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581.蓮華side8

「えぇ!? 七星剣を造ったの母さんだったの!?」

「そだよー。昔ちょっと鍛冶にハマってた時があってねー。時間はあったし、拘って数百年くらい没頭してたかなぁ」


 ミレニアの屋敷に戻ってから、依頼の完了という事で少し報酬を貰って、家に帰ってきた。

 別に報酬なんて要らないと伝えたけれど、貰える物は貰っておけと押し切られてしまった。


 七星剣をこっそり置いていこうとしたらシャルに見つかり『マーガリン様にお見せするとよろしいですよ』と言われたので、見せた所だ。


『創造主よ! お会いしとうございました!』

「久しぶりねぇ。その様子だと元気してたみたいね」

『ご覧のとおり、我が身には傷一つ、刃こぼれすらありませぬ!』

「それがなんで腐の魔力に侵されてたのかしらねぇ」

『うぐっ……わしとしても弁明させて頂けるならば、契約者が絶えて久しく、人化すら困難なほど力を失ってですな……』


 後半はごにょごにょと言っていたので聞き取れなかったけれど、なんとなく事情を察する事が出来た。

 確かに人化出来ていたなら、あそこに刺さったままでいなかっただろうし。


「そこに付け込まれて、地下ダンジョンに放り込まれたわけね。という事は、後の七星剣も同じように利用されてるかもしれないわねぇ」

「どゆこと? 母さん」

「んー。今の地上が、マナのお陰で生活が成り立ってるのは知ってるよねレンちゃん」

「うん」


 それは当然だ。元居た世界で言えば、空気に近いものだと思っている。

 いや電気や水の方が近いだろうか。無くなってもすぐに死なないという点で。


「そのマナは世界樹ユグドラシルから発生しているわけだけど、発生した後まで保護下にあるわけじゃないのも分かるよね?」

「うん、勿論」


 魔術を使う為に様々な生物がマナを取り込んで使う。その際にユグドラシルの力でコーティングというか、保護されていたら、誰も扱えない。


「七星剣はね、龍脈のようにマナに干渉する剣なの。それぞれ火、水、土、風、光、闇、無の7つの属性剣」

「え? この世界の基礎属性って、日月火水木金土と無の8属性だよね? 光は日の派生属性、闇は月の派生属性、氷は水の派生属性って感じで」

「そうだよー?」

「ならどうして木じゃなくて風で、日月じゃなく光闇なの?」


 別におかしな事ではないのだけど、ちょっと気になったので聞いてみる事にした。

 母さんは私の質問に、嫌な顔をすることもなく、微笑みながら答えてくれる。


「それはね、手伝ってくれやすそうな大精霊だから」

「え」

「ほら、属性と頼みやすさで想像してみて? レンちゃんならすぐに理解できるから」


 と言われたので、想像してみる。

 まず火、イフリート。

 ……うん、めっちゃ嬉々として協力しそう。炎のサラも言えば手伝ってくれそうだけど、イフリートほどノリノリではないだろう。

 次に水、ディーネ。

 ……うん、めっちゃ以下略。氷のセルシウスは絶対不機嫌になる、間違いない。私が言うと手伝ってくれそうだけれど。

 次に風、シルフ。以下略。木のドライアドもサラと同じで言えば手伝ってくれるだろうけど、シルフほどノリノリじゃないだろうね。

 うん、こうして考えていくと、確かに協力的な属性の大精霊達だ。


「ね? ちなみにレンちゃんの頼みだと全員協力的だろうけど、他の人だとそうはいかないからね?」


 成程、納得だ。

 

「それじゃ、その七星剣を利用っていうのは?」

「この七星剣はね、昔人にあげたんだよね。それからは聖剣として扱われてたみたいなんだけど、龍脈のオーブだけじゃ各地に天災が起こる事があってね。それをこの剣を使って治めたり、強力な魔物が現れた時にこの剣を使って退治したり、色々ね」


 そんな経緯があったとは。

 母さんの趣味は色んな人の支えになっているのは知っていたつもりだったけれど……。


「剣が認めた契約者は勇者なんて呼ばれた世代もあったみたいだよ? 1の魔力で1000の魔力が生み出せるようになるから、そりゃ人の世では英雄だったろうからねー」


 そう聞くと確かに凄い。

 最初に黒天が断られて衝撃を受けていたのも、さもありなんって気がしてきた。


「で、それぞれの剣が各属性に特化しているから、各地に留まる精霊達にも影響を与えやすくてね。その地域に住む精霊達の比率が変わって、例えば火の力を司る火天が祭られている地域は晴れやすいだったり、暑かったり。逆に水の力を司る水天を祀っている地域は雨が多かったり、涼しかったり、ね。それくらい影響が出やすい剣なの。ここで問題。その剣に異常が出ればどうなるでしょう」

「……加えられた力によって、悪影響が出るって事だね」

「そういう事だね。ま、実際七星剣はそろそろメンテナンスしないとって思ってたし、丁度良いかな」

「あ、それなら私が回収してこようか母さん」


 どうせする事もないし、したい事もまだ思いついていないし。


「うーん、それは嬉しいけど……そうだね、任せて良いかなレンちゃん」


 母さんは最初悩んでいたようだったけど、私がしたい事と受け取ったのか、止めなかった。

 この時の私は気付いていなかったけど、何故母さんが最初悩んだのか、後で分かった。


「蓮華さん、認識阻害の魔法を掛けるの、絶対忘れないでね。一応、地上全体に阻害魔法をマーガリンが掛けてるけど、まだ完璧じゃないらしいからねー」


 と、アリス姉さんに言われたからだ。

 母さんは私達がミレニアの所に行っている間にも、大掛かりな魔法を何重にも掛けてくれているらしかった。

 それは全て、私の為。

 私が自由に動けるように、不自由のない生活ができるように、母さんも兄さんも行動してくれている。

 私も、何か家族にお返しが出来たら良いんだけどな。

 そう思いながら、七星剣の回収を開始した。


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