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68話.妖怪⑤

「「ガタガタブルブル……」」


 体を寄せ合って震えている妖怪の二人。

 アリス姉さんに四肢を粉砕してもらって、それを治癒する事数回。

 結構早くに口を割った気がする。


 それから得られた情報。


 一つ、次元に亀裂を作っている妖怪は特定の妖怪ではなく、次元刀と呼ばれる刀を持っている妖怪が行っている。

 これはその名の通り次元を斬り裂ける力を持った刀で、誰が扱っても次元を裂く事ができる。

 そしてその次元刀を売った大妖怪が居る。


 一つ、その大妖怪の名は酒呑童子。鬼の大妖怪で、妖怪のクラスはそれぞれ低級、下級、中級、上級、特級とされている中で、上級に位置する妖怪らしい。

 大妖怪とは、上級以上のクラスの妖怪を指す言葉なのだそうだ。


 そして最後にもう一つ、次元刀を作った妖怪の名は一本だたらと言うらしい。

 この妖怪は様々な武器を作る事に長けていて、次元刀もその作品の一つらしく、それを見初めた大妖怪である酒呑童子が複数買って色々な妖怪に売ったのだそうだ。

 俗に言う転売ヤーだね。


 それ以上は何も知らないとの事で、最後の質問をする。


「最後に、君達は人を食べた事は?」

「「て、天地神明に誓ってありませんっ!」」

「はいダウト。久しぶりに食べれる、そう言ってたよね。つまり、食べた事があるんでしょ?」

「「っ!?」」


 私はソウルを構える。殺された人達の無念を、少しでも晴らしてあげないとね。


「おらぁっ!」

「「ギャァァァァッ!!」」


 私が斬る前に、アーネストがネセルで両断する。

 斬られた妖怪はまるでゲームのように煙となって消え、死体が残らなかった。


「こんな奴らの事でお前が気負う必要ねぇよ」


 ネセルをブンっと振り、アイテムポーチへと仕舞うアーネスト。

 こいつなりに私を気遣ってくれたんだろう。


「ありがとアーネスト。にしても、不特定多数の妖怪が次元を斬り裂けるわけか。どう対応すべきかな」

「だなぁ。流石にこの広い世界で次元刀ってのを持った妖怪を探して回るのは骨だぜ」

「せめて一本でも本物を見れたら、探知できるんだけど」

「それなら、一本だたらって妖怪を探したら良いんじゃないかなー?」


 アリス姉さんの言葉に、私は頷く。


「それが一番だね。まずは街を探してみよっか」

「待て待て蓮華。妖魔界に来たんだ、まずは母さんの魔力反応を探すのが先じゃね?」


 確かに。それが一番の目的だからね。


「そうだな。にしても、なんかこの世界は感覚が狂うんだよね……」


 いつも当然のようにあったものが無いというか。


「そだね、この世界はマナが無いから。人間の大半は、この世界では魔術が扱えないよ。魔法なら可能だけど、自身の魔力が尽きたらそれでおしまいだね」

「「!!」」

「この世界の住人、妖怪が扱う力は妖力と言って、これは魔力とはまた違う力なの。妖怪は基本的にこの妖力を使って妖術と呼ばれる力を扱うよ。魔法に似てるけど、似て非なるものだって思ってね」


 成程、違和感の正体はそれか。

 なんにせよ、私の体内にはユグドラシルゆずりの大量のマナがあるので、あまり関係なさそうだけど。


「まぁ蓮華さんとアーくんには関係ないけどねー」


 あっけらかんとそう言うアリス姉さんに苦笑する。


「俺には母さんの原初回廊があるし、蓮華はそもそもユグドラシルの魔力がそのまんまあるもんな。確かに関係ねぇわ」

「そゆことだねー。でも、いつも周りにあった力を使えないという事は理解しておいた方が良いからね。ここでは精霊達の力も行使出来ないから」

「!!」


 成程、マナの無い世界という事は、精霊達も居ないという事だもんね。

 色々と勝手が違いそうだ。


「とりあえず、母さんの力を探してみるね。……見つけたっ! ちょっと遠いけど、母さんの力だっ!」

「おお、やったな蓮華!」

「やっぱりこの世界に居たかー。でも、ならなんで帰ってこなかったのかな? 油断はしない方が良いよ蓮華さん、アーくん」


 アリス姉さんの言葉に、気を引き締める。

 そうだ、母さんが何の理由も無しに帰らなかったわけがない。

 何か異常があったに違いない。


「飛ぶのは悪目立ちしそうだし、走るよアーネスト、アリス姉さん」

「おう」

「うん!」


 そうして私達は、母さんの魔力反応があった位置へと駆ける。

 少し遠いけど、数時間も掛からずに到着できるはずだ。


 ただ、気になる事があった。

 母さんの魔力反応の近くに、大きな魔力反応がある。

 周りに点々とある力は、魔力ではないから妖力だと思う。

 その妖力もかなり大きな反応が複数ある、これは妖怪達なのだと分かる。

 それとは別で、母さん以外の魔力反応を見つけたのだ。

 それも、母さんの割と近く。


 母さんが気付かないとは思わないけれど……何か嫌な予感がする。

 母さんが帰ってこなかった時に感じた、何か予感めいたもの。

 速く、速く……! 母さんの元へ行かないと……!


読んで頂きありがとうございます。

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