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569.蓮華side2

「そういえばレンちゃん、ミレニアが頼みがあるから、時間がある時にきてくれって言ってたよー」


 花を癒していたら昼食の時間になったので、兄さんやアリス姉さんと集まって皆で昼食を取っていると、突然母さんがそんな事を言い出した。


「そうなの? なら食事が終わったらすぐに行こうかな」

「蓮華さんミレニアの所に行くの? なら私も一緒に行くね! 護衛も兼ねて、ね!」


 笑顔でそう言うアリス姉さんに頷き、兄さんの方を見る。

 相変わらず絵画のように見えるイケメンの兄さんは、こちらに気付いて視線を合わせた。


「どうしました蓮華?」

「いや、兄さんは行かないのかなって」


 だって、ミレニア多分兄さんの事好きだし。一緒に行ったら絶対喜ぶと思うんだよね。


「私が、ですか。蓮華とならば行きたい気持ちもありますが……今はアーネストの事が少し気掛かりなんですよ。なので、すみません蓮華」

「ううん、気にしないで。千里眼っていうんだっけ? その、遠くからでも対象を見る事が出来るんだよね?」

「その一段階上、ですね。神眼と言います。この場にあって、その場にいるように全てが見える力ですよ。蓮華も使えるようになりますよ?」


 兄さんはいつも、力の説明をしてくれる時、私が習得できるかどうかを言ってくれる。

 大抵出来ると言ってくれるので、いつか覚えたいと思ったまま、放置している事が多いのだけれど。


「また思い出せたらお願い兄さん」

「ふふ、分かりました」


 兄さんは強制を絶対にしない。それに、その時交わした言葉も、自分から引き合いに出すことは無く、私から望まれた時に手を貸してくれる。

 そんな兄さんにおんぶにだっこで甘えてる自覚はあるけれど……まぁ家族だから良いよねって割り切ってたり。


「あ、兄さん。アーネストに何かあったら、私にも教えてね」

「それは出来ません」

「え?」

「アーネストから頼まれているのですよ。自分の事は自分でなんとかするから、蓮華に余計な事を言わないで欲しいとね。兄として、弟との約束を破るわけにはいきませんから」

「ロキ、それは言っちゃダメなやつじゃない?」

「む?」

「アーネストォ……!」

「ほら」

「……」


 おのれぇアーネスト! 私の心配はするくせに、私には心配させないってどういうつもりだー!


