94話.魔者のモンスターカード
今日は定例のニガキ君との会議の日だ。
ニガキ君とは、ナイトメアの件や初音の事で協力する関係で知り合った。
まだどちらの件も片付いていないけれど、ニガキ君とは企業の社長として今も連絡を取り合ってる。
私はユグドラシル社の社長として、ニガキ君はトイボックス社の社長としてだ。
ニガキ君の企業名は名前から予想出来るように、子供向けのおもちゃ屋さんだ。
ただその種類は多く、大人も楽しめるおもちゃもある。
トレーディングカードゲームとかがその最たるものかもしれない。
以前母さんがミレニアと交渉していた物も、そういったおもちゃに含まれるわけで。
良い大人も子供と一緒になって楽しめるのがおもちゃの良い所だと思う。
それとは別で、ニガキ君はDMS団という裏の組織を作って、悪さをするナイトメアに対抗したり、魔物の中でも理性のある者達との共存関係を作ろうと努力していた。
そんなニガキ君の力になりたいと思ったのもきっかけの一つで。
私とアーネスト、そしてニガキ君で、モンスターボールならぬ、モンスターカードの機能拡張計画を立てていた。
以前初音の件で話した時に、魔物と魔者の違い、そしてカードの中は魔者の家になっている話を聞いた。
そこから、元の世界であったお話の一つのように、モンスターを捕獲してペットや家族のように出来たら、という話を進めていた。
テイマーという職業もあるように、魔物……モンスターとも心を通わせる事も出来るのだから。
この世界には幸い魔法がある。物理的な方法が不可能でも、魔法という全てを可能にする力が存在する。
だから、似たような事は可能だと考えている。
勿論、神がかり的な力が必要になるかもしれないけれど……その時はそれ、神様の力を借りよう。
というわけで、具体的な内容を話し合っているのだ。
お互いに会う事が出来ない為、スマホのラインを使っているけどね。
通常と違うのが、スマホから映像が出て、今いる場所が映る点だ。
映像にはニガキ君の上半身と、書斎に居るのかたくさんの本が後ろに並べてあるのが見える。
私はアーネストの部屋で行っている為、ニガキ君には私とアーネストの上半身と、後ろが少し見えているだろう。
ビデオ通話というか、そういうのに近いのかもしれないね。
『モンスターの捕獲については、可能になりました。ですが、その際に狂暴な魔物の気性と言いますか、そういったものが治らないんですよね』
「そりゃ、捕まえるだけだもんな。捕まえた人を主人と思うわけねぇか」
アーネストの言う通り、そんな都合の良い事は普通無いだろう。
だけど、この世界には魔法がある。
「ならさ、魅了の亜種だけど、捕まえた人に好感を持つようにしたら変わらないかな? 勿論、悪く扱う人には懐かないのは当たり前としてね」
『成程……。蓮華様、試作で構いませんので、新品のモンスターカードにいくつかその魔法を掛けて頂けますか?』
「うん、構わないよ。ただ、心を操る関係の魔法だから、効果はどう出るか分からないけど」
『それは勿論です。それに、要は捕まえた魔物が人間を襲わないようになれば良いので……』
ただ、これを商品化する場合、色々な問題点が出てくる。
捕まえていない魔物と捕まえている魔物との区別をつけられないと混乱を招くだろうからね。
将来的には魔物とのある種の共存に近づけるんじゃないかと期待している。
問題点も多すぎて、実現できるのは遠い未来になりそうだけれど……それでも、ニガキ君はきっと諦めないだろう。
自分の代が終わっても、それを子に次いでいく……そんな気概を感じるんだ。
『そういえば蓮華様、アーネスト様。魔物の捕獲とは別で、魔者達の方なのですが……図鑑に能力値、スキルなどをまとめてみました。また時間のある時にでもご覧になって頂けますか?』
「うお、良いのかよ!? それ超重要書類になるんじゃねぇの!?」
『はは、当たり前ですよ。蓮華様とアーネスト様に見せられないのならば、他の誰にも見せる事は出来ませんし。それと、お二人に試して頂きたいという想いもあります』
「試してもらいたい事?」
『はい。参考にしたポケ〇ンのように、魔者達を戦わせる事が可能です。その舞台は専用の魔法装置を使って一時的に創り上げますので、現実世界に影響は出ません』
おお、それは凄い! ホント魔法って便利だよね。
『データを転送しますので、許可して頂けますか?』
「「了解」」
スマホ上でデータを受け取る。
そこには魔者達の姿や詳細がびっしりと書かれたテキスト、まさに図鑑があった。
魔者の見た目が左側のページにあって、右側には覚えるスキル、ステータスが表示されている。
「あれ、ちょっと良いかニガキ?」
『どうしましたアーネスト様?』
「いやこれ、レベルがあるじゃん? 軽く流して見たけど、全員違ぇんだけど……」
『はい、そこはその……まだ同じ魔者を創っていない為です。その図鑑に載っている魔者達は最初の一体目のデータなのです。今後、レベルや実際のステータスは図鑑には載せないつもりですので、蓮華様とアーネスト様だけが確認できます』
な、成程。
つまり、今居る魔者達全てのデータを送ってくれたのだ。
『ちなみにリンクが大元の私のデータと繋がっていますので、自動アップデートされます。宜しければ、蓮華様とアーネスト様専用の図鑑をお創りになりますか? 私の図鑑は管理用ですが、蓮華様とアーネスト様ご自身が所持なさっている魔者達の図鑑として』
そ、それは欲しい。
なんていうかポケ〇ン図鑑ですよね?
「おお! 俺は欲しいぜ!」
「私も!」
『分かりました。空白の図鑑は簡単に作る事が可能ですので、後日転送いたしますね。その図鑑は一度手にした魔者以外は登録されませんし、自身の魔者達のステータスしか見れませんので、ご注意ください』
「おう、分かったぜ! そんで、俺達に試してもらいたいってのは、魔者達を戦わせるって事で良いのか?」
『はい。また、バトルのルールなども決めたいのです。ゲームと違って、ターン制などありませんから』
「あー、確かにね。やっぱり魔者の数は6体かな?」
などと、冒頭で社長とか言っておきながら、友達で集まるノリで話を進める私達だった。