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75話.次元刀回収(一瞬)

 二人の縄を解いた後、ダイダラボッチさんは頭を下げてから、南へと歩いて行った。

 ダイダラボッチさんは家を持たず、色々な所を旅してまわっているのだそうだ。

 軽く手を振ると、ニコリと笑って手を振り返してくれた。


 それからリオンさんの部屋へと通された私達は、百鬼夜行のヨルさんを紹介された。

 口数の少ないクールな印象を受けたけど、私を見るとリオンさんの後ろへと隠れた。

 何故かと聞いたら、私の魔力が大渦のように感じて怖い、と。


 地味にショックを受ける私をアーネストが笑うので、肘鉄しておいた。

 苦しがるアーネストを見てヨルさんも多少表情が優しくなった気がした。

 その後、ヨルさんはまだ眠たいようで、ベッドに横たわり眠ってしまった。

 リオンさんがゴホンと咳払いをした後、本題に入る。


「さて、オリンピックの話を進める前に、解決しなきゃならねぇ事がある。酒呑、次元刀は全部で何本売ったんだ?」

「あぁ? 俺がだたらから買ったのは百八本だ。残りが確か十本だったか伊吹」

「そだよー。ほいっと」


 ガチャガチャと刀が何もない空間から落ちてきた。

 あれもアイテムポーチのような感じだろうか。


「これで全部だし。一本十万銭で売ったから、回収するなら同じ額以上にした方が良いかも」

「可哀想だけど、今すぐ全部回収させて貰うわよ? 何か文句言ってきた妖怪に返すと良いんじゃないかしら?」

「「「「え?」」」」


 伊吹童子さんの言葉に、母さんが滅茶苦茶な事を言ったと同時に、部屋の上空から刀がたくさん落ちてきた。


「どわぁっ! 危ねぇっ! これ鞘がねぇのもあるじゃねぇか!?」

「今まさに使ってた妖怪が居たみたいね。ある種の緊急事態だからね。いちいち一本一本回収する時間が勿体ないわ。魔法ってなんでも出来るから魔法って言うんだよー」


 うん、それは母さんだけじゃないかな。

 少なくとも私にはそんな魔法使えませんけど。

 皆が呆気に取られている中、リオンさんが笑い出した。


「ははっ! ははははっ! 相変わらずすげぇなぁマーガリンは。お前が来てくれて本当に助かった。ありがとう、マーガリン」

「良いのよ、乗り掛かった舟ってやつよ。アーちゃんとレンちゃんと合流できたから、急いで帰る必要もなくなったからね。二人も予定はないよね? それなら良い機会だし、城下町を一緒に散策しない?」


 母さんの提案に、私はアーネストと顔を見合わせて頷く。

 ノルンとのリンスレットさんへの誕生日プレゼントサプライズの日まで、まだ後四日ある。

 ついでにノルンやタカヒロさん、ゼロにこの世界でお土産を買うのも良いかもしれない。


「うん、大丈夫だよ母さん」

「ああ、俺も大丈夫」

「アリスも良いわよね?」

「もちのロンだよ! 蓮華さんとアーくんが行くところ私ありなんだからねっ!」


 ニコニコと笑うアリス姉さんは、とても楽しそうだ。


「あー、こんな規格外な奴が居たんじゃ、そりゃ敵わねぇわけだな。ったく、斉天大聖(せいてんたいせい)の野郎が知ったら、嬉々として挑みそうだな」


 頭の後ろに手を回し、ポリポリとかきながら酒呑童子さんがそう言う。

 せいてんたいせい? 確か孫悟空、だっけ? この世界でもそうなのかは分からないけれど。


「オリンピックを開いたら、絶対来るんじゃない?」

「あー、そうだな」


 伊吹童子さんと酒吞童子さんは顔を見合わせながら、頷いていた。

 知り合いなのかな?


