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595.蓮華side16

 コトン、という音と共に、ワイングラスが机の上に置かれた。

 オールブルーの瞳が、全身を漆黒のローブで包んだ女性を射抜く。


「それで。何故蓮華が天上界へ行くのを止めなかったんですマーガリン」

「……」


 手に持っていたフラスコをフルフルと揺らし、ポンという音共に紫色の煙が生じた。


「はぁ、また失敗か。中々難しいのねぇこの調合」

「聞いていますかマーガリン」


 座椅子に腰を下ろしているロキは、不機嫌を隠そうともせずに足を組み替えながら、マーガリンを再度睨む。


「そう怒らないでってば。私だってちゃんと考えがあるんだから」

「その考えを聞いているのですよ。ゼウスは危険な男です。その実力もさる事ながら、あの男の別名を知っているでしょう。神々においてすら、『チャラ男』の名を有する数少ない男なのですよ……! あんな男の目に蓮華が映るなど、百害あって一利なし……!」

「ええ、それは私も同じ気持ちよ」


 そう熱く語るロキに、ホント変わったわねロキ……と心の中で突っ込みながら、同意を示すマーガリン。


「ならば何故……!」

「レンちゃんだって、狙われているのは知ってるはず。だけど、それでも行くと言ったのだから、私じゃ止められないっていうのが一つ。それは、レンちゃんが……アーちゃんとレンちゃんがこの世界に来て、私達を救ってくれた時に決めた事。でしょ?」

「それは……」


 マーガリンとロキは、自分達の都合で蓮二を召喚した事を、後悔はしていないが、罪悪感を感じていた。

 蓮華にアーネストは本心から気にしていないと言っているが、それでもである。

 なので、二人が決めた事には極力反対をしない、必要ならば陰ながら手を貸すと二人は決めたのだ。


「ならば、考えの方はどうなのです?」

「うん、それはね。ゼウスを一度見て、知っておいて欲しいと思ったのが一つ。論より証拠というか、ゼウスと一度会えば、すぐに色々と分かるでしょうから」

「成程……」

「そしてあと一つ。ゼウスはあれでも天上界最強の存在だからね。モルガンにこそ返り討ちにあったけれど、それでもその実力の高さは私やロキとも遜色がない」

「蓮華の実力を上げる為の踏み台にと考えたわけですか」

「ま、そんな所ね。勿論、今のままじゃゼウスの方が上だけど……あのスルトが一緒だったからね」

「!! ふむ……面白い事になるかもしれませんね。マーガリン、私は少し外しますよ。あれならアリスティアとアテナをあの世界から放り出しておいてください」

「あはは、了解。貴方にこんな言葉は不要だろうけど、気を付けてね」

「フ……誰に物を言っているのですか」


 微笑みながら姿を消したロキを見て、マーガリンは苦笑する。

 私がロキに気を付けてなんて言う日が来るなんて、と……過去を思い出すのだった。



「はぁぁぁっ!!」

「くぅっ……! 蓮華! ユグドラシルの力とは別の、異質な力を感じるわねぇ、強いじゃないっ……!」


 ソウルを振るいながら、斬撃を繰り出していく。

 その全てを防ぐ事は出来ず、アプロディーテは傷を重ねていく。

 私も一部の攻撃は防ぐ事が出来ずにダメージを負うが、ユグドラシルの特性で徐々に癒える為問題にならない。


「アタシの魔法は無効化ないしダメージにならず、攻撃が通っても自己修復……まったく、嫌になるわねぇ」

「私は、負けないよアプロディーテ」


 ソウルをブンッと振るい血を落とす。

 ソウルから残念そうな声が聞こえたけど気にしない。

 死んだ者の血しか取り込めないんだから、気にしなくて良いでしょ。


「双方退けいっ!」

「「!!」」


 そんな折、大きな声がこの場に響いた。

 空を見上げると、凄まじい威圧感を放つ存在がそこに居た。

 全身黄金色の鎧を着こんだ、フルアーマー状態。

 百式かな? ギルガメッシュかな? そんな第一印象の存在がそこに。


「アプロディーテ、(オレ)は貴様にユグドラシルの元へ行く指示は出していないはずだが?」

「……はい、申し訳ありませんマイロードゼウス様」

「フン、お前の献身を(おもんばか)り、此度は不問に処す」

「ハッ……有難き幸せ」


 そう言い、アプロディーテはゼウスの元へと行き、後ろに控えた。

 こいつが、ゼウス。

 私を、ユグドラシルを狙う大本命。

 私がゼウスを睨みつけると、ゼウスは満面の笑みになった。


「おお! 我が愛しのユグドラシルよ! ようやく、ようやく我の想いに答える気になってくれたのだな!」

「はい?」

「よろしい、ならば祝言だ! この天界を上げて祝おうではないかっ!」

「いや、ちょっと待って。さっきのはい? は、はいではないよ! 何言ってんのこいつ、の意味だよ!」

「ハッハッハッ! 照れなくても良いだろう愛い奴め!」


 ダメだこいつ、早く何とかしないと。

 というか、まず第一に伝えないといけないよね。


「ええと……勘違いしてるようだけど、私はユグドラシルではないよ」

「何を言う! 体はユグドラシルなのだろう?」

「それは、そうだけど」

「ならば問題ないっ!」

「……」


 こいつ、最低だな。

 要は、好きなのはユグドラシルの見た目で、中身ではないって事か。

 吐き気がしてきた。


「問題大ありだよ。私はお前が嫌いだ」

「ハハハ! ユグドラシルも我にそう言っていた! ますます欲しくなったぞ!」


 ユグドラシル……美人もこういう時、損だね……。

 こんな変な奴に目をつけられるんだから。


「では腕づくといこうか。ユグドラシルよ、我の物となるが良いっ!」

「!!」


 ゼウスが腕を天に上げたの見て、私もソウルを構える。

 しかしその瞬間、


「待ちなさいっ! これはどういうつもりなのゼウス! この領域は私の支配域よ! 盟約を破るつもり!?」

「……ゼウス」


 ウルズとスルトが、私の横に来てくれた。

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