頃。好きになってはまった漫画のヒロインが、現実に出てこないかなぁと何度も妄想してたよな?」
「ぐはっ!?」
「高校生に上がるまでほぼ毎日思っていたそれは、今度は自分がそういった世界に行けないかなぁに変わっていったんだよなぁ」
「ごふぅっ! な、何故それをお前が、いやお前はもしかして……姿が俺そっくりな時点でそうでないかと、思ってはいたが……俺か!?」
「その通りだ!」
「くっ……アーネスト名乗りを通すなんて、異世界の俺羨ましい……!」
「なぁ、俺達は何を見せられてるんだミライ……」
「私に聞かないでよお兄ちゃん……」
シュウヤとミライに若干呆れられてしまったが、これは必要な儀式なんだ。
蓮華ともこの会話で分かり合ったから。
「なぁ蓮二、さっき頼まれたって言ったよな。詳しい話を聞かせてくれねぇか? 一応言っておくと、俺達はこの世界を壊すつもりとか、そういう気は一切ないんだ」
「あー……。そうだな、お前が異世界の俺なら、絶対そんな事しないって分かる。なんせ俺の事だもんな。なら今回の事はあの人の勘違いの可能性が高そうか……」
そう言って蓮二は刀を仕舞ってくれた。
ちなみに、絶賛スカイツリーから落下中だった俺達は、今はスカイツリーを走りながら降りている。
「っと、ようやく地面についたな。それより、あのディメンジョンホールをなんとかするのが先か?」
「ああ、それなら問題ない。あのディメンジョンホールは俺が出した物だからな。よっ……これで消えたはずだ」
「シュウヤ、確認できるか?」
「ああ、場所は覚えたから問題ない。見てくるぜ」
そう言って高く跳躍したシュウヤは、着地した後驚いた表情で言った。
「マジでなくなってるわ! 俺の必殺技受けてもヒビすらなかったのによ!?」
「あれはやっぱりお前のスキルか。とんでもない威力だったからな、かなりの力を持ってかれたせいで反撃の威力が下がっちまった」
つまり、シュウヤのあの攻撃を蓮二は防いだのか。
「って事は、今のモンパレとは関係ないのか?」
「多少はあるな。あのディメンジョンホールは、この世界とあの世界を繋ぐ門だ。門が繋がれている以上、あの世界の魔物がこの世界に出現していた分は増えていたと思うぜ」
成程……それで剛史がいつもより強いって言ってたのか。
「聞きたい事が多々あるんだけどさ。とりあえず、蓮二はどうして行方不明になってたんだ?」
「それなんだが……アーネストは剛史と彩香ちゃんには会ってたりするのか?」
「ああ、会ってる。蓮二の両親ともな。それと事情は説明してある」
「そうか……なら、話は早いな。アーネスト、この世界を守る為に、力を貸してくれないか」
いきなりとんでもない事を言われたな。
勿論力を貸すのはやぶさかではないけど、まずは理由を聞かないとな。