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582.蓮華side9

 七星剣の一振り、火天は王国・フォースに祭られているという事で、まずは王都・フォースにやってきた。

 今回アリス姉さんはお留守番。

 というか、行きがけにアテナに捕まった。


『ユグオンにログインしていないのはなんでだ? 私と差が開くぞ?』


 からの一言で、アリス姉さんは私とアテナを交互に見ながら、プルプルと震えていた。

 なので、『やっておいでアリス姉さん、こっちはすぐ済むだろうし』と言ったら、『また少ししたら蓮華さんに付き合うからね!』と言って自室へと飛んで行った。

 アリス姉さんが楽しそうでなによりです。


『蓮華、天上界の奴が少しうろついているようだからな、気を付けろ。アリスティアは天上界や神界では有名だからな、今は一緒に居ない方が見つかりにくいだろう』


 成程、アテナなりに私の事を考えてくれて言ってくれたようだ。

 誤解する所だったよ、ただゲームしたいだけだと。


『それはそれとして、アリスティアと競いたいのはあるがな』


 台無しです。

 そんなこんなで王都・フォースに『ポータル』で移動してきた。

 国王様には母さんから話が通っているようで、その場所への案内役を派遣されたんだけど。


「蓮華お姉様とまたご一緒できるなんて、嬉しいですわ!」

「ですっ!」


 うん、君達インペリアルナイト・マスターでこの国の最高指揮官ですよね。

 いや母さんから伝わってるし国の最高の待遇をしていると考えれば、そうなのかもしれないけれど。


「またよろしくね」

「「はいっ!」」


 凄く良い笑顔だ。今ではもう大人の姿でとても奇麗に成長した二人。

 縁談も物凄く来ていたらしいけど、今では国王様が自ら蹴っているから無くなったらしい、職権乱用である。

 二人は喜んでいるので問題ないのだけれど。


「「~♪」」


 この二人、抱きつき癖がついているのか、必ず両腕を取られる為……なんというか両手に花の男に刺されそうな歩き方になってしまう。

 気を抜くと照れてしまいそうになるのが困る。片方に目をやると優しい笑顔が返ってくるし、もう片方に目を逸らすと嬉しそうな笑顔が目の前に飛び込んでくるんだもの。


 まぁカレンとアニスを知らない人はこの国でいるわけないし、その二人がそうする相手も私しかいないのでゴシップ記事にすらならないけれど。

 あれ? これ認識阻害の意味ある? いや事情を知らない天上界の者達にバレなければ良いんだから、良いのか。


 なんてあれこれ考えていたら、砂漠の広がる一歩前についた。

 列車を降りて少し歩いた先にある広大な砂漠。

 ルグンドス遺跡へ行く時も、ここを通ったなぁ。


「もしかして、また車?」

「はい、そうなりますわ」

「です」

「成程……もしかしてここが砂漠なのって、火天の影響?」

「「はい」」


 それは悪影響ってレベルじゃないような!?

 しかも私がこの世界に来た時から砂漠だったし、大丈夫なのそれ!?


「その、マーガリン様から頂いた剣ですし、無下に扱う事も出来ず……国王陛下も苦心の末、都から出来るだけ遠い位置に祭ろうと決めたのですわ」

「です、です……決してマーガリン様から頂いた剣を、粗末に扱っているわけではなくて……警備の者も常駐で派遣しておりますし、万全の体制で保護しております、です……」


 二人が心苦しそうに言うので、私は渡した側と受け取った側で温度差がある事に気付いた。

 母さんはきっと、軽い気持ちであげただけだ。

 だけど受け取った側は神様からの贈り物なわけで……それはもう丁重に扱ったんだろう。


「そ、そっか。そんなに気にしなくて良いからね? むしろ、砂漠にしたのが火天のせいなら、火天がなければここは砂漠じゃなかったって事?」

「私達が生まれる前の事ですので、書物にある知識になりますが……昔は、湖もある豊かな草原だったと」


 あちゃー! それは駄目なやつー! これはもう火天は回収して、母さんに制御してもらおう。

 流石にあげたものを取り返すわけにはいかないから、影響の出る部分をね!


「そっか……気付いてあげられなくてごめんね。私から母さんに話して、火天なんとかしてもらうから」

「そ、そんな! 蓮華お姉様に謝られる事なんて、何も! 本来マーガリン様にお伝えしなければならないのは、我が国の者の務めです! それを蓮華お姉様のお手を煩わせるなんて……!」

「です、ですっ!」


 カレンとアニスはそう言ってくれるけど、私はもう決めたからね。


「大丈夫。皆がより住みやすい国になると良いね」

「蓮華お姉様……この恩は必ず、お返し致しますわ」

「です」


 二人が揃って頭を下げる。

 きっと、この砂漠について頭を痛めていた部分があったはずだ。

 すぐに影響が収まるとは考えづらいけれど、砂漠化なんて抑えれるなら抑えたいだろう。

 でも基本的に氷の大魔女とまで呼ばれて恐れられていた母さんだ、意見なんて言えなかったんだろう。

 私やアーネストに対しては氷どころか人をダメにするクッションみたいにふにゃふにゃなんだけど。


 植林については、ドライアドにでも手伝ってもらえばかなり時間の短縮になるだろうし。

 母さんの造った剣のせいで、被害を受けてた人達の為に少し大精霊の力を借りるくらい許されるよね?


「とりあえず、火天の祭壇までの運転、任せて良いんだよね?」

「「はいっ!」」


 というわけで、また車に乗ってのドライブ開始だ。


「ウノ!」

「ではドロフォーですわ蓮華お姉様」

「にゃんとー!?」

「そしてリバースです」

「これだけ手札が増えたのに出せない!?」


 車の運転はまたしても自動だったので、私達はウノをして遊んでいた。

 この姉妹、ゲームも容赦ないです。


「「「!!」」」


 そんな折、車が急停止した。

 今回は前回と違って砂嵐とか回避できるように車を改造していたらしいので、そういうのが原因ではない。

 三人で車を出ると、そこには一人の……男性だろうか、女性だろうか?

 美しい絵画から出てきたような人が立っていた。

 どうやら、車はその人が止めたようだ。


「……成程、ユグドラシル様によく似ている。いや、髪の色が違うだけで、そのままと言っても良いか」

「「「……」」」


 私達は油断なく、その人を凝視する。

 ……強い。半端なく、強いのが分かる。

 母さんや兄さんクラスの力の持ち主だ。


「まずは名乗ろう。私の名はスルト。お前の魂を消しに来た」


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