599.アーネストside20
「隊長! ここももう持ちません!」
「くっ……なんなんだあの武器は!? いつのまにあんな武器を大量生産していたというのだっ!」
「ぐぁぁぁぁっ!」
「「!?」」
「よう、ここが指令室みたいだな。降参するなら、悪いようにはしねぇぜ?」
「……分かった、投降する。部下達に手荒な真似をしないで頂けると……」
「安心しな。悪いようにはしねぇって言ったろ? 女子供に襲い掛かるような奴がいたら、それは味方でも敵以上に容赦しねぇよ。約束する」
「……感謝する。それと、一つお聞きしたい」
「なんだ?」
「貴方達が使っていた武器は、なんなのだ? 我々はあんな武器を知らない。銃だという事は分かる。だが、放たれるのは弾丸ではなく、レーザーだった。それも、まるで感電したかのように動けなくなる。殺傷能力は限りなく低く、抵抗能力のみを奪うかのようなあの武器は……」
「あー……まぁ、アンタ達にも使ってもらうからそん時にな?」
「え?」
きょとんとするこの人をそのままに、魔道具を起動し竹内さんに報告する。
「あー、テステス。聞こえてるか竹内さん」
『ああ、大丈夫。聞こえているよアーネスト君。君の事だから、もう制圧してしまったのかな?』
「おう、そゆこと。俺はそのまま先行するから、船に加えてってくれ。あと、投降した奴らに危害を加える奴がいたら、ぶっ飛ばしてくれな」
『はは、了解したよ。それと安心して良い、余程相手の態度に問題があった場合を除き、こちらが捕虜に対して危害を加えることは無いよ』
「ま、竹内さんならそこら辺はちゃんとしてるだろうと思ってたけど、一応な。そうそう、シュウヤとミライの方はどうなってる?」
まぁ心配はしてないけど、気にはなるから聞いてみた。
結果は予想通りだったけど。
『ああ、素晴らしい戦果だよ。すでに九つのグループがこちらに投降を申し出てきているらしい。特にシュウヤ君の活躍が目覚ましい。一騎当千とは彼のような者の事を言うのだろうね。その彼が、アーネスト君に比べたら児戯のようなものだと言うのだから、こちらとしては言葉を無くすよ』
あんの野郎、目立ちたくないからって俺に擦り付けようとしてんじゃねぇ。
『勿論、部隊全員を強化してしまうミライさんも、筆舌に尽くし難い凄さだけれどね。まったく、アーネスト君が仲間を揃えてからと言っていた意味がようやく理解できたよ。彼らが居るのと居ないのとでは、差が大きすぎる』
仲間を褒められて嬉しくないはずがないので、素直に嬉しい。
が、そのまま聞いているのもむず痒いので、話を進めよう。
「ははっ。そんじゃま、こっちもスピード上げていくかね。後続をあんま気にしてねぇんだけど、大丈夫そうかな?」
『大丈夫、とは言えないが……アーネスト君のスピードについていくのは、多分無理だろうからね。けれど、アーネスト君が敵に押されている姿が想像出来なくてね。任せて良いのだろう?』
「おう、任せな。そんじゃ、次に先行していくから、後始末任せるぜ!」
『任されよう。アーネスト君、頼んだよ』
「おお!」
竹内さんとの通信が終わったあたりで、後続の人達が集まって来たようだ。
「アーネスト特務大佐!」
「おう、追いついてきたか。捕虜の回収と、この人達がこのグループの指揮者みてぇだから、丁重に竹内さんのとこへ案内してやってくれ」
「畏まりました! おい!」
「「ハッ!」」
俺の元に話しかけにきたこの人は、部下に目配せをして捕虜達を連れて行かせた。
指揮官であった人は俺に目を合わせたので、俺が頷くと素直に後について行った。
「アーネスト特務大佐は次の場所へ向かわれるのですか?」
「そうだな。そういえばアンタは割とついてこれてたな、やるじゃん」
「ありがとう存じます!」
ビシッと敬礼するので、軍人っぽい。
いや軍人なのか。
元の世界基準なら、俺じゃ住む世界が違う人だったろうなと思う。
「えっと……」
「宮川 英二と申します!」
俺が呼び名に困っていると、すかさず教えてくれた。
「ありがとう。宮川さんは……」
「宮川と! 上司であらせられるアーネスト様は、敬称をつけるべきではありません故!」
あー、軍隊って階級に厳しいもんなぁ。そこら辺は貴族も一緒だっけ。
郷に入っては郷に従えって言うしな。
「分かった。そんじゃこの作戦中はそう呼ばせて貰うな。年下に偉そうに命令されんの、腹立つかもしれないけど、勘弁な」
そう苦笑しながら言うと、宮川さんは頭を振って否定した。
「とんでもありません! アーネスト様はあの成瀬川様からの信頼も厚く、我々のエースである名倉様からも尊敬されている御方。そんな御方と共に戦えるなど、光栄の至りです!」
なんかとんでもなく目をキラキラされてそう言われるのは、くすぐったいな。
この人から見る俺は後光でも射してんだろうか。
「そ、そうか。そんじゃ次のグループを制圧しに行くけど、ここに事後処理の為に部隊を少し置いて、残りは俺の後をついてきてくれ」
「承知致しました!」
俺は遊撃隊なので、いや隊と言っても俺一人なわけだが。
他の部隊に面倒毎は全て任せてしまっている。
が、適材適所と割り切って、俺は制圧に集中させて貰う。
「ほいよっ!」
「ぐはぁっ!? あれ? 斬られたのに痛くない……!?」
「おう。でも動けねぇだろ?」
「!!」
ヒストリーロードももう少しで半分まで進もうかという所まで来た。
反対側ではシュウヤ達が変わらないスピードで進んできているそうだ。
俺はといえば、やる事は変わらない。
単身でグループの頭目指して突っ込む。
その際に邪魔する奴は、俺の使う武器、ミライから渡された超電磁ブレードで斬って麻痺させている。
ネセルではなくこれを使っている理由は、周りの皆に合わせる為。
ミライが創り出した武器は、全て電磁砲なのだ。
当たれば痺れて動けなくなる。
ただそれだけなのだが、動けなくなるというのは致命的だ。
絶縁系の装備をしていたら防げてしまうのだが、予めそんな知識が無ければ防ぎようがない。
実力者も中には居たのかもしれないが、とりあえず俺の相手になるような奴はいなかった。
そんな調子で押し進み、サザンアイランド北側のグループは全てペネトレイトファングの傘下につく事となった。