「そうだ母さん。オリンピックなんだけど、どうせなら妖怪の国だけじゃなくて、地上や魔界も合わせるのはどうかな?」

「え?」


 母さんが素で驚いた顔をする。母さんのこんな顔は珍しい。

 でもね、オリンピックって元々、国を超えて色々な人達が集まって競うものだったから。

 私やアーネストからしたら、そっちが当たり前で。


 多分ここに居る皆は、妖怪達だけでのオリンピックを考えていたんだろうけど……それはオリンピックじゃないと思うんだよね。


「うーん、それだとモルガンの許可が必要ね」

「そうだな」

「どうしてそこでモルガンさんが?」

「だって、この世界を創って保たせているのはモルガンだから」

「「!?」」


 母さんの言葉に私とアーネストは衝撃を受けた。

 それってもしかして、創造神って事!?


「あ、ちなみに創造神じゃないよ。創成魔法を使ってはいるけれどね。創造魔法とはちょっと違うんだけど、モルガンのオリジナル魔法でね。私もあの魔法は使うの無理かなー、ややこしすぎるのよね」


 母さんでも無理な魔法!?

 モルガンさんって、どれだけ凄いんだ!?


「ま、丁度良い機会かしらね。来いって招待も受けているわけだし、明日にでも私達四人で行きましょうか」

「了解!」

「まぁ母さんが居るなら大丈夫か……」


 アーネストは少し不安そうだったが、それでも了承した。


「それじゃ、地上と魔界も含めた場合と、妖怪達だけの場合で二通り考えておくか。酒吞、それに伊吹童子。お前らを皆に紹介してから、早速会議といくぜ」

「おう」

「あいあいー。あと、リオンも伊吹で良いよ。酒呑を酒呑って呼んでるのに、私だけフルネームはおかしいっしょー」

「はは、分かった。それじゃ俺達はこれで仕事に戻るぜ。お前達は自由にしてくれ。あ、でもそっちの案やらルールやら、詳しい話をしてくれる奴が居てくれると助かるんだが……」


 リオンさんは言い難そうにそう言うと、アーネストが前に出た。


「オッケー。ならその役目は俺がするぜ。モルガンの方は俺が行かなくても別に問題ねぇだろうし」

「こちらとしては助かるが、良いのか?」

「ああ、構わねぇよ。それに、なんつーのかな……あのモルガンっての、ヤバイ気がすんだよ。見てるだけで魅了されちまいそうな、変な気分になったんだ。だから、あんま近づきたくねぇんだよな」


 私はそんな事はなかったけれど、アーネストは違ったようだ。

 何故だろう?


「あぁ、モルガンの常時効果のある魅了は、男性特効だからねー。アーちゃんは対魔力結構高いんだけど、それでも防ぎきれない感じかー。その点もモルガンと話さないとだねぇ」


 母さんが一人うんうんと頷いている。

 常時発動型の魅了って、厄介極まりないね。


「ま、とりあえず今日は城下町を見て周って、楽しみましょ! リオン、今日も部屋借りても良いわよね?」

「勿論だぜ! いくらでも泊って行ってくれ!」

「いや、今日だけで良いわよ」


 母さんの素の返事に、リオンさんは苦笑している。

 そういえば、床に転がっている次元刀はどうするのかな?


「母さん、次元刀なんだけど……」

「おっと、そうだったわね。リオン、これを創った刀鍛冶の妖怪の居場所知ってるわよね?」

「おう。地図要るか?」

「一度見せてくれたらそれで良いわ。今回は私が対応しておいてあげるけど、後でリオンも直接話しておきなさいよ」

「了解だ。何から何まですまねぇな」

「良いのよ、また今度返してもらうから」

「はは。俺に出来る事ならなんでもするぜ」


 二人は笑いあい、共に背を向けて歩き出した。


「行くぜ酒吞、伊吹」

「おう」

「あいあいー」

「行きましょうか」

「はーい」

「妖怪の街か、ちょっと楽しみだな蓮華」

「どんなお菓子売ってるかなぁ!」


 三者三様に、部屋から出て行く。

 私も少し見て周るのが楽しみだったりする。

 遅れないように母さんの後に続くのだった。

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