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82話.プレゼントを用意しよう

 オリンピックの件について、今後の話はリオンさんを筆頭に続けていく事になった。

 どんな内容にするかや、開催期間、行事の流れ等々、決めなければならない事は多々ある。

 そもそもの話、妖怪の国と妖精国の存在を知らない人達の方が多いわけで、その事を周知させるだけでも一騒動起こると思う。

 まぁそこは母さんの存在が大きいので、すぐに収まるだろうけど。


 地上の王様達や魔界のリンスレットさんとも予定を合わせて話し合う為、その仲立ちは母さんがしてくれる事になった。

 まぁ地上は母さんの権力だけじゃなく、母さんという存在自体に敬意を払ってるのが分かってるので大丈夫だし、魔界もリンスレットさんと母さんは仲が良い。

 母さん以上の適任者は居ないと思う。


 私とアーネストは内容の草案を出して、その案のルール等を紙へと書く作業だけしておいた。

 幹部の妖怪の皆さんには口頭でも説明してね。

 勿論今回全部開催する必要は無い事も伝えている。


 地上には転生者も多いので、私の元居た世界のオリンピックを知っている人だって居るだろう。

 ただ、何もかも同じにする必要は無いし、むしろそういう行事があったというだけで、オリジナルにした方が良いと思う。

 オリンピックは仮称である事も伝えているし、独自の名前をつけてくれるだろう。

 なんでも私とアーネストで決めてしまうと、元の世界に引きずられがちなので、あくまでも提案レベルで済ませておいた。


 そうして私達に出来る事は終わった後家へと帰ると、兄さんが珍しく家の入口でウロウロしていた。


「アーネスト、蓮華! 良かった、無事でしたか……! おや、マーガリンはどうしたのです?」

「「!!」」


 そういえば、兄さんへの報告を完全に忘れてたー!


