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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第二章 大精霊編

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54.アリス現界する

 ヴィーとの契約が無事終わったので家に帰ってきた。

 家に帰ってきてからしばらくの間、母さんが引っ付いて離れなかったんだけど。

 それを見ていたミレニアは、げんなりしていたのだが……私に優しい表情をして言ってくれた。


「蓮華、今のマーガリンは確かに変だが、心よりお主が好きな事が分かる。まぁ、めんどうな奴かもしれぬが、こんな奴でも妾の親友でな。嫌わないでやってくれると助かる」


「大丈夫だよ、私も母さんの事は好きだから。ミレニアもね」


 そう、私はミレニアの事も好きになっていた。

 出会いこそ殺されかけたけど、その後からのミレニアを知れば知るほど、好きになったのだ。


「お主は……全く、そういう所が周りを魅了しておるのやもしれぬな」


 なんてよく分からない事を呟いていた。

 そういう所って言われても……。

 それから、ミレニアは帰ってしまった。

 泊まらないの?って聞いたけれど。


「また来る。蓮華が学園に行くまではな」


 と言って。


「なんでよー!私とロキだけの時だってきなさいよー!」


 って母さんが言ったら、ミレニアは笑って。


「もう1人、アーネストとやらにも会いたいのでな。学園が終わった後も、そう時をあけずに次は来るつもりじゃ」


 と言った。

 でも私が一番印象に残ったのが、その後の母さんの行動だ。


「そっか。……あ!ミレニア!ちょっと待って!」


 と言って、台所に行く母さん。

 ミレニアと一緒に、なんだろうと待っていると。


「これこれ!おみやげ♪」


 と言って、3個パックのヨーグルトを3つ、手渡した。

 いやね、これが普通のならまぁ、分かるんだけど。


「おいマーガリン。表紙の賞味期限が今日までなのじゃが?」


「ごめーん、忘れてて。食べて?」


「そんなものをお土産に手渡すでないわー!!」


「だってアーちゃんが居なくなっちゃって、消費が減ったんだもんー!」


「知るかー!!」



 このやり取りが忘れられない。

 まぁ、ミレニアはちゃんと持って帰ってくれたけど。


「母さん、アーネストそんなに食べてたの?」


 純粋に疑問だった。


「うん、アーちゃんはレンちゃんの3倍は色々と食べてたよー?」


 あいつめ、隠れて母さんにたかってたな。

 学園で会ったら説教してやる。


「まぁ、私が賞味期限を忘れてて、アーちゃんにぎりぎりのを食べて貰ってたんだけどね、あはは」


 すまんアーネスト、今度何か奢るよ。

 180度意見を変える私だった。

 それから毎日、学園に入る前に勉強を母さん、兄さんから受けている時に聞いていた事がある。


「ねぇ母さん、まだあの魔法は私に掛けたらダメなのかな?」


 そう、アリスちゃんの事だ。

 一日でも早く、アリスちゃんを外の世界に出してあげたい。

 だから、毎日できないか聞いている。

 というのも、私の精神を見て、以前のダメージが残ったままだと、できないと言うのだ。

 なので、毎日確認していた。

 すると今日は。


「……うん、もう大丈夫だね。これなら、レンちゃんも大丈夫」


 という言葉を聞けた。

 やった、やっとアリスちゃんをこの世界に戻してあげられる!


「アリスですか。また厄介な子が増えますねぇ」


 なんて兄さんが言う。


「厄介、なんですか兄さん?」


 という私の質問に、慌てて答える兄さん。


「あ、いや、そういう意味ではなくてですね。そうですね……蓮華に分かりやすく言うなら、アリスは加減ができないのですよ」


 あれ、どこかで聞いたセリフ。


「アリスは今の蓮華と遜色ない、どころか上の力を持っているでしょう。それが手加減される事なく降り注ぐと言えば、分かりますか?」


 うぇっ。

 もしかして、母さんが私とアーネストに手加減の修行をあんな鬼気迫る表情で言ってきたのって。

 母さんの方を見ると。


「……」


 私と目を合わせない。

 うん、確定だな。

 って事は、私はアリスちゃんをこの世界に戻せたら、アリスちゃんと修行する事になりそうだな。

 主に、アリスちゃんに手加減を覚えさせるという名目で。


「そ、それじゃレンちゃん、善は急げって言うし、早速やっちゃいましょ!一度リンクしてるから、あの子の結界も素通りできるし!」


 母さんが言う。

 あの子の結界ってなんだろう?

