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88話.四凶の信徒達を滅する

「ぐぁぁぁっ! 唯一魔王リンスレットの犬めが……災い、あれ……!」

「黙って死ね」


 心臓に刺した刃を捻り、そのまま左へと振り抜く。


「がっ……は……」


 血を吹き出し、その男は地面へと倒れた。


「兄さん、終わったよ」


 後ろを振り向いた先には、同じように刃を振り抜いた男が居た。


「おう、ご苦労だったなゼロ。こっちも終わりだ」


 そう言ってゼロの元へ歩いてくる男は、タカヒロ。

 ソロモンから連絡を受けて向かった先。

 そこには、魔界で禁忌とされている邪神を崇拝する教団に属する者達が集っていた。

 魔族を贄に捧げ、魂を集め、邪神を復活させる事を目論む集団だ。


四凶しきょうの一柱、「渾敦こんとん」を崇める集団だったようだ。僕が言えた事ではないが、馬鹿な事を考えるものだな」


 そう言いながら、分厚い本をテーブルに置くのは、タカヒロに連絡を送ったソロモンだった。


「兄さん、四凶って?」

「ああ、ゼロは初めて聞くか。四凶ってのは、大きな犬の姿をした「渾敦」、羊身人面で目がわきの下にある「饕餮とうてつ」、翼の生えた虎「窮奇きゅうき」、人面虎足で猪の牙を持つ「檮杌とうごつ」って悪神達の事でな。遠い昔、俺達がまだ生きても居ない神の時代に、封印された神達の事だ。邪神とも言われてる」

「封印……つまり、かなり強い神って事?」

「そうだな。リンスレットくらいじゃないと相手にならないかもしれないな。俺も実際に見た事あるわけじゃないから、分からんが。ソロモンなら知ってるか?」

「いや、僕も実際に見た事があるわけじゃない。ただ、その存在が許されない程度には、力のある神なのだろう」


 ソロモンが腕を組みながらそう言うのを、二人は黙って聞いていた。

 気を取り直すように、タカヒロは言った。


「よし。とりあえずここは焼き払うか。死体もついでに消しておきたいしな」

「了解、兄さん」

「僕はこのまま次の教団を探しに行く。任せても良いか?」

「それは構わないが……リンスレット達の所に一旦帰らなくて良いのか? アスモデウスも居るぞ?」

「っ……」


 アスモデウスという言葉に、一瞬たじろぐソロモン。

 彼は、アスモデウスの事が今でも好きだったからだ。

 だが……


「……いや、僕は贖罪(しょくざい)を続ける。こんな事くらいでしか、僕は恩を返せない」


 過去に犯した過ちを、ソロモンは悔いていた。

 その罪を償う為、率先して「悪」を裁く為行動している。


「ソロモン。俺は話を聞いただけだから、俺の言葉は軽く聞こえるかもしれないが……俺はもうお前もダチだと思ってる。だから、何か手助けが必要な時は遠慮なく言えよ?」

「……ああ、ありがとう。それじゃ、ここは任せる」

「おう、また見つけたら連絡してくれ」


 その言葉に微笑みを返し、ソロモンは姿を消した。


「さて、燃やしてくぞゼロ」

「了解、兄さん」


 二人の魔法が爆発を起こす。

 元々あった物は燃え、物言わぬ者も、その炎に焼かれていくのだった。


 その光景を、遠くから見ている者達が居た。


「魔王リンスレットの配下達か、やはり強いな」

「ああ。だが、勝てないという事もない」

「各個撃破ならば可能性はある、か」

「やるか?」

「……ああ」


 二人の悪魔が、真剣な表情でそう言う。


「「ぐふ……」」

「なんだこいつら……?」

「随分と弱い悪魔だったね兄さん……」


 教団の跡地を出たタカヒロとゼロの元へ現れ襲い掛かった悪魔達は、一瞬で地面に伏していた。


「お、こいつら「渾敦」の信者だな。肩に犬のタトゥーしてるのを隠しもしてないのか。ついでに処理しておくぞ」

「任せて兄さん」

「おう、頼んだ」

「「ヒィッ」」


 そうして、「渾敦」を崇める集団のアジトは潰れた。

 魔界には様々な神を崇める者達がおり、それ自体は禁止されてはいない。

 だが、中には実際に命を奪い、魂を捧げ、封印を解こうとする者達が現れる。


 唯一魔王リンスレットに対する妬み、嫉妬等の気持ちから、自身では立ち向かえない為他者に(すが)る者達だ。

 こういった者達を粛正する役目をタカヒロは負っていた。

 俗に言う暗部を率いていたのだが、自分に何かあった時の為に、ゼロに引継ぎを行っている。


「初めて会った時は、カタコトだし……ノルンが弟にするって言うからってノリだけだったんだが……時の世界で長く生活を共にするうちに情も湧いたし、今ではすっかり弟だしな」

「え? 何か言った兄さん?」

「いや、何でもないぞ。旅館に戻って、露天風呂にでも入ってさっぱりしようぜ」

「うん、兄さん!」


 そうして二人は仕事を終らせてリンスレットの元へと帰還するのだった。

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