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594.蓮華side15

「ダメですゼウス。まだユグドラシルと確定したわけではありません」

(オレ)を舐めるなよヘラ。流石に天界にまで入ってくれば、気付くというもの!」

「……(アテナ、どうして止めなかったのですか。地上や魔界ならばまだしも、天上界、ましてや天界にまで入ってくれば見つからないなど不可能です)」

「今行くぞ愛しのユグドラシルよ! 今度こそお前は我の物となるのだ! フハハハハッ!」


 ヘラの引き留めも空しく、ゼウスは蓮華の元へと歩みを進めるのだった。



-その頃のアテナ-



「うぉぉっ!? こいつ、滅茶苦茶強いな……! だが、戦女神筆頭であるこの私、アテナに勝てると思うなよ……!」

「アテナ! 私と協力技でいっくよー!」

「了解だアリスティア! 行くぞ!」

「「メテオインパクトー!」」


 蓮華が天上界に向かっているなどつゆ知らず、アテナとアリスティアの二人はユグドラシルオンラインの世界で遊んでいた。



 ウルズに案内されて着いた場所は、魔法陣を内包した小さな家だった。

 家と言うには語弊があるかもしれない。

 床に巨大な魔法陣が描かれていて、四方に巨大な柱があって、天上にある屋根のような物を支えている。

 ちょっと大きい小屋というか納屋というか、そっちのが合ってるかな?


「このゲートを使って、宮殿へ転送するの。天界ではポータルやワープといった転送系の魔法は無効化されるから注意してね」

「無効化されるのに、このゲートは有効なの?」

「このゲートに使われている力は、魔法とは違う力なの。飛行や速度をアップさせる魔法は普通に使えるのだけど、天界と地上では周囲に存在する力が違うから、そこも勝手が違うと感じるでしょうね」


 そういえば、あまり気にしなかったけれど……この天上界、ここは天界か。天界に来てから、ずっと身近に感じていたマナを感じない。

 世界樹から放出されているマナは、地上と魔界にのみ存在しているんだったね。

 あと、天界と天上界の人達は、地上では生活出来ないと母さんから習った。

 魚が海以外で生きられないように、天上界の住人達もまた、天上界と天界以外では生きられないのだとか。


 地上と魔界に存在するある成分が、天上界と天界の人達には猛毒らしい。

 だからウルズはイヴちゃんの体を使ったし、バルビエルはタカヒロさんの体を使った。

 アリス姉さんが地上から魔界に行けなかったのと似たような感じなんだろう。


「さぁ、中央へ。二人が転移したら、私も後を追うわ」

「了解」


 スルトからの返事は無かったけれど、私についてきているのは分かった。

 魔法陣の中央へ移動すると、魔法陣が光ったと思ったら、そこから赤い光が乱入してきた。


「!?」

「蓮華、外に出ろっ!」


 スルトからの警告も間に合わず、私は転送されたのが分かった。

 何せ、先程まで居た場所とは違う。

 それも、ウルズが招待しようとしてくれた宮殿ではないのが、分かる。

 なんせ、赤い。見渡す限り全てが赤い。

 まるで血で濡れたかのように、周り全てが真っ赤な大地だった。



「ウルズ、図ったか」


 スルトはどこからともなく剣を出現させ、ウルズを睨む。


「違うわ。これは私の意図した事じゃない。待っていて、魔力の波動を辿って行先を把握するわ」


 ウルズは魔法陣へと手を翳し、自身の魔力を流し込む。


「っ! この力、オリンポス十二神が動いたというの……!」

「誰だ」

「え?」

「オリンポス十二神の誰の仕業だと聞いている」

「アプロディーテ」

「チッ……よりにもよってあの変態か。場所は分かるか?」

「ええ。追いましょうスルト」



 周りを見渡しても、私をここへ飛ばした人が居るか分からない。

 魔力探知をしても、掻き消されてしまう。

 いつもの精霊達の加護も感じられないし、いやこれは天上界に来た時からか。

 つまり、私の力は半減してるって事だ。


「驚いた、髪の色は違うけれど……本当にユグドラシルなのねぇ」

「!!」

「お久しぶりねぇユグドラシル。もっとも、貴女はアタシとは会いたくなかったでしょうけどねぇ」

「……」


 勿論だけど、私からしたら初対面の人だ。

 情報を相手に与えない為に、ユグドラシルのフリをした方が良いだろうか?