「いやその、蓮華。アーネストは蓮華の事を思ってですね……?」

「うん、知ってるよ兄さん。知ってるからこそ腹が立つんだけどね!」

「……なんとかしてくれませんかマーガリン」

「ぶふっ! ロキが私に頼むなんてねー、分かったわ。……レンちゃんレンちゃん」

「母さん?」

「ミレニアの家に行くのなら、ついでに渡して欲しいものがあるの。こっちについてきてくれる?」

「渡したいもの? 了解だよ」


 先程までアーネストに腹を立てていたのに、興味が他の事にいくとすぐにおさまる辺り、我ながら現金なものだと思う。

 後ろで兄さんがホッとした表情をしていて、アリス姉さんが笑っていたけど。


「これこれ。よっと!」


 ズシン、と。床が抜けるかと思うような巨大な袋。


「なに、これ?」

「アーティファクトとか、魔道具とか、詰め合わせだねー。ミレニアの公爵家から売りに出してる物、私が創ってる物が大半だからねー」


 成程。それでミレニアはお金を稼いでるわけかー。


「これを持って行けば良いんだね。アイテムポーチに入れて良いの?」

「勿論。渡した後に、レンちゃんが欲しいって思うものがあれば、ミレニアに言って適当に抜いちゃって良いよー」

「いやいや、売り物にそんな事しないよ母さん」

「あはは。まぁレンちゃんには必要のない物ばかりだからね。これが必要なのは、大体魔力が少ない子達だからねー」


 成程……まぁ魔道具って、そういう物が多いからね。

 魔法で火を起こせたり、水を出せたりする人は生活で大分楽が出来る。

 だけど、皆が皆、その適性があるわけじゃない。

 それを、魔道具で補う。元の世界で使った火を起こすライターとか、そんな感じなんだろう。


「よしっと。それじゃ行ってくるね母さん」

「はいはーい。ミレニアなら安心だから、遅くなっても良いけど、遅くなるなら出来たら伝言でも一言くれたら嬉しいかなー」

「あはは、勿論。それにアリス姉さんもいるし、なんならミレニアから連絡が行くんじゃない?」

「ふふ、それもそうだけど、私はレンちゃんから連絡が来るのが嬉しいな」

「もう、また私の好感度をそうやって上げる」

「あはは」


 なんて話をしながら、兄さんとアリス姉さんの元へと戻る。

 二人共食事は終えたようだったので、私も残りを食べ始める。

 相変わらず、母さんの料理は味付けが最高だ。私も料理をするようになったからこそ、この味は私では出せない熟練の腕だと分かってしまう。


「蓮華さんリスみたいだねー」

「むぐぅ!?」

「こらアリス、そこは黙って見てないとダメでしょー!」

「そうですよアリス。そんな蓮華も可愛いでしょう」

「むぐー!」


 待たせているので、急いで食べようと口の中に沢山放り込んでモグモグと食べていたのが仇になった模様。

 指摘されるととても恥ずかしい。

 真っ赤になりながらもゴクンと飲み込んだけれど、自業自得なので何も言えない。


「ごちそうさまでした……美味しかったよ母さん」

「お粗末様でした、レンちゃん」


 優しくそう言ってくれる母さんに、さっきまでの照れくささはひっこんだ。

 さて、それじゃミレニアの家に行こうか。


「アリス姉さん、もう行ける?」

「だいじょーぶ!」

「なら、早速行こうか。母さん、兄さん、行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃいレンちゃん、アリス」

「気を付けるんですよ蓮華。アリス、蓮華を頼みますよ」

「まっかせて!」


 元気よく返事をするアリス姉さんと共に、世界樹の麓にある泉の近く、ポータル石の近くまで移動する。


「何度来ても、ここは気持ちの良い場所だねアリス姉さん」

「そうだね。ユーちゃんが……見送ってくれてる気がする。ううん、事実見送ってくれてるんだろうね」


 アリス姉さんは世界樹を見上げながら、とても優しい表情をしている。

 きっと、昔の記憶を思い出しているんだろうな。

 私は、ノルンがイグドラシルに乗っ取られている時に、世界樹の中に連れられた時に初めて話をした。

 それからは、ユグドラシルの残滓と呼ばれているユグドラシルと、話は沢山したけれど。

 後は、リヴァルさんが召喚したユグドラシルと。

 記憶は通じているらしくて、本物と変わりはないらしいけれど……未だ私は、本当のユグドラシルと会話したのは、一度だけだ。


「蓮華さん、いこっか」

「うん」


 短く答えて、ポータル石を起動する。

 触れて頭に思い浮かべるだけで、転移できる。

 最初はこの感覚に慣れなかったなぁ。


 転移が済むと、同じように存在するポータル石の前に着く。

 王都・フォース。カレンとアニスがインペリアルナイトとして国を守護する一団に所属している。

 それも、二人はインペリアルナイトマスターという、インペリアルナイトを率いる立場だ。

 我ながら凄い人達と友達になったものだね。


 この街は以前、ノームが住んでいた。

 色々あって今はユグドラシル領の大精霊の皆が集まっている家に今は暮らしているけれど、ノームは今もここで働きに来ているらしい。

 後で顔を出すのも良いかな? と思ったけれど、今はミレニアの話を聞きに行かないとね。


「それじゃ行こうかアリス姉さん。認識阻害の魔法はアリス姉さんにもちゃんと掛かってる?」

「バッチリだよ! まぁ私には必要ないと思うけどねー?」

「いやいや、アリス姉さんももう顔はバッチリ割れてるからね。こんな可愛い人を忘れるわけないからね」

「も、もう! 蓮華さんは真顔でそういう事を言うんだからー!」


 事実だから仕方ないと思うんだけれど。

 さて、ミレニアは何の用かな?

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