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565.アーネストside4

 今日は土曜日で、学生的には休日だ。

 これから未来で出会った三人の転移者のうちの一人、シュウヤを探しに行く。

 この場所から一番近い島に転移してくるからだ。

 弓の達人で、転移前も弓道部の部長だったと聞いている。

 この世界に来て得たスキルも弓に関する物が多く、すぐに強くなれたと言っていた。


「それで蓮二、どこに探しに行くつもりなんだ?」

「当てがないわけじゃないんですよね蓮二さん」

「ああ、それは……って、剛史に彩香ちゃん、もしかしてついてくるつもりか?」

「今日明日とまだガッコも休みだしさ。蓮二に付き合おうと思ってな!」

「私もです!」


 この世界がどんな所なのか分からないけど、俺の記憶にある日本に近いなら、危険もないか……と思っていた、この時までは。


「お! ホッキョクグマがいんじゃん! 今日の夕飯にしてやるぜっ!」

「あ、剛史さんズルいです! 私が仕留めるんですからっ!」

「え」


 剛史は何もない所から長剣、バスタードソードだろうか? を出現させ、でっかいクマに斬りかかる。

 彩香ちゃんは両手に短い短剣、ダガーを持ちクマへと駆ける。


「ちょっ……」

「グォォォンッ!?」


 瞬きをする暇も無く、倒される巨大なクマ。

 えぇぇぇぇ。


「よっしゃ! 彩香ちゃん解体のスキル使えたよな?」

「うん、大丈夫! 任せて!」


 彩香ちゃんが何か唱えたと思ったら、でっかいクマがまるでゲームのように肉や皮といった素材に、変わった。


「な……」

「ん? どうした蓮二」

「どしたんですか蓮二さん?」

「なん、っじゃこれー!?」


 叫んでも仕方が無いと思うんだ、うん。

 普通にクマが道を歩いているのもおかしいけど、なんでこいつら普通に戦えるんだ!?

 俺の知ってる元の世界だと、人間が素手で、いや武器使ってたけどクマを倒したりしねーし、そもそも武器を何もない所から出したりしねーよ!?


「落ち着けよ蓮二、何を驚いてるんだ?」

「そうそう。ホッキョクグマなんて低ランクモンスター、小学生でも倒せるじゃないですか」


 いやいやどういう事だよ。何一つ理解が追いつかねぇよ!

 なんでホッキョクグマをスライム倒しましたみたいな感じで言うんだよ!


「いや、だってクマだぞ? スライムじゃないんだから……」

「「!?」」


 と言ったら、二人がガクブルと震えだした。


「す、スライムか、あいつらは確かにつええよな。俺なんてこの前溶かされるところだったわ……」

「ほんと、斬撃が効かないし増えるし、なんであんなに強いんでしょうねスライムって……」

「……」


 あっれぇ、俺とイメージが全然違う。どうなってんのこの世界。


「オーケー、どうやら認識の相違があるみたいだ。まずはそこの違いを合わせて行こう」

「「?」」


 二人はきょとんとした顔でこちらを見てくる。

 だけど、これは大事な事だ。

 お互いが当たり前と思っている事が、実は違っているって事なんだから。


 そうして話を聞いていく中で、俺の知らない事実が沢山でてきた。

 まず、神島……ヤマトは、47の島国の集合した名称なんだそうだ。

 まんま日本じゃねぇかと思ったが、一つの島毎に海で離れているそうだ。

 名前も日本で聞いたそのままが多かったが、一部完全に違う名前の島があった。


 その島が、俺があいつらから聞いていた名前の島である事が判明した。

 そして、先程の魔物。モンスターと言っていたけど、こいつらはどこからともなく急に現れるらしい。

 1秒前は居なかったのに、急に目の前に現れる、なんて事があるのだとか。


 幼い頃からそんなモンスターと戦っているうちに、それは当たり前となっていたそうだ。


「この武器も、なんか自然に出せるんだよな。人によって形はちげぇけど」

「ですね。私はダガーの二刀ですけど、剛史さんは長剣ですし」


 との事だ。ちなみに俺は? と聞くと、刀だったと答えが返ってきた。


「それじゃ、この世界の皆は誰でも戦える力を持ってるんだな」

「そうだな。つか、お前が元居た世界はそうじゃねぇの?」

「あ、私も気になります!」


 と言うので、俺は元の世界の事をかいつまんで説明した。

 モンスターなんて居なくて、人は皆武器なんて出せない、そんな普通の事を。


「へー……俺達には考えられねぇけど、平和そうだな」

「ですねー。私はそんな世界、退屈そうだなって思いますけど」


 二人の言葉に苦笑するしかない。実際平和なのもその国だけで、一歩外に出れば戦争している国だってあるし、戦い以外にも沢山の娯楽はあるし、スポーツだってある。

 けれどそれを、別の世界で生きている二人に共感してもらう必要はないだろう。


「ま、俺はその世界から別世界に転移したんだけどな。そんでここに来たってわけだ」

「つまり世界を渡り歩いてんのかよ! 良いな、楽しそうだな!」

「ですよねー! 私も興味あります!」


 こいつらは。二人にデコピンをしておく。


「あだっ」

「あいたっ」

「とにかく、目的地はサザンアイランドとキリングフィールド、そしてパシフィスの三つの島だな」


 これが未来のあいつらから聞いた時に日本と結びつかなかった理由だ。

 日本要素どこだよ。

 ちなみに見せてもらった地図で言うと、北海道がサザンアイランド、キリングフィールドが東京、パシフィスが沖縄あたりだな。

 あたりというのが味噌で、正確にそこがそうと言えないような形だったから、大体の位置的に、だ。

 島国は合わせて見れば、日本とよく似た形をしている。

 ヤマトとはよくいったものだ。


「ここからだと、キリングフィールドが一番近いですけど……」

「あー、あっこかぁ。あっこは中に入るの厳しいかもなぁ」

「どういう事だ?」

「各島は一応橋で繋がってんだけどさ。キリングフィールドは検問っつうか、仕切ってる奴らが居てさ、入るの難しいんだよな」

「ですねー。でも私と剛史さんが居るから、もしかしたら入れるかもですけど……あの、今の蓮二さんって戦えます?」


 なんか、前途多難な気がしてきたな。

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