 まぁ、それよりも。


「ミレニアは呼ばなくて良いの?」

 

「アリスが現界できたら、呼べば良いよレンちゃん」


 その言葉に、それもそうかと納得する。

 まだ、確実とは言えないのだから。

 そして、母さんから魔法を掛けられる。

 どうやらこの魔法、対象に抱きつかなければならないらしく。

 だからあの時も、私に抱きついてきたみたい。

 ……本当かな?

 そして、意識が遠のいていく。


「……さん!蓮華さん!」


 呼び声に、意識がはっきりする。


「良かった。蓮華さん、まさかこんなに早くまた会えるなんて思わなかったよ」


 アリスちゃんが笑顔でそう言ってくれる。

 だから、理由を話した。

 これまでの経緯を。

 アリスちゃんは、感極まったように言う。


「そっか、良かったぁ。マーガリン、そう成ったんだね。そっか、そっかぁ」


 私には理解できない事なんだろうけど、アリスちゃんは喜んでるように見えたから、良しとする。


「蓮華さん、その事を伝える為に、また私とリンクしてくれたんだね。でもね、マーガリンから聞いていないかもしれないから言うけど、あんまり多用しちゃダメだよ。これは、精神と肉体を切り離す行為なんだからね」


 幽体離脱みたいなものだろうか?

 アリスちゃんが続ける。


「蓮華さんの体は、元々は違う体。そして精神は異世界の物。だからこそ、私にバイパスを繋げられたとも言うんだけど……下手をしたら、蓮華さんの体に、蓮華さんが戻れなくなるんだよ?それは、死ぬよりも辛い事なんだよ?永遠に、魂だけがさまよう事になるんだよ?」


 そう、悲しそうに言うアリスちゃん。

 だから、母さんはこの魔法を私に掛ける事に慎重だったのか。

 うん、でも、それを知っても。

 私はこの魔法を、掛けて貰っただろうな。


「そっか、気を付けるよ。でも、アリスちゃんがこれで外に出れるなら、安いものだよ」


 笑顔で伝える。


「もぅ、蓮華さんはそんなだから、周りの人をたらしこんじゃうんだよ?よく元の世界で独り身でいれたね?」


 なんてグサッと来る事を平気で言ってくれるアリスちゃんに苦笑を返す。

 だって、知り合えなかったんだもん。(言い訳)


「そ、それよりも、アリスちゃん、外には出れる?何か助けはいる?」


 と聞いてみる。

 何か助けが必要なら、先に聞いておきたかった。


「大丈夫だよ蓮華さん。私は大精霊と同じで、アストラル体だから。蓮華さんのように肉体を用意してくれたら、それに移る事も可能だけど……それは良いや!」


 なんて言ってくる。

 そっか、本人が望まない事をするつもりはない。


「それじゃ、何もする事はないんだね?」


「うん。だから蓮華さん、戻すね。次会う時は、“外”でね!」


 と笑って言ってくれるアリスちゃん。

 私も笑っている。

 そして、意識が遠のいていく。


「……!……!」


 意識が覚醒していく。

 目を開けたら、母さんに抱きつかれながら、私を呼んでいるアリスちゃんが居た。


「蓮華さん!ありがとう!」


 そして母さんに抱きつかれたまま、アリスちゃんも抱きついてきた。

 ぐはっ!流石に二人分の重さは耐えられない!

 後ろに倒れた私は、兄さんを見上げる。


「蓮華、流石に目の毒ですので、助けられませんよ?」


 なんて横を向く兄さん。

 ぎゃー!母さん、アリスちゃん!スカートが脱げてるから私!


