表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

591/713

591.アーネストside18

 剛史と彩香ちゃんにシュウヤの紹介をして、その日はそのまま遊んで過ごした。

 シュウヤはほぼ寝たきり状態だったけどな。

 やはり記憶の継承は体への負担が大きいようだ。


 まぁ効果を考えれば、その程度で済んで良かったと言うべきか。

 翌日の朝、シュウヤは全快したようで、うちの道場で弓を射ってた。

 的に当たった矢に更に矢を当て、その矢に更に当てるという難易度の高い事をいとも簡単に行っていた。

 相変わらずの腕に惚れ惚れするぜ。


 それからサザンアイランドへとポータル石を使って移動し、シュウヤを竹内さんへと紹介した。

 俺が居ない間に次の戦いの準備をしていたらしく、同じ服を着た人達が集まり武器の点検等行っているようだ。


 サザンアイランドでは、シュウヤの妹であるミライが召喚される。

 その事を竹内さんに伝えると、


「ではその子が来てから、作戦開始という事で良いかい?」


 と言ってくれた。

 俺達に合わせてくれるようで申し訳ないが、俺としてはそれが助かるので、頷いておいた。

 成瀬川の爺さんにもシュウヤを紹介したら、


「ほう、お前に負けず劣らず良い面構えをしているな。異世界の連中というのは、皆お前のように強いのか? だとしたら恐ろしい世界だな」


 そう言われて苦笑するしかなかった。

 この世界の人が俺達の居た世界に来た場合、同じ事が言えるだろうしな。

 シュウヤも同じ事を考えたようで、俺と同じように苦笑していた。


「なぁアーネスト、記憶にもこの基地の事は無いんだよな。案内頼めるか?」


 そうシュウヤに言われたが、この基地について俺もそんなに詳しいわけじゃない為、基地を散策したいと竹内さんに伝えたら、忙しいだろうに名倉さんが案内を買って出てくれた。


「悪いな名倉さん」

「とんでもないです! アーネスト特務大佐の力になれるなんて、光栄であります! あ、私の事はどうぞ雪とお呼びください!」


 とても良い笑顔でそう言ってくれる。

 ありがたい事だな。


「お前、またたらしてんのか……」

「なんか言ったかシュウヤ?」

「いいや、なんでもねーよ。名倉さん、宜しく」

「はいっ!」


 シュウヤが小声で何か言ったようだが、聞き取れなかった。

 名倉さん、おっと、雪が先導してくれるので、大人しくついていく事にした。

 訓練場所、作戦会議をする場所、食事をする場所等々、中々の広さだ。

 まさかかまくらのような入口の中から、広大な軍事基地があるなんて想像ができないわ。

 空間圧縮魔法を掛けたかのような場所なんだよなこれ。 

 誰もこれを不思議に思っていないようだけどさ。

 これもこの世界では当たり前の事なんだろうけど、俺には違和感が強い。

 