「いつもそうだけど、自然に私を含めないのやめてよね!?」


 こっちもアリス姉さんが憤慨していたけれど。

 私とアーネストは揃って謝りながら事情を説明した。


「そうでしたか。いえ、二人が無事なら構いませんよ」


 そう言って微笑む兄さんがイケメンすぎる。


「兄貴、見た目だけじゃなくて性格もイケメンすぎだろ……いや知ってたけど」

「うん、知ってた」


 私達がボソッと話しているのを聞こえているのか聞こえていないのか、首を傾げる姿まで美しい。


「疲れたでしょう、今飲み物を用意しましょう。さ、中に入って座っていなさい」

「「はーい」」

「ロキー! 私の分も用意してくれるんでしょうねー!?」

「流石にそこでハブるような真似はしませんよ。二人に怒られるでしょう」

「基準がやっぱりそこかー! 知ってたけどー!」


 プリプリと怒っているアリス姉さんに、くつくつと笑いながら台所へと歩いていく兄さん。

 ホント兄さんとアリス姉さんは仲が良いのか悪いのか。


「全くもう、ロキはいっつも意地悪なんだからー!」


 私の横にボスンと音を立てて座るアリス姉さんは、頬をぷくーと膨らませながらそう言う。

 そんなアリス姉さんが可愛くて、つい頭を撫でてしまう。

 そうすると嬉しそうな表情をして笑ってくれた後、


「私は蓮華さんのお姉さんなんだからねー!?」


 と慌てて頭をフルフルと揺らして手を除ける。


「お、なら兄の俺は自然なわけだ」


 そう言ってアーネストが頭を撫でると、


「そうだけどそうじゃなくってー!?」

「「はは!」」


 私とアーネストは揃って笑う。

 そんな事をしているうちに、兄さんがトレイに飲み物を乗せてこちらへとやってきた。


「楽しそうですねアーネスト、蓮華。疲労回復の魔法も掛けておきましたから、これを飲んでゆっくり休みなさい」


 そう言いなら、私とアーネストの前にグラスを置いてくれる。

 ちゃんとアリス姉さんの前にも置いてた。


「ぷはー! 美味しい、もう一杯!」


 ごきゅごきゅと一気飲みした後、どこぞの青汁みたいな宣伝の言葉を言ったアリス姉さんに思わず笑ってしまったのは許して欲しい。

 のんびりとした時間が過ぎる中で、アーネストがふいに言う。


「そういや蓮華、リンスレットさんへのプレゼントだけどよ。俺達も何か用意した方がよくね?」

「あー……そういえばそうだな。あれはノルンのプレゼントなわけだし。って言っても、リンスレットさんが喜びそうな物なんて想像つかないぞ?」

「そうなんだよなぁ。なぁアリス、リンスレットさんが好きなものって知ってるか?」

「リンスレットの好物? 確かリンゴが好きだったと思うよ?」


 おおう、なんか木を背にリンゴをかじってる絵になるリンスレットさんの姿がイメージ出来てしまった。


「いや好物じゃなくてな。なんでも食べ物に繋げんなよアリス……」

「え、えへへ。でもプレゼントって、食べ物だって嬉しいものだよー?」

「まぁ、そりゃそうなんだけどよ。どうせなら形が残る物の方が良くないか?」


 アリス姉さんの言い分も、アーネストの言い分も分かる。

 好きな食べ物を貰っても嬉しいだろうし、形に残る物もその日の事を思い出せて何度も嬉しいんだよね。


「というかなんでリンスレットにプレゼント?」


 コテン、と首を傾げるアリス姉さんが大変可愛いです。

 いやそうじゃなくて。理由を簡単にアリス姉さんに説明すると、


「ああ、だから前に誕生日聞いてきたんだねー」


 と納得してくれた。

 ここでそれまで話を聞いていた兄さんが口を開いた。


「ふむ、我々神々は貢物には慣れている者が多く、それを当然と思う者が多数ですが……リンスレットはそもそも、貢物を受け取らない事で有名な神でしたからね。果たして受け取るでしょうか」

「「!!」」


 それは予想外だった。そうか、プレゼントしたからって、受け取って貰えるとは限らない、のか。


「んー、大丈夫じゃないかなぁ。蓮華さんとアーくんなら」

「フ……それもそうですね。むしろアーネストと蓮華のプレゼントを受け取らないなど、万死に値しますからね」


 なんか兄さんが怖い事言ってる。他の人に対してならまだしも、いやそれも怖いんだけど。

 リンスレットさんに対してだと意味合いが変わってくる。

 世界が滅茶苦茶になりそうな予感が酷い。


「ま、受け取って貰えるかは別として、用意はしようぜ。ノルンが渡した後に、俺達もって流れでさ」

「そうだな、そうするか。アーネストは何か物にするなら、私はリンゴでも買ってこようかな」

「あ、お前手軽にしやがったな」

「ちゃんと美味しそうなの厳選するつもりだよ?」

「そういう意味じゃねぇよ!」


 物だと分からないので逃げたのは正しいけどね。

 丁寧にラッピングしてもらってから、アイテムポーチに入れておこう。


「それじゃ帰ってすぐだけど、買い物に出かけよっか」

「おう、そうすっかね」


 そうして立ち上がると、兄さんに呼び止められる。


「待ちなさいアーネスト、蓮華」

「「?」」

「認識阻害の魔法を掛け忘れないように気を付けなさい」

「「あ」」


 危ない危ない、またそのまま行くところだったよ。

 迂闊なのはアーネストも一緒だけど、本当に私達は同じところでミスしてしまうので、二人居ても足しにならない不思議。


「ロキー。マーガリンが帰って来たら、買い物に行ってるって伝えておいてねー」

「貴女は今回留守番です」

「え?」

「今回は私が二人と行きます」

「「「ええ!?」」」


 アリス姉さんだけじゃなく、私も驚いた。

 だって、兄さんが行くとか珍しいにも程がある。


「少し、確かめておきたい事がありましてね。地上に出る用事があったのですよ」


 そう言う兄さんに、成程と思う。

 要するに買い物はついでというわけだからね。


「それでも、兄さんと一緒は嬉しいね。アリス姉さん、また今度買い物行こうね」

「うー……了解だよー。まぁ裏世界一緒に行ったし、我慢するけどー」


 不満なのがすぐに分かるけど、渋々了承するアリス姉さんに、アーネストと顔を見合わせて苦笑する。


「それじゃ行こっかアーネスト、兄さん」

「おう!」

「ええ。国は指定しても構いませんか蓮華」

「勿論」


 そうして、珍しく兄さんと一緒に買い物へと出かけた。

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