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92話.リンスレットへのプレゼント②-1

「その、私から言っておいてあれだけど、時間は大丈夫なの?」

「そんな事は気にするな。今日から毎年、今日は国民の祝日だからな」

「あれ本気で言ってたの!?」

「そうだが?」

「……」


 あー、そっか。

 この世界の人達は基本的に週に一度しか休みが無い。

 それ以外はずっと仕事をしているし、かと思えば冒険者のように自分で仕事をする日を決めれたりと、バラバラだ。

 そんな中で、祝日という概念が無いのだ。


 ノルンが言葉を失っているし、一応フォローしておこう。


「ノルン、別に不思議な事じゃないよ? 私達の元居た世界でも、天皇誕生日は国民の祝日になってたからね」

「そうなの!?」

「そうだぜ。俺達の感覚だと、別に普通の事だな」


 アーネストの援護もあって、ノルンも納得してくれたようだ。

 最初の心底驚いた顔はとても可愛かった。


 それからアスモとタカヒロさんにゼロは、魔界の人達に伝達をする為この場を離れて行った。

 皆なら魔力を追って来れるだろうし、文字通り勝手知ったるってやつだろうからね。


 ノルンがパーティーの準備をした部屋へと案内をしてくれるというので、後に続く。

 その間にリンスレットさんが礼をしてきたので、ノルンの事をフォローしておいたら、ノルンが急に走りだしたので追いかける。


「ふぅ、ここよ!」

「ほう……」 


 特別豪勢な部屋というわけじゃない。

 でも、ノルンなりの気遣いが感じられる部屋だ。

 等間隔に置かれたキャンドルには小さな火が所々についていて、それが照明となり温かな光景に見えるし、食事も冷めないように時間が止まる魔法陣の埋め込まれた蓋がしてある。

 足元も床ではなく、柔らかい絨毯が全体に敷かれている。

 バイキング形式になってはいるものの、ソファーも椅子もあって、その近くには食事の置かれていないテーブルもある。

 きっと、皆の事を考えて部屋を作ったんだろう。


「うん? どうしてその料理だけ場所が離れているんだ?」


 ノルンがビクッと体を揺らした事から、大体察する。

 きっとあそこに置いてある料理が、ノルンの手作りなんだろう。

 それから、ノルンの一世一代の告白のような言葉を聞いて、リンスレットさんが固まった。

 うん、あれは絶対昇天したね?


「……っ……」

「リンスレットォ!?」 


 あっぶなぁい!?

 アーネストと一緒に、なんとか倒れる前に体を支える。

 見た目と裏腹にと言ってはアレだけど、その体はとても軽かった。


「だ、大丈夫ですか? 嬉しすぎたんだよね?」

「あ、ああ……」

「ったく、そんなんでよく今まで隠せてきたよな」


 アーネストの言葉に同意するしかない。

 よくこんなんでバレて無いよね。

 ノルンはリンスレットさんが自分の事に興味が無いみたいに思ってるから、大成功してるみたいだけど……奇跡的だと思う。


「私が食べて良いんだな?」

「も、勿論よ。その為に作ったんだから」


 気を取り直したリンスレットさんを見て、もはや笑いそうになった。

 この人はどうしてノルンが絡むとここまで親しみやすくなるのか。


「ど、どうかしら?」

「……ああ、美味い。まさか娘からの手料理がこれほど美味しいとはな……毎日でも飲みたいくらいだ」

「「……」」


 それ日本流のプロポーズですからっ!

 いや家族だと意味は変わってくるだろうけどね!

