表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

553/713

93話.誕生日パーティーと変わらない日常

 ナチュリアちゃんを連れて部屋に戻ると、皆の視線が一斉にこちらへと向いた。

 話は終わっていたようで、ノルンはこちらへと歩いてきて、ナチュリアちゃんを連れて行く。


 私の横を通り過ぎる時に「ありがと」と小声で言ったのが聞こえた。

 しっかりとこちらの意図が伝わっていたようだ。


 それからナチュリアちゃんの自己紹介は温かい雰囲気で終わった。

 いやナチュリアちゃんはガチガチに緊張していたけれど。

 ただ、アーネストのお陰か、ちゃんと背筋を伸ばしてしっかりと目を見て話していた。


 そこに怯えた様子はなく、緊張をしてはいるけれど、芯を持った様子が伺えた。

 ノルンも少し不思議に思ったようだったが、こっちを見てから何か納得したような表情になった。


「ふむ、よろしくなナチュリア」

「は、はひっ!」


 流石に、リンスレットさんに名前を呼ばれた事には耐えられなかったようだけれど。

 背筋をピーンと伸ばして、頭を下げて、頭を上げるとリンスレットさんの顔が目の前にあって、そのまま失神した。


「あちゃー……」

「おいノルン、この子失神してるぞ」

「兄さん、大丈夫なのかな?」

「わ、私は何もしてないぞ?」

「それは分かってますよリン……」


 ナチュリアちゃんには悪いけれど、笑ってしまいそうになる。

 頭に手をあてて項垂れてるノルンに、ナチュリアちゃんが倒れるのを防いで抱きかかえてるタカヒロさんとゼロに、それを見てナチュリアちゃんとノルンを交互に見るリンスレットさん、アスモはそんなリンスレットさんにツッコミを入れてて……家族っていう感じがして、凄く心が温かくなる。


 とりあえず私が気付けの魔法を掛けた。

 するとナチュリアちゃんはすぐに目を覚まして、思い出したのか頭を凄い速度で上下させながら謝っていた。

 流石に皆苦笑しながら、ナチュリアちゃんを落ち着かせて、皆で食事を再開する事にした。


 タカヒロさんとゼロ、それにアーネストが宴会芸をしてくれたり、ノルンが用意したボードゲームを皆で遊んだり、トランプをしたりして……その日は夜まで楽しんだ。


「今日はありがと蓮華、アーネスト」

「ううん、こちらこそ呼んでくれてありがとうだよ。とっても楽しかった」

「ああ。俺もすげぇ楽しかったよ。タカヒロさんやゼロとも久しぶりに遊べたしな! アリシアも元気そうだったし、心配事が少し減ったぜ」

「「え?」」


 パーティーも終わり、後は帰るだけという状況でアーネストから信じられない言葉が聞こえた。


「ソロモンの件が終わってから、あいつなんか空元気だったじゃん? まぁ時の世界から帰ってきた時には戻ってたみたいだけどよ」


 ああ、それってタカヒロさんが私達と一緒に強くなったからだったような。


「そんで少しは心配してたんだが……今日は楽しそうにしてたし、杞憂だったみてぇだからよ!」


 それはお前と一緒に遊べたのが嬉しかったからじゃ……ボードゲームもトランプも、ちゃんとアーネストの横に居たし。

 そう思ってノルンを見ると、同じ事を考えていたような気がする。

 自然と苦笑しながら頷く私達だった。


「あっ! 忘れる所だった!」

「何をだ?」

「私達のプレゼントだよ!」

「おお!」


 危ない危ない、このまま帰ったら何の為に買いに行ったのか。


「ノルン、これリンスレットさんに渡しておいてくれるかな?」

「俺のも頼むわ。流石に今から部屋に行くのもなんだからよ! ノルンが渡しておいてくれ!」

「はぁ、ったく……アンタ達は本当にどこか抜けてるわよね」

「「うぐっ……」」


 何も言い返せない。

 そんな私達を見て、ノルンは溜息をつきながらも、


「分かったわ。今日はありがとう」


 そう、今日一番の笑顔で言ってくれた。

 もう夜も遅いので、私達は『ポータル』を使ってユグドラシル領へと帰る。

 家の明かりがついていて、夜でも温かい光が外に零れてる。


「「ただいまー!!」」


 勢いよく玄関の扉を開け、中へと入る。


「おかえりアーちゃん、レンちゃん!」

「おかえりアーネスト、蓮華」

「おかえりなさい蓮華さん! アーくん!」


 三者三様の温かな返事が返ってくる。


「さ、まずは手を洗ってきなさいね。ご飯は食べてきたんだよね? 軽く何か食べる?」

「食べる食べる!」

「あ、私も少しなら!」

「ふふ、了解。それじゃ美味しい物用意するね」


 そう母さんが言ってくれるのに胸を弾ませながら、洗面所へと向かう。

 何故かアリス姉さんも一緒についてくるのに笑いながら……いつもと変わらない夜が更けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