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604.アーネストside24

「うん、それなら『ジハード』は降伏するよ」

「俺が言うのもなんだけどよ、判断が早いな?」

「あっはは。うちのクラウドを倒す化け物相手に戦うとかナイナイ」


 皆にクラウドと会った事を話してから、『ジハード』に降伏勧告をしに行って良いか竹内さんに話したら、一発OKが出た。


『戦わずに済むのなら、それに越したことは無いからね。交渉はアーネスト君に任せて良いかい? アーネスト君は俺と同等の権限があると思ってくれて良いからね』


 との事だ。

 なので、シュウヤとミライを連れて街に行き、クラウドに案内されて『ジハード』の責任者こと、ティファーナという子と話をしている。

 幼い見た目だが、これは見た目で判断しちゃいけねぇ系の人間だ。

 強さは多分そこまでじゃないだろう。強者特有の感じは全くない。

 けれど、眼力が凄い。まるで母さんや兄貴のような、心を覗くような深い眼をしている。


「そうか。ま、クラウドにも伝えたけどよ、悪いようにはしねぇよ」

「そうなのかい?」

「一番上がペネトレイトファングになりはするけどよ、住民達にとっちゃそんだけだ。普段と変わらねぇ毎日を暮らせると思ってくれて良いぜ」

「成程……。それは、素敵だね」


 彼女は後ろに控えている防衛部隊の部隊長、佐藤と言ったかな? 彼に小さく頷いたように見える。

 その彼がほんの少し表情が安堵したように見えたが……何か暗号みたいな伝言でもしてるんだろうか。


「それじゃ、私は町娘に戻っても良いのかな?」

「あー、残念だがそれは今は出来ねぇな。貴女が望むなら、引継ぎをして代わりの人に任せる形は出来ると思うけどよ」

「聞いたかミライ、あのアーネストが貴女って!」

「もうお兄ちゃん、シャラップ! アーネストだって公式な場では弁えてるに決まってるでしょ」

「「……」」


 横の二人がやかましい。

 視線を戻すと彼女も苦笑していた。


「良ければ、普段通りに話してもらって構わないよ。と、従うこちらが言う事ではないかな?」

「ああいや、俺からしたら仲間になってもらう、対等な関係のつもりだぜ。けどまぁ、お言葉に甘えさせてもらうな? こいつがうるせぇから」

「いやだってよ、アーネストが丁寧な話し方してたら違和感バリバリでさ」

「やかましいわ」

「あははっ……! 成程、ペネトレイトファングが強いのも納得だよ。君達は真に仲間なんだね」


 何か変な納得の仕方をされたが、あえて訂正する事でもないし良いか。


「そんで話を戻すけど、ペネトレイトファングの傘下には入ってもらうけど、あくまでそんだけだ。皆は今まで通り暮らしてもらって構わねぇ」

「つまり、私達はペネトレイトファングの庇護下に置かれるって事だね。それはとても魅力的な話だ。けれど、それだとうちにメリットしかない。だって、何もしないのに守って貰える。だから、何かあるんだよね? 私達に望むものが」

「別にねぇよ?」

「……え?」

「だから、別にねぇって。言ったろ、上が変わるだけだって。そりゃ会議とかありゃ参加する事になるだろうけど、そんくらいだと思うぜ? あ、最終的に物流とかも各街の責任者で集まって相談とかすんじゃないか? 知らんけど」

「「「……」」」 


 シュウヤとミライ以外がポカーンとした顔になっている。

 でも、事実なんだよなぁ。

 別に敗戦国とか属国とかそういう扱いになるわけじゃないし。


「うわ、本気で言ってるよこの人。嘘、本当なのこれ」

「ティファーナ」

「あ、ゴメンクラウド、ありがと。えっと、アーネスト殿」

「アーネストで良いぜ。そん変わり俺もティファーナって呼んで良いか?」

「それは勿論。ではアーネスト。グループの降伏、受け入れます。どうか、宜しくお願いします」


 そう言って頭を下げるティファーナ。後ろに居るクラウド達もそれに倣って頭を下げた。


「分かった。これからよろしくな。モニターはあるなら、回線を繋げて竹内さん達と話せるように設定しねぇとだな。ミライ、手伝ってくれるか」

「了解ー。そこでお兄ちゃんをチョイスしないのがアーネストの良い所」

「シュウヤは手先は器用なんだけどな。機械は絶望的にダメだろ」

「ぐっ……否定できねぇけど。……ならその間暇だな。クラウドさんっつったっけ? アーネストとやり合ったんだよな? 俺とも軽くやらないか?」

「……良いだろう。ティファーナ、アーネストの傍に居てくれ」

「はーい。というか私一応責任者だから、ペネトレイトファングの重鎮を残してどこかいけないよー!」


 どうやらティファーナとクラウドの関係は恋仲未満友人以上といった所だろうか?

 俺と蓮華のように、家族のような関係かもしんねぇけど。


「というか私も得意なので、アーネストにミライちゃん? 私も混ぜてー!」


 小学生くらいの子が二人、横で俺の操作を見ているわけだが、休みの日の父親の気分だなこれ。

 モニターに魔道具を取り付けていき、回線の設定をミライに任せる。

 これでペネトレイトファングの支部長達とモニター越しに会話ができるようになるはずだ。


「うし、試してみるか。ポチっとな」

「アーネスト、それ絶対言うよね」


 ミライに若干呆れられてしまった。

 蓮華だって言うのに。


『アーネスト君、いきなり回線が一つ追加されたんだが……『ジハード』からかな?』

「ああ、いきなりですまねぇ竹内さん。話し合いは上手くいったからさ、直接話してもらおうと思ってさ」

『成程。ではそちらが?』

「はじめまして。元『ジハード』の総代、ティファーナ=ルクセンハートと申します」

『俺はサザンアイランド北東支部、支部長の竹内 博光だ。後四人支部長が居るんだが、後で紹介しよう。まずはティファーナさん、降伏勧告の受け入れを感謝します』

「いえ、こちらにはメリットしかない提案でした。また、アーネストの人柄を見て、信じられると判断しました」

『成程。俺もアーネストの事は信頼しているので、そう言って貰えると嬉しい。さて、色々な話をしたい所なのだが、これから『ジハード』の両隣を攻め入る前でね。それが済み次第、改めて話をする事にしよう』

「『マルメット』と『サイタン』も……という事は、全グループを!?」

『そういう事だね。アーネスト君、どうする? 君達はもう最良の働きをしてくれている。なので、終わるまで……』

「どっちが手助け必要そうだ?」

『……ふふ、君はそういう男だったね。助かるよ、アーネスト君』


 それからクラウドと模擬戦をしているシュウヤを呼びに行き、俺達も両隣のグループへ攻め入る事にした。

 協力関係になった証明としてクラウドを派遣するとティファーナが言ってくれたので、ありがたく受け入れる事にした。

 俺とクラウドは『ジハード』の右側のグループ『マルメット』へ、シュウヤとミライには左側のグループ『サイタン』へと行って貰う事になった。


「それじゃシュウヤ、ミライ、頼んだぜ」

「おお、任せろアーネスト」

「うん! アーネストは心配いらないだろうけど、頑張りすぎないようにね!」

「どんな応援の仕方だよ。そんじゃクラウド、行くか!」

「ああ。佐藤、俺が居ない間ティファーナを頼む」

「ええ、勿論ですよ」


 さて、サザンアイランド統一も目の前だ。

 『マルメット』は成瀬川の爺さんが指揮を取ってる場所だったな。

 あの爺さんなら俺達が行くまでもなく制圧完了してそうな気もするし、急がねぇとな!

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