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613.アーネストside27

 家についた俺達は、ひとまず腰を落ち着けて剛史と彩香ちゃんにスマホで連絡を入れる事にした。 

 するとすぐに折り返しの返事がきた。


『蓮二ッ! 丁度良い所に帰ってきてくれたぜ!』

「丁度良い所?」

『ああ! モンパレが起きたっ!』

「なんだって!? ……で、モンパレってなんだ?」

『知らねぇのかよ!? ってそうか、蓮二は蓮二でも蓮二じゃなかったな! モンパレってのはモンスターパレードの略でな!』

「名前からなんとなく察した。要は魔物がすげぇ居るって事だな?」

『ああ! 島中の人達が協力して魔物を倒してるけど、今日のはいつもより段違いに魔物が多い上に強い! 手を貸してくれねぇかっ!』

「分かった!」

『すまん!』


 通信を切ってから部屋の窓を開けて外を見ると、おびただしい数の魔物が道路を埋め尽くすかのように居た。


「これはすげぇな……」

「うわぁ……なんですかこれ」


 凄惨な未来を体験してきたシュウヤにミライでも、この数は流石に驚いている。


「お、街の人達も戦ってるみたいだな。倒しながら合流させていくか!」

「分かったぜアーネスト!」

「うん!」


 玄関に降りる時間も惜しく感じたので、窓からそのまま飛び降りる。

 道路いっぱいに魔物が居る為、踏んずけた。


「ギャフッ!?」

「っと、そらよっ!」

「ギャァァッ!!」

「うええ、靴の感触がむぎゅってするぅ」

「家は結界で守られてるから、入れねぇわけか。っても、結界もどこまで持つか分からねぇよなアーネスト」

「そうだな。とりあえず、この直線は誰も人は居ねぇみてぇだ。シュウヤ、頼めるか?」

「おう、任せな」

「それじゃお兄ちゃん、矢の補充するね! 『CHARGING』!」

「サンキューミライ! いっくぜぇ! 『プラズマショット』!」


 ミライによって装填された矢(弾)を、シュウヤが射る。

 道路一杯に波動砲のように広がり、進路上の魔物達を一掃した。


「流石だな二人共! よし、行くぜ!」

「おう!」

「はいっ!」


 駆けた先では、魔物に囲まれながらも懸命に戦っている人達が居た。

 流石にシュウヤの範囲技で倒すわけにもいかない為、戦い方を切り替える。


「おおおっ!」

「「「!?」」」


 大声をあげてこちらに気付かせ、一直線に魔物を倒しながら近づく。

 後ろからはシュウヤとミライが単体攻撃で援護してくれている。


「大丈夫か!?」

「あ、ああ! 助かる! こちらを早く片付けて他の皆と合流しようと思ったんだが、思った以上に数が多い!」

「大通りに出るまでは、俺の仲間が範囲スキルで蹴散らして進む! 後ろに下がってくれ!」

「わ、分かった! 皆、従おう!」

「「おお!」」


 俺の突撃を見て実力を察してくれたのか、大人しく従ってくれる。


「シュウヤ!」

「おう! ミライ!」

「合点! 『CHARGING』!」

「もう一発っ! 『プラズマショット』!」

「「「「「ギャァァァァァッ!!」」」」」

「いっちょ上がりだぜっ!」

「流石お兄ちゃん!」

「す、すげぇ……」

「ナニモンだよ……」


 シュウヤの力に驚いているようだが、今は時間が惜しい。


「よし、行くぞ!」


 魔物の居なくなった道路を駆け、大通りへと出る。

 そこでは数多くの人達が、それ以上の数の魔物達と戦っていた。


「お兄ちゃん! 後ろっ!」

「何っ!? うぉっ!?」


 ミライが叫び、突然現れた魔物の攻撃をなんとか避けるシュウヤ。

 俺はネセルを取り出し剣を鞭のようにしならせて魔物を両断する。


「大丈夫かシュウヤ!」

「ああ、助かったぜミライ、アーネスト」

「倒した傍から……今回のモンパレは異常だっ……」


 シュウヤの『プラズマショット』で消え去った魔物達が、またどこからともなく現れた。

 通常のモンパレがどんなものなのか分からないが、この人達に聞くわけにもいかない。

 この世界の人間にとって、モンパレは日常的な事だろうから。

 なので、剛史と彩香ちゃんにメッセージを送る。

 戦っている場合もあるだろうし、返事を送れる方が送ってくれたら良い。


 すると、すぐに返事が来た。彩香ちゃんからだ。


『モンパレは普段、時間と共に収まります。大体平均で四時間程度なんですが、すでに五時間が経っているのに、消える気配が無いどころか、ずっと増え続けてるんです!』


 いつもと違うモンパレか。

 それはもしかして、俺が来たからか……?

