603.アーネストside23
「「おおおおぉぉぉっ!!」」
俺の双剣による斬撃をことごとく避け、大剣による一撃を狙ってくる。
こいつはマジで強い!
「うおっと! やるなクラウド!」
「お前こそな、アーネストッ!」
水平に薙ぎ払うように振るわれた斬撃を避け、隙ありと懐に潜り込む。
「おぉぉっ!」
「うぉっ!?」
そこへ、体を回転させながら大剣を再度こちらへと目掛けて振るってきたので、避ける為に後ろへ距離を取らされる。
「そこだっ!」
流れるように体をしならせて、今度は垂直に大剣を地面へと叩きつける。
その衝撃で地面が割れ、体勢を崩された。
「ちぃっ!」
「貰ったぞ、アーネストッ!」
その隙を見逃すこいつじゃない。
大剣に白い光が集まる。
「喰らえっ!『ブレイブソード』!」
「させねぇっ!『空破裂空斬』!」
クラウドの放つ技を、こちらも技を使って相殺する。
ぶつかり合う衝撃で互いに後方へと弾かれた。
「ととっ。ふぅ、マジでやるなクラウド」
「……俺の台詞だ。ここまでの強者とはな。ますます仕留めなければならないと確信した。『ジハード』の安寧の為……敵は殺す!」
クラウドの全身が光り輝く。
どうやら大技を使うようだな。
「成程な。お前も守りたいものの為に戦ってんだな。なら、ひとまずの決着をつけさせてもらうか」
俺もネセルの力を解放する。
というか、起こしただけだけどな。
"もぉ……久しぶりに起こされたけど、今度は何なの。また蓮華と戦うの?"
ちげぇよ。一体どこから起きてなかったんだお前は。
"あー、目の前の男? 中々強いみたいね"
流石にネセルの目は節穴じゃないな。寝起きとはいえ、すぐに察してくれたか。
「行くぞ、アーネストッ!」
クラウドは何もない空間を斬った。
その後、俺の体が斜めに裂ける。
「ガッ!?」
「『空間斬撃』……流石のお前も、これは避けられなかったな」
「ガハッ……おおいてぇ……これは中々にやべー一撃だな」
「何……!? 心臓を直撃したはずだぞ、何故耐えられる!?」
確かに、肩から腰にかけて、斜めに斬られている。
丁度クラウドが斬ったのと同じ間だろう。
「この世界には回復魔法ってのが無いんだっけか」
「!!」
そう、クラウドの能力については資料で見て知っていた。
だからどんなものなのか判断する為に、あえて避けずに受けた。
オーラを防御に割いたのでダメージは最小限に、受けると分かっていれば回復魔法も即座に発動できるってな。
「ふぅ、成程な。『空間斬撃』はどうやら、一定の距離を斬る事が出来るみてぇだな。つまり、大きく離れても近づいても外れちまうわけだ」
「!!」
「だからここぞという時にしか使えないんだな。でなけりゃ、それを乱発してりゃお前は無敵にちけぇもんな」
「一撃で、たった一撃でそこまで見抜くか。恐ろしい男だな、アーネスト」
クラウドは大剣を油断なく構え、こちらを見据える。
俺の傷は癒えた。ネセルを再度構える。
「さて、今度は俺の技を見せてやるよクラウド。これは避けられねぇぜっ!」
空高く飛翔する。クラウドは俺の動きを追い、大剣を上段に構えた。
「行くぜぇっ!『鳳凰天空牙』!」
「おおぉぉっ!」
空からの突撃に、クラウドは大剣を振る事で防御する。
攻撃は最大の防御ってこういう事じゃねぇけど!
「ぐぅぅぅっ!?」
俺の突撃を受けて、ジリジリと後ろへと下がっている。
甘いぜクラウド、これは魔術も合わせた複合技なんだぜ?
「受けきれるかよ!? 連携技『緋凰絶炎翔』!!」
「っ!? がぁぁっ……!!」
空から地面へと突撃した後、地面を燃やすように突進しながら切り払う。
クラウドはそれを防ぎきれず、大剣を手から離し、吹き飛んだ。
「ぐ、ぅぅっ……」
それでも戦意を喪失せずに、よろよろと立ち上がる。
「まだ、だ……俺はまだ、負けてはいない……!」
こいつは生半可な気持ちで言ってるわけじゃなかった。
『ジハード』の為に、命を賭けている。
惜しいな……そう思う。こういう奴は味方に欲しい。
「クラウド、お前は『ジハード』を守る為に戦ってんだよな?」
「……そうだ」
「ならさ、悪いようにはしねぇ。俺と『ジハード』の責任者と、話をさせてくれねぇか?」
「何……?」
「俺はペネトレイトファング特務大佐、アーネストだ。誤解があるようだから言っておくけど、俺達は平和の為に戦ってる」
「ペネトレイトファング……! 成程、奴らではなかったか……。……俺をひとまず『ジハード』に帰らせてもらえるか? 話をしたい」
「ああ、構わねぇぜ。俺も仲間に話す時間が欲しいしよ」
「……良いのか? 俺が言うのもなんだが、仲間と反抗する為に戻るかもしれんぞ」
「そうなったら、俺の見る目が無かったと思うさ」
「……。……感謝するアーネスト。この先にある街に、後で来てくれ。それまでに話をつけておこう」
「分かった、また後でなクラウド」
「ああ」
そうして、クラウドは街へと帰って行った。
さて、俺も予想外の事になっちまったから、シュウヤにミライ、それに竹内さんにも報告しとかねぇとな。