 そんな事を考えていたら、


「あら、姿はユグドラシルだけど……違うのね。貴女、アタシを見ても嫌悪感が伝わってこない。アタシの事、気持ち悪くないのねぇ」


 え? いや、確かに見た目男性だしオネェみたいな話し方だけど、別にそんな人元の世界でも居たしなぁ。

 特段、気にする事でもないような。


「?」

「あらやだ、アタシユグドラシルは嫌いだけど、今の貴女は好きかも。ねぇ、名前を聞いても? アタシの名前はアプロディーテ。ゼウス様率いるオリンポス十二神が一柱、鮮血のアプロディーテ。以後お見知りおきをねぇ」


 そう言って片目を瞑ってウインクしてくる。

 名乗られたからには、私も名乗るのが筋ってものだね。


「私は蓮華。蓮華=フォン=ユグドラシルだよ」

「そう、やっぱりユグドラシルではあるのねぇ。残念だわぁ……ここで、消さなきゃいけない事が」

「!!」


 瞬間、アプロディーテから凄まじい魔力が迸る。

 その真っ赤な魔力は、この辺りを染めている色とまったく同じ。


「愛するゼウス様の為、貴女をゼウス様と合わせるわけにはいかないの。だから、ここで、死んでねぇ」


 アプロディーテの持つ武器は鎖鎌だろうか。

 戦いにくい武器だ。

 私もソウルを出現させ、構える。


「ふふ、武器はユグドラシルとは違うのねぇ。それなら、アタシの敵じゃないわぁ!」

「っ!」


 アプロディーテは鎖鎌を投げ、更に自身も同時に突っ込んできた。

 私はその鎌をソウルで払うが、アプロディーテはそれさえも読んで鎖を自由自在に操り、私の剣閃を防ぐ。


「そぉ、れぇっ!」

「させるかぁっ!」

「っ!?」


 鎖鎌の波状攻撃を、ソウルを地面に突き刺し衝撃波を上に飛ばす。

 アプロディーテはそれに逆らわず後方へと飛び、体勢を崩さずに着地した。


「うふふ、やるじゃなぁい。腐ってもユグドラシルの力を引き継いでいるのねぇ、厄介だわぁ」

「……」


 ソウルをやや下げて、アプロディーテを見つめる。

 私が何故命を狙われているのか、分からない。

 ゼウスが私を、というかユグドラシルを狙っているとは聞いた。

 だけど、アプロディーテがユグドラシルを狙うのはゼウスとは違う理由だ。


 愛しのゼウスと言ったから、アプロディーテがゼウスの事を好きなんだと仮定しよう。

 で、ゼウスはユグドラシルを狙っているから、引き合わせる前に私を消そうって事か。

 うん、大体理解できた気がする。

 なんっっってはた迷惑なっ!


「ねぇアプロディーテ、勘違いしている気がするんだけどね」

「勘違い?」

「うん。私はゼウスなんて好きじゃないよ? 会った事もないのはそうだけど」

「うふふ、それは会っていないからよぉ。ゼウス様の美しさと神々しさを見れば、誰しもが一発で虜になるの。アタシがそうだったようにねぇ」


 ダメだ、これは話を聞いて貰えないやつ。

 私個人としては、命を狙われているとはいえ、アプロディーテの事を嫌いになれない。

 その恋心を応援してあげたいくらいだ。

 彼も最初に、私の事を好きかもって言うくらいには、そういう事を抜きにしたら仲良くなれそうなんだ。

 なら、私のする事は一つ。


「アプロディーテ、私も君の事嫌いじゃないよ。好きな人の為に行動をしてるだけだもんね。それが間違っていたとしても、ね。だから……私が止めるよ」

「!! ゼウス様が居なければ、惚れていたかもしれないくらい男前ねぇ。いえ女性なのは分かっているんだけどねぇ。でも、惚れたに男女は関係ないわ、貴女なら分かってくれる気がするの」

「そうだね。友情って言葉があるくらいだから」

「そう、そうねぇ。でもダメ、アタシはゼウス様を愛しているから。その一番の弊害になりそうな貴女を、生かしておくわけにはいかないの。許してねぇ、貴女はアタシの心の中で永遠に生きるのよぉ!」


 アプロディーテから、明確な殺気が向けられる。

 肌がぴりつく程の殺気は、彼の本気を表しているんだろう。

 彼は確かに強い、だけど……今の私なら、負けないっ!

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