 雪からの案内を受け終えてから一旦家に帰り、剛史と彩香ちゃんと合流。

 その後は一緒に蓮二の行方を追う事にしたが、進展は無し。

 いや一部あったといえばあったが、聞いた事を総合的に判断すると、俺の事だったしな。

 見た目が同じ故に、情報が俺と混ざってしまう。

 かといって認識阻害魔法を掛けると、剛史と彩香ちゃんが誰も居ない空間へ向かって話しかけている痛い奴に見えてしまうし。


 更にその翌日、いよいよミライが召喚される日になったので、のんびりと準備をする。

 シュウヤと違ってミライは時間が分かっている。

 お昼の2時って言ってたからな、時間に余裕がたっぷりとある為、朝はゆっくるする事にしたのだ。


「おいアーネスト、早く行こうぜ!」


 それを伝えているにも関わらず、早朝の段階で準備万端な男が一人。


「言っただろシュウヤ。午後だぞ、午後。昼の2時だ。今は何時だ?」

「6時だな! もう後8時間もかからねぇ!」

「まだ8時間もあるの間違いだ。俺はまだ眠いから寝るぞ」

「待ってくれよアーネスト! 俺はもう楽しみで目が冴えて仕方ねぇんだよ! 時間まで訓練でも良いから付き合ってくれよぉ」


 五月蠅い奴め、遠足前の子供か。


「分かった、分かったから。なら先に道場に行って床磨きでもしといてくれ」

「おお! さんきゅ! 了解だぜ!」


 そう言って駆けて行くシュウヤを見送り、再度布団の中へと潜り込む。

 そうして俺の意識は闇へと溶けていき、目が覚めたらシュウヤの顔が目の前にあった。


「ピッカピカになるまで磨いてきたぜ! さぁ訓練しようぜアーネスト!」

「……あいよ」


 そのまま眠ってしまった俺に怒るでもなく、爽やかな笑顔でそう言われては、もう付き合うしかないわけで。

 その後お昼になるまで、道場でシュウヤと組手をしていた。

 柔道でもなく、ボクシングでもない。

 パンチもキックもなんでもありの喧嘩のような組手だ。

 けれどこれが楽しい。最初こそ眠くてだるかったものの、体を動かしているうちにすっかり元気になってしまった。


「かー! やっぱ強いなアーネストはっ! これでも俺は喧嘩じゃ負けた事なかったんだけどよ!」

「俺は喧嘩とかした事なかったけどな」

「はは、マジかよ!」


 時間を忘れて訓練をしたおかげで、良い時間になったのでサザンアイランドへと向かう。

 それからミライが召喚される場所には、俺とシュウヤ以外は近寄らないように竹内さんに協力してもらった。

 昔のミライは人見知りだって聞いてるからな……できれば、シュウヤに話をしてもらいたいと思っている。

 少なくとも、記憶を継承するまでは。

 それから、時間になり魔法陣が出現した。


「あ、あれ? お兄ちゃん?」

「未来っ!」

「わきゃっ!? なんで突然抱きしめるの!?」

「未来、未来が若い!」

「私はまだ12歳なんだから若いに決まってるでしょお兄ちゃん!」


 成程、ミライはこの時まだ小学生だったのか。


「あの、お兄ちゃん。ここ、どこ? その人、だれ?」


 ミライがシュウヤの後ろに隠れ、おずおずと俺を見る。

 成程、昔は人見知りって言ってたのは、その通りのようだ。


「初めまして。俺はアーネストって言うんだ。とりあえず、そのままで良いから話を聞いてくれるかい? 今は俺が、シュウヤの友達だって理解で良いから」

「お兄ちゃんの、友達……」

「安心しろ未来。こいつは俺の自慢の友達なんだ」

「お兄ちゃんがそう言うなんて、珍しいね。……分かった、お話を聞いたら良いんだよね?」

「ああ、ありがとう」


 それから、シュウヤと一緒に説明をして、経験の宝珠を使ってもらう事にした。

 流石に女の子なので、俺の布団で寝かすわけにも……と思ったが、シュウヤもミライも問題ないと言ったので、そのまま使ってもらう事にした。


「お兄ちゃんと違って、体が元の私と乖離してるから、ちょっと反動が大きいみたい……だけど、克服してみせるから、待っててねアーネスト」

「おう。ゆっくりで良いからなミライ。今の精神は大人でも、体は子供なんだからな」

「うぐぅ……流石に小学生時代に戻るとか厳しいよー」

「兄ちゃん的にはそれはそれであり!」

「黙れロリコンが」

「兄ちゃんに対してそれは無いんじゃないか未来!?」


 相変わらず姦しい兄妹だな。

 剛史と彩香ちゃんが来るまではのんびりと雑談をして過ごし、二人が来たらシュウヤの時のように紹介をした。

 流石にシュウヤの時よりも身動きが取れないようで、彩香ちゃんに世話を任せる事にした。

 彩香ちゃんが居てくれて助かったな……兄のシュウヤも居るとはいえ、精神年齢的には難しい年ごろなはずだし。


 翌日になってもミライは回復しなかった為、竹内さんに事情を説明した。

 流石に不満を言う人が出るんじゃないかと思ったが……


「ああ、大丈夫だよ。勉さんが……成瀬川さんがアーネスト君の事をべた褒めしているからね。君の都合がつかない事に対して、不満に思う者は一人もいないよ」


 そう言われたので、安心した。

 けど、あの成瀬川の爺さんにべた褒めされているというのは、なんかイメージが合わないんだけどな。


 家に帰って、蓮華から教わった軽い手料理をミライに振舞う。


「あ、アーネストの手作りっ! い、いただきますぅ!」

「お前、料理まで出来るとかっ! この万能主夫がっ! いただきます!」


 主夫じゃねぇわ。とりあえずの腕すぎて、世の奥様方に怒られるわ。

 まぁ、美味しそうに食べてもらえると嬉しいもんだけどよ。

 俺も食うとするか。……美味い、俺も中々だな。


 翌日、体も動くようになったミライが、戦闘服に着替えていた。


「お手数をおかけしました。仙道 未来、不肖の身ですけど、アーネストの為に頑張ります!」

「ああ、頼りにしてるぜミライ」

「はいっ!」


 こうして二人目の仲間を迎え入れ、サザンアイランドへと向かう。

 さて、約束通り竹内さんの夢を叶えてやらないとな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