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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第五章 スローライフ編

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74話.オリンピックの提案

 ダイダラボッチさんから詳しい話を聞く為に、広い庭へと移動する。

 流石に山より大きいダイダラボッチさんは、お城の中へは入れない。

 妖怪用なのか、出入り口はかなり大きく作られていたけれど、それでも入るのは無理だろう。


 なんせ私達が結構な距離歩いても、ダイダラボッチさんは一歩なんだから。

 城の城壁を一歩で超え、庭へと更に一歩でついてしまう。

 歩幅が圧倒的すぎる。


 ダイダラボッチさんを見上げると、こちらの視線に気付いたようで、とても優しい笑顔を向けてくれる。

 先程刀を振るって暴れていた姿からはとても想像の出来ない、穏やかな表情だった。

 私も笑顔で返した所で、ふと気になった事があった。


 ダイダラボッチさんの心臓部に、何か紫色の液のようなものが付着している。

 元からの可能性もあるし、先を歩く母さんへと聞いてみる事にした。


「ねぇ母さん」

「なーにレンちゃん」

「ダイダラボッチさんの心臓の辺り、見てもらっていい?」

「うん? ありゃ、呪いが掛かってるわね。よく気付いたねレンちゃん」

「たまたまだけどね。解除出来るかな?」

「簡単簡単。ほいっと」


 母さんが指先をパチンと鳴らす。

 すると、ダイダラボッチさんの心臓部にあった紫色の液は、綺麗になくなった。


「流石母さん」

「ふふん、もっと誉めても良いんだよー」


 どやぁと胸を張る母さんに笑う。

 本当に凄いし、母さんなら威張っても良いと思うけどね。

 だけど母さんが冗談で言っているのは知っている。

 だって、笑って見てたら母さんも照れて顔を赤くしてたから。


「何の呪いだったの?」

「狂戦士化の呪いかなー。見境なく暴れ出すみたいな」

「うげ。ダイダラボッチさんが暴れたら、被害が凄くなりそうだね」

「そだねー。まぁ、私達が居なかったとしてもリオンが居るし、鎮圧は出来ただろうけどねー」


 母さんと話しながら、ダイダラボッチさんとリオンさんが話している庭園へと辿り着く。

 アーネストは城のあちこちを見て周っているようで、アリス姉さんもそれに追従している。


「おう来たかマーガリン。それにアリスティア、蓮華、アーネスト。もう一度礼を言わせてくれ、ありがとう」


 そう言って頭を下げるリオンさん。

 王様って頭を軽々しく下げちゃいけないって聞いた事がある。

 母さんと古い友達であるリオンさんが、それを知らないはずがない。

 だから本当に、心から感謝しているって事が伝わってくる。


 それから、ダイダラボッチさんから次元刀を手にした経緯を話してもらった。


「オデ、シュテンドウジサマ、カラ、ウッテモラッタダ」


 ダイダラボッチさんが言うには、酒吞童子という妖怪から、身を守る武器として買わないかと話を持ち掛けられたらしい。

 その体の大きさから、自身に合う武器を持つことが出来なかった。

 それが、この次元刀であれば、持ち主の力に合わせてその大きさを変化させる事が出来ると聞いて、購入させてもらったのだと。


 ただ、それを手にした瞬間、意識が無くなり……気付いたら、城の前で刀を振るっていた。

 止めようとしても体が言う事をきかず、どうしたら良いのか分からない時にリオンさんや私達が来てくれたと。


 その話を聞いて、リオンさんは何か思う所があったようで、「成程な……」と言って頷いた。


「リオン、さっきレンちゃんが気付いたんだけどね。ダイダラボッチの寄生虫が居た場所に、時間を置いて狂化する呪いが掛かっていたわ」

「……やはりか。つまり、俺の評判を下げようって考えたわけだな。ダイダラボッチは、利用されたわけか……すまねぇ、ダイダラボッチ」


 悔しそうなリオンさんに、ダイダラボッチさんは慌ててそれを否定する。


「リオンサマ、アヤマラナイデクダセェ! オデ、オデタチヲイツモ、イツモマモッテクレル、リオンサマ。オデタチ、イツモ、カンシャ、シテマスダッ……!」

「ダイダラボッチ……」


 ダイダラボッチさんの心は、想いは、私にも伝わってくる。

 カタコトながらも、必死に伝えようとしている言葉。それが本気であればあるほど、こんなにも心に届くのだと思った。

 リオンさんも目に少し涙を浮かべながら


「ありがとうよ……」


 そう言って涙をぬぐった。


「で、どうする? 落とし前、つけに行く?」

「いや、証拠がねぇからな。勿論ダイダラボッチの言葉を疑ってなんていねぇが……」

「そう? なら、本人達から話を聞く?」

「は? マーガリン、そりゃどういう……」

「昔から言うじゃない。犯人は現場に戻るって」


 母さん、それこっちの世界の言葉じゃない。

 案の定、リオンさんも頭に疑問符を浮かべている。


「寄生虫の後に呪いが掛かっていた事から、きっとこれを企てた奴らは王都の近くに来るはずよ。というかすでに着てるわね、私の探知魔法に新たに加わった妖力反応が二つあるから。多分こいつらでしょ」


 さ、流石母さん。私じゃきっと区別つかない。


「ま、当てが外れてダイダラボッチが暴れ出さないから、どうなっているのか疑問に感じ始めた所じゃないかしら。今ならすぐに拘束してつれてこれるわよ? 私がここに居るのは偶々だし、利用しても構わないわよリオン」


