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567.アーネストside6

「う、嘘……」

「マジ、かよ……」


 一人、また一人と地面へと伏していく。


「そらよっ!」

「がはぁっ!」

「ぐぁぁぁっ!」

「は、速すぎて見えないぞ!? 一体どこに……ぐはっ!?」


 全員、平打ちで倒れていく。

 ネセルの不満の声が聞こえるが、殺すわけにもいかねーしさ。


「な、なんなのこれ……どうして姿が見えないの!? きゃぁっ!?」

「み、皆! 背中を合わせて円陣を組め!」

「そうか! うわあぁぁぁっ!!」

「なっ!?」


 甘ぇ甘ぇ。俺の剣は長剣でもあり、鞭でもある。

 変幻自在の攻撃を、俺の姿を捉えきれないお前らが死角を減らした程度で防げやしねぇよ。


「蓮二さん、パないです……」

「あ、ああ。まさかあっこまでとは……時々姿が見える程度で、それも残像だよな多分……」


 よし、こいつで最後!


「がはっ……ば、ばけもの、め……」

「いや、殺してねぇんだからそんな絶望した顔すんなよ……」


 ネセルをしまい、二人の元へと戻る。


「いっちょ上がりだぜ。中々のもんだろ?」


 ニカッと笑ってそう言うと、剛史も笑いだした。


「は、はははっ! ったく、お前強すぎるわ! 今なら俺のダチは世界一って触れ回りたいくらいだぜ!」

「やめろっ!」

「ははは!」


 俺は俺の力より上が沢山居るのを知ってる。

 だからそんな恥ずかしい事を言って回られた日には恥ずかしさで悶絶する自信がある。


「蓮二さん、凄い……」

「彩香ちゃん?」

「ハッ!? え、ええと、す、凄いですね蓮二さん!」

「お、おう?」


 顔を赤らめながらそう言う彩香ちゃん。

 そういえば、道場でも時々こんな風になってたな。

 凄い剣技を見た時とか。やっぱ剣が好きなんだなぁ。


「ほあっ!?」


 なんとなく温かい気持ちになって、彩香ちゃんの頭を撫でる。

 きっと俺の剣筋を彩香ちゃんは追えていたんだろう。

 見取り稽古、彩香ちゃんは目が良いから、大人達の剣筋をよく見て、癖とかを俺に教えてくれていた。


「れれれ蓮二さん!?」

「あ、悪いな、つい」

「はぁ、お前は……天然な所はどっちの蓮二も変わらないんだな」

「だから悪いって言ったじゃねぇか。娘っていうか妹みたいな感じがしてつい、さ」

「い、妹、ですか、あはは……」

「……彩香ちゃん、強く生きろよ……」

「は、はいぃ……」


 二人して肩を落としている姿を横目に、俺は車のエンジンをかける。


「おい二人共、話は車の中でも出来るだろ? 行くぞー」

「あ、おう!」

「はいー……」


 少し先まで人が沢山倒れているので、車を少し浮かせる。


「車まで浮かせられるのかよ!」

「もう蓮二さんなんでもありですね……」

「ぶはっ」

「「?」」


 つい吹き出してしまった。

 成程、お前もこんな気持ちだったんだろうな、蓮華。

 さて、キリングフィールドにこれで入れたわけだし、そろそろこの魔道具を使う時だな。


「蓮二さん、それは?」

「ああ、探したい相手の情報を入れると、空中に矢印が出てくれるんだよこれ」

「なんかナビみてーだな蓮二」

「はは、確かにな。彩香ちゃん、それ持っててくれるか?道なりに行くから、進む先を教えて欲しいんだ」

「了解です!」


 元気のいい返事をする彩香ちゃんに笑いながら、車を走らせる。

 長い橋を渡り、陸へと道が繋がった所で、同じ服を着た大勢の人達が待機しているのが見えた。


「そりゃ連絡はいってるわな」

「どうする蓮二? 全部ぶっ飛ばすか?」

「おいおい、そんなだからバーサーカーなんて言われてるんじゃないか剛史」

「ぐっ……言い返せねぇけどよ」

「そうですよ剛史さん。後ろに気付かれないように近づいて、クイッと狩ってくんですよ」

「そんなだからブラッドアサシンなんて呼ばれてるんじゃないのか彩香ちゃん……」

「うぐぅ!?」


 

 二人が目に見えて落ち込む中、どうするか考える。

 彩香ちゃんに渡した魔道具の矢印は、前を指している。

 なら、まっすぐ進むしかない。


「よし、飛ぶぞ!」

「「!?」」


 俺は車のギアを上げて、6段に変える。この車はマニュアルトランスミッションなので、自分で変速が可能だ。


「うおぉぉ!? 蓮二、体が後ろに倒れるんだが!?」

「重力が凄いです!?」

「しっかり捕まってろよ! まだまだ上げるぞっ!」


 ギアをローからハイへと変え、更に上げていく。

 この車は12段まで変速が可能なのだ。


「時速183キロ超えたな、まだまだぁっ!」

「うぉぉ!?」

「これ風圧が凄いですー! 窓、窓が欲しいですー! 髪がぐちゃぐちゃにー!?」


 気にする所がそこなのかと思ったけれど、女の子だし普通はそうなのかもしれないな。

 二人に風壁の加護を付与しておく。


「「!?」」


 さっきまで掛かっていた圧が消えたはずだから、これで静かになるだろ。


「いきなり風が消えた!? どうなってんだこれ!?」

「きゃぁぁぁっ! 鏡、鏡ありませんか剛史さん!」

「……」


 どっちにしろやかましかった。

 道を上がるように空を駆ける車に、地上の奴らは見上げるだけだ。


「よし、矢印の指す方向にこのまま進むぞ。彩香ちゃん、頼む」

「あ! はいっ! えっと、少し左です!」

「了解!」

「うひょー! 爽快だなこりゃぁ!」


 後ろではしゃぐ剛史に苦笑しながら、空中ドライブも悪くないなと思う俺だった。

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