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606.蓮華side20

「スルト、空天の事とか話を聞きたいから、まずは……」


 無力化しよう、という言葉を続ける事が出来なかった。


「ばか、な……この、僕が……僕は、智天使……ケルビム、なんだ、ぞ……」


 ドサァっと音を立てて、ケルビムと言った彼は地に伏せた。


「えぇぇ……」


 言うよりも早く、スルトが一撃の元に斬り捨ててしまった。


「大丈夫だ蓮華。死体からでも情報は得られるからな。言葉は嘘を吐くが、体や魂は正直だからな」


 成程……って納得しかけたけど、そういう事じゃないよ!?


「何故だ? 剣を向けてきた以上敵だろう。敵に情けなど掛ける必要はないだろう」


 それはそうかもしれないけど……うーん、私が何を言ってもスルトには通じ無そうだし、諦めよう。


「それで、どうやるの?」

「簡単だ」


 そう言ってスルトが手をケルビムに向けると、ケルビムが起き上がる。


「!!」

「大丈夫だ」


 ソウルに手を掛けた所で、スルトが前に出た。


「今からする質問にだけ答えろ。お前はここで何をしていた?」

『僕は、この場所で、謹慎を、言いつけられて、いました』


 驚いた。死体から声がしたというよりも、周りから音が声として聞こえてくる感じだ。


「ふむ。では後ろの剣を何故守っていた? あの剣は元からここにあった物ではないだろう」

『あの剣、は……僕が気付いた時には、あったもの、です……普段眠っていたから……』


 という事は、彼は空天を持ち運んだ奴とは関係ないって事か。

 どうして空天をここへ運んだのか、分からないままになってしまったな。


「そうか。最後の質問だ。お前は最初、やらなければ痛いと言っていたな。それはどういう事だ?」

『はい。僕の役目、は……この奥にある宝物庫を、守る事、です。なので、侵入者を消さない、と……この首輪から、激痛が走る仕組みに、なって、ます』

「……ふむ。しかし、許可された者も居たはずだ。蓮華の持つカードを持った物は通行を許可された者のはずだろう」

『え……でも、感知、できなかった、です』


 あ……それってもしかして。


「えっと、ごめん。もう使う事ないかなって、入口を通った後『アイテムポーチ』の中に仕舞っちゃったんだよね。これ、別世界になるから、それで分からなかったのかも」

「『……』」

「ええと……そだ。生き返らせてあげるから、それで許してくれないかな」

『本当、ですか!?』

「うん。知らなかったとはいえ、こちらの不手際でもあるし、君は職務っていうか、それを果たそうとしたわけだしね」

『ありがとう、ございます! ありがとう、ございますっ!』


 というわけで、『リザレクション』を掛ける。


「お、おおっ! 生きてる、僕生きてるっ! ありがとう、ありがとうっ!」

「どう致しましてと言うのも変だけど、どう致しまして。それで、その剣持って行って良いかな?」

「どうぞ! そんな事で良ければいくらでも!」

「うん、ありがとう」


 物凄く従順な、後ろに尻尾をブンブン振ってるかのような彼に苦笑しつつ、空天を回収する。


「えっと、ケルビムって言ったっけ?」

「はいっ! 第二階位智天使ケルビムと申しますっ!」


 第二階位って事は、かなり上位の天使なんじゃなかろうか。

 それを一撃って、どれだけ強いんだろうかスルトは。


「自己紹介が遅れたね、私は蓮華。で、こっちがスルト」

「蓮華様に、スル、ト!?」


 何故か私を様づけのケルビムは、スルトを見て驚いている。


「そうか、君が……。うん、僕が何かを言うのは筋が通らないし、きっとウルズ様も何も言わなかったんだろう? なら、やっぱり僕から何かを言うつもりは無いよスルト」

「フン……」


 腕を組み、そっぽを向くスルト。

 詳しくは分からないけど、過去に何かあったのは明白で……でも、それを聞くべき時ではない気がするので、今はその事は置いておく。


「えっと、それでこの場所に剣があった事には気付かなかったんだよね?」

「はい、申し訳ないです。同族以外の気配なら一瞬で目が覚めるのですけど……」


 という事は、やはり空天を盗んだのは天使という事になる。

 そうでなければ、ケルビムに気付かれずに剣をここに置くなんて事はできないだろう。

 そもそも、何故盗んだ剣をここに置いたのかが分からないけど。


「うーん。理由は不明だけど、とりあえず空天を回収できたから、それでいっか。後は母さんに渡せば一つの目的はおしまいだし」

「次は空の大精霊に会いにいくのだったな」

「うん。スルトはどうする?」

「ついていくと言いたい所だが、大精霊との契約に部外者は邪魔になる。ユグドラシル領の近くで待機しておくとしよう」

「それなら、ウルズと一緒に待ってる方が良くない?」

「……いや、あまり天上界に居るのは好ましくないからな」

「そっか、了解。それじゃ一旦家に帰って、母さんに渡してから私はウルズの下へ行くね」

「ああ」


 話はまとまったので、この場を後にしようとする。


「あの、蓮華様」

「ん?」

「僕はまだ、ここから出る事は出来ません。過去に犯した罪を償う為……今しばらくはここで刑を全うしなければなりません。ですが、それが終わったら……僕の命を救ってくれたお礼を、必ず」

「あはは、気にしなくて良いよ。そもそも、私がちゃんとしてたら、殺される事もなかったんだし。それじゃ、またねケルビム」

「はい、また蓮華様」


 一礼するケルビムに手を振ってから、上に飛翔する。

 結構な距離を落ちたから、かなりのショートカットになったんだと思う。

 空天を盗んだ相手は、何故ここに置いたのだろう?

 他の魔剣を暴走させたり、目的が見えない。

 まったく、のんびりとスローライフを送りたいのに、どうしてこう問題が次から次へと起こるんだろう。


 アーネストも今頃何か問題に直面してそうな気がして、こっそり苦笑してしまう私だった。

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