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97話.特別公爵家当主の訪問

 『ポータル』の魔法を母さんが使い、フォースの街に着いてからが凄かった。

 私やアーネストだけの時とは違い、裕福そうな一目見て貴族と分かる人達が凄い数集まって来た。

 その人達に母さんは、


『今日はソカリス家に行こうと思ってね。あの子達には子供達も世話になっているから、一度挨拶に行っておかないとと思っていたの。貴方達とはまた今度機会があればね?』


 と言って、先へ進んでいく。

 私とアーネストも遅れずについていこうとしたら、


『アーちゃん、レンちゃんは国王にこの書簡を届けてくれる?』


 と言われたので、頷いて受け取る。

 何の書簡なのかは聞けないけれど、母さんのする事だから必要な事なんだろう。

 そこで母さんとは別行動になったけれど、いつもより数倍は人通りの数が多い。

 街に着いてすぐでこれなんだから、時間が経てば経つほど多くなりそうだ。


 とりあえず母さんに言われた通り王城へと足を運び、書簡を届けた。

 側近か誰かに渡して終わりだと思ったら、玉座のある間へと通されてしまった。

 何気に初めて会った気がするけど、この人がカレンやアニス、インペリアルナイト達が仕える王なんだ。


 物語に出てくるような、これぞ王って感じの王様ではなかったけれど、白い髭を伸ばした貫禄のある風貌で、落ち着いた雰囲気のある人だった。


『ありがとうアーネスト殿、蓮華殿。カレン卿にアニス卿は我が国の誇り。貴族達のつまらぬしがらみもあるが、その方達が良き友として居てくれれば安心だ。これからも宜しく頼む』


 そう言って朗らかに笑った。

 私とアーネストも顔を上げ、ニコリと笑ってそれに応える。

 その後このまま食事でも、と言われたけれど、カレン達の元へと行く事を伝えると笑って見送ってくれた。


「温厚な王さんだったな蓮華」

「だな。中身がどうかはまだ分からないけど……カレン達が認めているなら、大丈夫なのかもね」


 流石に一目見てその人の事を知る事は出来ない。

 けれど、あの優しい目は信じられる気がした。


 それからソカリス家へ着くと、屋敷の使用人達だろうか?

 メイド姿をした人達や、タキシード姿の執事、かな?

 色んな人達が慌ただしく走っていた。


「何かあったの?」


 気になったので、すぐ近くのメイドさんに聞いてみた。


「それはもういきなり特別公爵家当主のマーガリン様がいらっしゃるから、皆大慌てで準備を……れ、れれれ蓮華様!? それにアーネスト様ぁっ!?」


 凄く狼狽された。


「あ、うん、ごめんね。忙しくさせちゃったみたいで……」

「と、とととととんでもございませ、ございませんっ!」

「こら新入り! 忙しいのに何を油をうって……蓮華様!? アーネスト様!?」


 おう、デジャヴ。

 新人さん? と、教育係の人かな? が、二人揃ってぺこぺこと頭を下げる。


「お前、気を付けろって言ったろ蓮華……」

「うん、ごめん……」

「あー、俺達の事は気にしなくて良いからさ。邪魔しちまって悪かったな、もし怒られそうになったら俺らの……蓮華の名前出せば大丈夫だろうからよ」


 恐縮しながらこの場を離れる二人を苦笑しながら見送る。


「ったく、お前は自分の立場をもう少し理解しろっての。もう平社員でも一般人でもねぇんだからさ」

「分かってはいるつもりなんだけど……注意するよ」


 この世界では、一番上の地位にある母さんの子供なんだ。

 声を掛けるのも、気を付けないといけないんだよね……。


 それからアーネストと二人、ホールへと足を運んだ。

 そこでは母さんとカレン達が話をしている所だった。


「うん、これくらいで良いかしらね。突然でごめんなさいねカレンちゃん、アニスちゃん」

「「とんでもございません!」」


 母さんに頭を下げる二人。

 その後ろに控えているニアとクロウ、更にその後ろにミレル、後は新人さんかな? 見た事の無い人達が並んで一礼していた。


「あ、来たねアーちゃん、レンちゃん」

「「「「「!!」」」」」


 皆が驚いた顔と、嬉しそうな笑顔を向けてくれる。


「うん、ちゃんと届けてきたよ」

「ありがと。私はこれで帰るから、後は友達と遊んできて良いよ」

「え? 母さん帰っちゃうの?」

「今日は、ね。目的は果たしたから、このまま私がここに居たら、手が出せないだろうし」

「「?」」


 私とアーネストは頭に疑問符を浮かべる。

 一体どういう事?


「ふふ、それじゃカレンちゃん、アニスちゃん。アーちゃんとレンちゃんをよろしくね」

「は、はいっ! むしろ、こちらがご迷惑をお掛けしないか心配ですが……!」

「で、ですっ!」

「大丈夫、アーちゃんもレンちゃんも、迷惑なんて絶対感じない子達だから。それじゃーね、もし遅くなるようなら連絡してねレンちゃん」

「うん、了解だよ母さん」


 そう言うと、微笑んで『ポータル』を使い、その場から消える母さん。


「おうふ……私の魔法禁止の術、簡単に破られちゃった……流石はマーガリン様……」


 なんてミレルの一言が聞こえたので、ミレルを見たら舌を出して微笑んだ。

 可愛いけど、クロウにぽこんと頭を叩かれていた。

 グリンはこの場に居ないみたいだけど、警護で近くに居るのは気配で分かる。

 結構集中しないと分からないので、流石だと思う。


「カレン、アニス、突然母さんがごめんね」

「い、いいえ! むしろ、こちらが感謝したいくらいですわ」

「です!」

「そうなの?」

「はい、詳しくは場所を変えてお話致しましょう。ニア」

「畏まりました。ではどうぞこちらへ」


 微笑んだニアが、私達を案内する為に前を歩く。

 うん、皆仕事をしっかりしてる。

 それに、その身から感じる力が桁違いに上がっているのを感じる。

 これは修練も本気で取り組んでたんだろうね。

 確かめるのが楽しみになってきたよ。 

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