「ちょ!母さん!アリスちゃん!離れてぇぇ!」


 なんて私の叫びが木霊した。

 そして数分後、落ち着いた私達。


「もうマーガリン、何度もお礼は聞いたから、良いってばぁ」


「だって、だってアリス!私は、私はぁ……!」


 落ち着いてなかった。

 今も母さんは、アリスちゃんにお礼と謝罪を続けている。

 兄さんもやれやれといった表情でそれを見ているが、何も言わなかった。


「そだ蓮華さん、これから私、この家に厄介になっても大丈夫かな?」


 なんて聞いてくる。

 なんで私に聞くのだろう?


「え?私じゃなくて、母さんに聞かないの?聞かなくても答えは分かるけど」


 うん、母さんが嫌なんて言うわけがない。


「うん、それは分かってるよ。だから、蓮華さんに聞いたの」


 そういう事か。

 人を思いやれる、良い子だなアリスちゃん。


「そっか。なら、大歓迎と言わせてもらうよアリスちゃん」


 そう笑顔で言った。

 その言葉を聞いたアリスちゃんが、兄さんに言う。


「ほらね?蓮華さんは良いって言ったよ?」


 その言葉に、やれやれといった風に兄さんが答える。


「分かりました、分かりましたよ。蓮華がそう言うのなら、我慢しましょう。私の一室を空けますから、そこを利用なさい」


「わーい!ありがとロキ!」


 という話を聞いて、そういえばアリスちゃんは兄さんとも知り合いなのかと思う。

 ひょっとして、母さんと同じですっごい年上なのでは……。

 なら、アリスちゃん、なんて呼んだら失礼なのでは。

 と考えていると。


「蓮華さん、私の事はアリスちゃんって呼んでくれたら嬉しいな!」


 って言われた。

 そんなに顔に出ていただろうか?

 だから、答える。


「うん、ありがとうアリスちゃん。これから、よろしくね」


 その言葉に。


「うん!」


 と元気一杯に応えてくれるアリスちゃん。

 童話の中に出てくる、アリスそっくりのアリスちゃんは、とても可愛らしかった。


「そ、そうなの?それじゃ私もアリスちゃんって呼ぼうかしら……?」


 なんて母さんが呟いたのだが、アリスちゃんは。


「マーガリンはアリスで良いよ」


 と速攻の返事で、母さんは項垂れていた。

 アリスちゃん、なんで?と思っていたら。


「私の事をアリスちゃんって呼んで良いのは、蓮華さんだけだよ!」


 って可愛らしい笑顔で言ってくれた。

 ううん、なんでか分からないけど、アリスちゃんがそれで良いなら良いか。

 頭を撫でる。

 アリスちゃんは気持ちよさそうに笑顔でいる。

 うん、良いな、こういうの。

 こうして、我が家に一人、家族が増えた。


 ドサッ!


「母さん!?」


 突然母さんが倒れて、焦る。

 でもアリスちゃんが制する。


「大丈夫、気絶しただけだよ。ベッドに運んであげるから、場所を教えて蓮華さん」


 その焦りのない言葉に、自分の心も落ち着いていくのが分かる。

 アリスちゃんと一緒に母さんを運ぼうとしたのだが。


「少しは兄を頼って良いのですよ蓮華」


 と言って、兄さんが魔法で母さんを運ぶ。

 素直じゃないよね、兄さんは。

 でもその姿を見て、アリスちゃんは驚いている。


「ど、どうしたのロキ。ロキがマーガリンに手を貸すなんて、天変地異が起こるんじゃないの?」


 なんて言っている。

 そんな馬鹿な。


「フ、私はこれでもマーガリン……師匠に感謝をしていましてね。その事に比べたら、この程度の事はなんともありませんよ」


 と言って2階へ上がる兄さん。

 その後ろ姿を見て。


「そっか、変わったのねロキ」


 なんてアリスちゃんは呟いていた。  



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