 アーネストを見たら私と同じように我慢しているのが見て取れた。

 お互い顔を見合わせて、なんとか耐える。


 それから少しして、アスモ達が揃ってやってきた。

 もう伝達は終わったんだろう。


「そうだ。皆が居ない間に、私専属の錬金術師を雇用したんだけど……皆に紹介しても良いかしら?」

「ふむ、それは仕事の関係者としてか? それとも……」


 どうやらノルンはナチュリアちゃんの事をこの場で話すようだ。


「勿論、仲間として」

「成程な。お前がそう決めた相手なら、見てやろう」

「ゼロも成功でしたし、意外と人を見る目はあるかもしれませんよリン」

「はは、そうだな」


 成程……なら、この場に私達が居るのは駄目だね。

 ううん、きっと皆嫌がらないだろうけど、私が嫌だ。


「なら、私が連れてくるよ。今日の主役メンバーが離れるのもあれでしょ?」

「蓮華……そう、ならお言葉に甘えるわね」

「うん! ほら、アーネスト行くぞ!」

「え、俺も!?」

「当たり前だろ、ほら行くぞ!」

「うおっ!? 腕を引っ張るなよ! 行く、行くってばよ!」


 アーネストの腕を引っ張りながら、その部屋を後にする。


「ったく、そこまで気にしなくても良いだろ」

「逆の立場で考えて見ろよアーネスト。家族だけで話したい事だって、あるはずだろ」

「ま、それもそっか。ならゆっくり行くか?」

「ああ。ナチュリアちゃんの場所は覚えてるしな、なるべく時間をかけて行こう」

「あいよ」


 そうして、私達はのんびりと歩いてナチュリアちゃんの部屋へと辿り着いた。


「ナチュリアちゃん、居る?」

「はわっ!? れ、蓮華様! それにアーネスト様まで! ど、どどどどどうしたんでちゅ、でしゅ、ですか!?」


 うん、落ち着こうか。

 噛みまくってるよ。


「ノルンがナチュリアちゃんを皆に紹介したいんだって」

「わ、私なんかをですか!?」


 うーん、ナチュリアちゃんは自己評価が物凄く低いように感じる。

 机の上に並んでいる宝石やアクセサリーを見ると、もはや惚れ惚れするレベルの物を創っているのに。


「うおっ!? これナチュリアが創ったんだよな!?」


 そんなの当たり前だろ。何を言ってるんだアーネストは。


「え? は、はい。そうでしゅ、ですけど……」

「やっぱすげぇよナチュリアは! 俺じゃ絶対こんなすげぇもんは作れねぇ! 断言する!」

「は、はひっ!?」

「だからさ、自信持って良いんじゃねぇの? 人にはそれぞれ向き不向きがあんだろ? ナチュリアには戦う力とか、そういうのはねぇのかもしれねぇ。だけど、こんなすげぇもんを作れる神の手を持ってるじゃねぇか!」

「っ!?」


 ……成程。ナチュリアちゃんに自信を持ってもらう為にか。

 ああいや、それもあるだろうけど、こいつはヨイショが苦手な奴だからな。

 だから、きっと本心で言っている。ソース、もとい根拠は私。


「アーネスト様……はい、ありがとうございます!」

「おう!」

「ふふ、それじゃ行こうかナチュリアちゃん」

「はいっ! 蓮華様!」


 それから、ナチュリアちゃんを連れてのんびりと歩いて向かう。


「ところでナチュリアちゃん、どうして私達の事を様づけで呼ぶの?」

「え? だって、蓮華様もアーネスト様も、地上の国王様よりも上の方ですよね?」

「「……」」


 あ、あー……そうか、そう言われればそうだった。

 外交問題とかそういうのにもなりかねないのか。


「えっと、それは間違ってないんだけど……そう! お忍び、お忍びで来ている時は関係ないんだよ!」

「そ、そうそう! 要は俺達が個人的に遊びに来ている時は、そういうの何の問題もないんだぜ!」


 私とアーネストがそう説明するも、


「よく分かりませんけど、蓮華様とアーネスト様ってダメですか……?」

「「……ぐぅっ……!」」


 そんな上目遣いに目を潤ませながら言うのは反則だと思う。

 ただでさえ小さくて猫耳でとても可愛いというのに。


「「ダメじゃないです」」


 そう言う事しか出来なかった。


「わぁい」


 とても可愛い笑顔を見せてくれたので、もう良いや。

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