 片目を閉じてそう言う母さんは、茶目っ気がありながらもとても綺麗で。

 リオンさんは苦笑しながら、「頼む」と言った。

 その十秒後には、芋虫のように縄でグルグル巻きにされた二人が、地面に転がって登場した。


「のわー! なんっじゃこりゃぁ!? おわ! リオンッ!?」

「ちょっとぉー!? なんなのこれぇ!?」

「つれてきたわよリオン」

「なんつーか、流石だなマーガリン……」

「「最凶魔女マーガリンッ!?」」


 なんか、面白い呼び名で母さんが呼ばれた気がする。

 後ろでアーネストが「ぶはっ」って吹き出したのを母さんが見て、ワナワナと震えだした。


「うん、貴方達私刑」

「「ヒィッ!?」」

「まままま待てマーガリン! 落ち着けっ!」


 容疑者? をそのまま消そうとする母さんを、慌ててリオンさんが止める。

 それから二人に話を聞く事になった。

 勿論二人は転がされたままである。


「酒呑童子、なんでこんな真似をした?」

「あぁ? 俺がなんかやったって証拠でもあんのかよ?」

「あるわよ? なんなら、魔法でダイダラボッチと話していた時の時間を再現してあげましょうか? 本人達が居るなら、記憶から辿れるわよ?」

「ぐっ……」


 凄い、母さんが居たら探偵って職業が廃業になってしまうんじゃないか。

 だって、魔法で当時を再現出来てしまうんだから。

 酒呑童子は観念したのか、淡々と話し始めた。


「俺は、お前の統治が気に入らなかった」

「……」

「リオン、お前個人の事は俺は気に入ってんだ。だけどよ、妖怪達は皆、本来自由であるべきだろ。戦いだってそうだ。お前の統治は、甘すぎるんだよっ!」

「酒呑の言う通りだよっ! 妖怪達は基本的に暴れるのが大好きなんだよっ! あーしだって戦いたい! 自分の力を誇示したいっ! だけどリオンの統治だと、力ある妖怪ほど住みにくいっ!」

「……俺は、弱者を守る為の国にしてぇ。それは、そんなにいけない事なのか?」

「そうは思わねぇよっ! だけどよっ! 俺達の力は、それじゃ何の為にあんだよリオンッ!」


 リオンさんは押し黙る。

 争いの無い国、それは全体的に見れば良い事ではある。だけど、力を持った者からすれば、退屈なのかもしれない。

 なら……


「ちょっと、良いかな?」

「あぁ? なんだお前は」

「今は私の事は良いんだ。それよりも、酒呑童子さんは、力を発揮する場所が欲しい、んだよね?」

「ああ、まぁ端的に言えばな」

「なら、妖魔界でオリンピックを開催するのはどうだろう?」

「「「「オリンピック?」」」」


 アーネスト以外の皆の目が点になる。

 そりゃ知らないよね。

 争いじゃなく、競う事。

 実力の高い者は称賛を得られるし、力も存分に発揮できてストレスも減るんじゃないだろうか。

 私の元居た世界でのオリンピックについて、皆に説明する。


「成程、オリンピックか……良いじゃねぇか、それっ! なぁ酒呑童子、オリンピックじゃダメか? 定期的に開催してよ、それで妖怪の国を一緒に盛り立ててくれねぇか?」

「リオン……。チッ……しゃぁねぇ! それで手を打ってやる! 俺も伊吹も、力を発揮できる場があるならそれで文句はねぇ! 当然、お前も出ろよリオン?」

「あーしも酒呑が良いなら! それに、そのオリンピック? なら、酒呑とも競えるわけっしょ? あーし楽しみだし!」


 まだ床に転がったままの二人は、笑い出した。

 見た目がとてもシュールだけど、話は上手くまとまりそうだね。


「だが、それとこれとは別で、お前らには罰が必要な事は分かってるな?」

「おう」

「うん……」

「まず、ダイダラボッチに謝れ!」

「すまなかったな、ダイダラボッチ」

「ごめんし、ダイダラボッチ」

「イ、イヤ、オデハ、モウキニシテナイダヨ! リオンサマガユルシタナラ、オデモユルスダヨ!」


 そう笑うダイダラボッチさんは、本当に優しい妖怪だと思う。


「そして次に、お前らは俺の城でこれから一緒に暮らす事だ! 正確には、オリンピック開催に向けて、協力してもらう!」

「!! それは罰になってんのかリオン?」

「にしし、それはこっちからやりたいことだし」

「良いんだよ! 俺には、俺に忠実な部下しか居なくてよ。俺が言った事を否定しねぇ奴しかいねぇんだ。だからよ……俺が間違ってたら、それを止めてくれる友が傍に居て欲しいんだ。頼む酒呑童子、いや酒呑!」


 そう真剣な表情で告げるリオンさんに、酒呑童子さんは笑った。


「ククッ……! ったく、そんなこっぱずかしい事をよくも照れもせず言えるもんだ。……良いぜ、厄介な奴を傍に置いたと後悔すんなよリオン」

「にししし! 酒呑にはあーしがついてるかんね!」


 そう笑う二人に、リオンさんも笑う。

 そこへ、アーネストがそろそろ我慢が出来なくなったのか、口を挟んだ。


「なぁ、話がまとまってきたなら、そろそろほどいてやらねぇ? なんつーか、縄でグルグル巻きにされてる二人と真剣に会話してるリオンさんの絵面が面白すぎて、正直話が頭に入ってこねぇ」


 それを聞いた三人は、今の状況を客観的にようやく見たのか、顔が真っ赤になった。


「ぐっ……マーガリン、お前知っててそのままにしてたな……?」

「だってアーちゃんに私笑われたもーん」


 まだ根に持ってたのね母さん。

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