 いや、考えすぎだよな。


『国から連絡が新たにあったのでアーネストさんにも共有しますね! えっと、島の中央付近に、紫色のゲートがあるみたいで、そこから魔物が無尽蔵に生まれているみたいです。よって、このゲートの破壊、もしくは封鎖するように指令が出ました!』


 成程、分かりやすい目標があるなら楽で良い。


「シュウヤ、頼めるか?」

「見て見ねぇとなんとも言えねぇけど……アーネスト、この街で一番高いとこ、どこか分かるか?」

「ん? そんなもん飛んだら……あー……そうか、それはまずいよな」

「ああ。この辺りを一望出来る場所ならどこでも良いが……」


 シュウヤは神眼のスキルを持っている為、どんなに距離があっても対象を識別できる。

 そして、その弓の腕は百発百中だ。


「なら、多分スカイツリーだな。シュウヤならここからでも見えるだろうけど、方角的にはこっちだ」

「……見えた、あれだな。よし、なら俺はひとっ走り行ってくる。アーネストは……」

「いや、俺も一緒に行くさ。ってわけで、俺達はこのままいかせて貰う。アンタ達も頑張ってくれ!」

「わ、分かった。助けてもらった分、俺達も他の人達を助けて恩返しさせて貰うよ!」


 気の良い人達に手を振って別れ、俺達はスカイツリーの最上部を目指す。

 道路は魔物で溢れているので、家の屋根を伝って駆ける。


「うへぇ、なんだか忍者になった気分」


 とはミライの言葉。

 俺とシュウヤは苦笑しながらスカイツリーへと速度を上げる。


「よし、後は上へ駆けるだけだな。悠長に登ってる時間が惜しい、駆け上がるぞ!」

「ああ!」

「は、はいっ!」


 そうしてスカイツリーの外側を走って昇って行く。

 難なく頂上へと辿り着いた俺達は、魔物で溢れかえった街を見渡した。


「うう、気持ち悪いです……」

「シュウヤ、分かるか?」

「ちょっと待ってくれ。今探して……あった! あれかっ! ……マジかよ、あれは『ディメンジョンホール』じゃねぇか……」

「「!!」」


 『ディメンジョンホール』とは、亜空間とは違う、別世界への入口とされている。

 通説ではある世界と繋がっていて、そこから帰って来た者は居ないと聞いた。


「って事は、開けた奴が居るって事か。確か閉じるには、術者を気絶させるか、魔力切れにさせないとダメなんだよな」

「確かな。物理的に攻撃しても、術者の魔力にダメージを与えれるから有効だったはずだぜ」

「届くか、シュウヤ」

「へっ。誰に物を言ってんだ?」


 ニヤリと笑うシュウヤは、本当に頼りになるぜ。


「頼む」

「おう。ミライ、頼む。超長距離用な」

「ん。何発?」

「とりあえず10発」

「了解。『CHARGING』!」


 ミライが手をかざすと、シュウヤの前に10発の球が生成される。

 威力はミライの力とシュウヤの力が乗算される為、凄まじい攻撃力へと変化する。


「よしっ! 行くぜぇっ!」


 巨大な弓を構え、ミライの作った球が矢の形へと変化し、ギリギリと音を奏でながら弦を引く。

 俺には見えないが、シュウヤには的が見えている。


「撃ち抜けっ! 『ヘカトンケイル』!」


 凄まじい轟音と共に、弓が射られる。

 それはもはや、弓とは言えないかもしれない。

 鉄砲の弾ですら、これだけの飛距離は出せない。

 10発もの矢が、光線のように放たれ、少しの時間が経った後、まるで爆発が起こったかのような音が鳴った。


「俺には見えねぇけど、どうだシュウヤ」

「命中はしたはずだ。けど……チッ……壊れてねぇ」

「「!!」」


 どうやら、一筋縄ではいかないようだ。

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