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577.アーネストside10

 早朝に剛史と彩香ちゃんが来たので、ポータル石を起動させて昨日の場所へと移動し、ポータル石を回収する。

 魔力さえ補充すれば何度でも使えるので便利だ。


 三人で雑談を交わしながら歩いていくと、魔道具の矢印が天を指す場所に辿り着いた。


「おお、上向いてんな」

「空って事です?」

「いや、ここに召喚されるって事さ」


 言いながら、すぐ近くの木の下にポータル石を設置する。

 これで六日後、ここで待機してれば良いわけだ。


「そんじゃ、これで終わりか蓮二?」

「一人目はな。後二人、同じ事をするつもりだ。面倒だろうし、せっかくの休日だろ? 付き合わなくても大丈夫だぞ?」

「面倒って事はねぇけど……そうだな、俺はこの世界の蓮二を探すのを再開すっかな……蓮二は、そいつらと会ったら、帰っちまうんだろ? その、この世界とは違う場所へさ」


 そう言う剛史は、無理して笑っているのが分かる。

 そうだな、俺はこの世界に残る事はない。

 だから、剛史や彩香ちゃんとも、すぐに別れる事になる。

 家があって、自分の生活がある二人を、連れていくなんて出来ないしな。


「ああ。でもそうだな……俺の一つ目の目的、三人の仲間と合流できたら、俺達もこの世界の蓮二を探すのを手伝うぜ」

「「!!」」


 剛史と彩香ちゃんが驚いた顔をするけど、そんな意外な事言ったか?


「おいおい、俺はそんな薄情な人間じゃないつもりだぞ。それに、この世界の俺にも会ってみたいしな!」

「はは、そっか。俺達からしたら、混乱しちまいそうだけどな!」

「えへへ、そうですね。蓮二さんとアーネストさんが二人……どっちかお持ち帰りしてもいいです?」


 彩香ちゃんの言葉に剛史は笑い出し、俺は吹き出してしまった。


「むぅー、なんで笑うんですかー!」


 そう言いながら笑っている彩香ちゃん。


「それじゃ、私も剛史さんとは別ルートで、蓮二さんを探してみます。何かあったら連絡したいんですけど、アーネストさん何か便利な道具とかないです?」


 アーネスト呼びに少し意外な顔をした剛史だったが、すぐに思い至ったのか、何も言う事は無かった。


「そうだな……予備のスマホが何台かあったな……これを渡しておくか。お前達なら、一から説明も不要だろ?」

「おお、スマホだ」

「画面が少し小さい気がしますけど……」


 俺や蓮華が使っている物とは違い、元の世界であったスマホと大して変わらない代物だ。


「ただ、電波ってか……マナがこの世界には無いからよ。この端末同士が魔力で繋がってるから連絡を取れるだけで、他の事には使えないからな」

「便利そうで便利じゃねぇのな」

「ですねー」


 確かに。俺と蓮華が使っている、親機に当たるスマホは、スマホに触る必要もないので便利なんだけどな。


「ま、何かあったらそれで連絡を入れてくれ」

「分かった!」

「はいです!」


 それから一度家に帰り、剛史と彩香ちゃんとは別れる。

 帰り際に剛史が質問をしてきたが、


「そいや蓮二、明日からガッコ始まるけど……どうすんだ?」

「いや、それは当然行くわけにはいかないだろ」

「それもそうか……なら、うちの母さんにも事情説明しておいて良いか? ママ友ネットワークって意外と侮れねぇからよ……」

「あ、うちも説明しておきたいです!」

「ああ、構わないぞ。こっちも二人が上手く話してくれると思ってるし」


 むしろ、俺は家にあまり居ないだろうから、顔を合わす事は少ないと思うけどな。

 さて、残りはサザンアイランドとパシフィスか。

 この魔道具もある程度まで近づかないとクルクル矢印が回ったままで効果が無いから面倒なんだよな。


 認識阻害の魔法を掛けて、空を飛んでさっさと見つけるとするかね。

 そうして俺は、早速サザンアイランドへと向かう事にした。



「おー、中々に冷えるな」


 元の世界の日本で言えば、北海道に当たるこの場所。

 オーラで身の回りを包んでいるとはいえ、熱さ寒さは感じるもので。

 地面に降り立ち歩くとザク、ザクという音がする。

 雪が降ったばかりだと、ギュ、ギュという音がするので、少しの間ここら辺は振っていないのかもしれない。

 にしても、寒いが。


「さて、矢印はあっちだな」


 認識阻害の魔法を掛けてあるので、この島に来るのも楽々だった。

 ホント魔法様様だな。


「なんだ、こりゃ」


 しばらく歩いていると、まるで塔のように高いかまくらがあった。

 いや、かまくらなのかこれ?

 入り口は一応あるようで、人一人が入れそうな場所があった。

 矢印はそこを指している。


「マジかよ……あん中で上を向くとか止めてくれよ……?」


 とりあえず、どうせ入ってもバレないだろうから、中へ入る事にした。

 そして足を一歩踏み入れた瞬間、


”ビー! ビー! セキュリティシステムエラー! クリカエシマス! ビー! ビー!”

 

 おわぁ!? いきなりけたたましいサイレンと共に、機械音声が聞こえてきた。

 慌てて外に出ると、軍事服を着こんだ人達が大勢やってくる。


「侵入者か!?」

「足跡を見るに、まだ付近に居る可能性が高いです!」

「探せ!」

「「「ハハッ!」」」


 うおぉ、これもしかして軍事基地か何かか!?

 認識阻害の魔法が掛かってるから、見つかる事はねぇと思うけど……おかしいな、街のコンビニとかでは機械も認識出来てなかった気がすんだが。

 ただ、確認したけど、矢印は中で上を向いた。

 つまり、この塔みたいなかまくらの中に、召喚されてくるって事か。


「厄介な事になっちまったなこれは……」


 とりあえず、ポータル石を近くに設置する事にした。


「そこに居るのは誰だ?」


 げっ。認識阻害の魔法掛かってるよな!?


「もう一度問う。そこに居るのは誰だ? 返答次第では、俺も剣を抜かせてもらう」


 ドスの聞いた声でそう言ってくるので、俺は両手を上げて敵対する意思はない事を表しながら、認識阻害の魔法を解いた。

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