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66話.妖怪④-1(マーガリン視点)

一話にまとめるには長くなってしまうので、分割します。

-蓮華達が妖魔界へと入る前日の夕方-



 ぬらりひょんに城下町を案内して貰った後、城に戻るとまた大勢の者から歓迎された。

 妖怪の王であるリオンにあれだけ好待遇を受ければ当然か。


「すまねぇ、待たせちまったか!?」


 余程急いで帰ってきたのか、息を切らせながらやってきたリオン。


「待っていないし、気にしないで。……良い城下町だったわ、お世辞抜きでね。頑張ったのねリオン」

「ッ……! お前にそう言われるのが一番嬉しいぜッ……! っと、歳を取ると涙もろくなっていけねぇなっ」


 まるで子供が大人に褒められて喜んでいるかのような、そんな純粋な表情のリオンに笑みが零れる。

 周りには威風堂々、勇猛なる王リオンと呼ばれ憧れている者が多いが、中身は子供のような純真さを持っている。

 まぁ、昔の話ではあるのだけど、どうやら変わっていないようだ。


「ちなみに、夕食を食べたら帰るわよ? 今の私には何よりも大切な子達が居るんだから」

「何っ!? マーガリンに子が出来たのかっ!? そいつぁーめでたいっ! その話詳しく教えてくれっ!」

「良いけれど、亀裂の件も進歩具合教えてよ?」

「おうっ!」


 そうして場所を移動し、私はアーちゃんとレンちゃんの話をした。

 ついつい熱くなって話してしまったが、リオンは終始笑顔で聞いてくれた。


「そうか、そうかぁ……マーガリンにも大切な子が出来たんだなぁ。俺もいつか会ってみてぇなぁ」

「ふふ、リオンなら二人共すぐに仲良くなれると思うわよ。あの子達は自分に好意的な者にはとことん優しいからね」

「ははっ! そりゃ、敵対する奴には容赦しねぇって事だよな?」

「ええ。中々にしたたかさもあるわ」

「そうか、そりゃ会うのが楽しみだ」


 アーちゃんとレンちゃんなら、リオンともすぐに打ち解けられるだろう。

 それから、話は亀裂の件へと移る。


「どうやら、酒呑童子の野郎が関わってるらしくてよ」

「あの鬼の子が?」

「ああ。密偵の報告じゃ……」


 リオンの話の途中、城全体が揺れる。


「なんだぁ!?」

「この妖気、大妖怪クラスね」


 リオンと共に窓の外を見る。

 もうじき夜になるとはいえ、突然の闇はおかしい。


「こりゃぁ……百鬼夜行かっ……!」

「!!」


 百鬼夜行……別名ワルプルギスの夜。

 色々な妖怪が夜中に列をなして出歩く事を指す場合に使われる言葉だが、ここでは違う。

 百鬼夜行とは、それ自体が妖怪なのだから。


「すまねぇマーガリン。俺は出なきゃなんねぇ」

「ふぅ、仕方ないわね。良いわ、手伝いましょう」

「!? 助かる」


 リオンは必要以上の言葉は言わず、素直に感謝だけを告げる。

 こういう所も好ましい。いちいち良いのかとか聞かれるのは時間の無駄だ。


 リオンと共に城の外へと出ると、多くの妖怪が好き放題暴れている。

 しかし、そこは妖怪の街。やられっぱなしではなく、やり返している。


「これ、見分けがつかないわね」

「マーガリンにゃそうだよな。っし、なら任せてくれ! 聞こえるか俺の民よ! 何も言わずに俺の妖気を受け取れっ!」

「「「「リオン様ー!!」」」」


 リオンが手を上げ、そこから光線のように光が降り注ぐ。

 リオンの妖気を受けた妖怪達は、体が光り輝いている。


「これで分かりやすいだろ?」

「全く、相変わらず出鱈目な妖力してるわね。この街に住む全員に妖気を付与するなんて……でも助かるわ。なら私もこれくらいはしましょうか……『ヴォルケイン・メテオスォーム』」


 空一面に、隕石群を召喚する。

 隕石一つ一つを制御し、体が輝いていない妖怪へ照準を合わせる。


「さぁ、降り注ぎなさい」


 手を上から下へと振り、降下させる。

 流星のように降り注ぐ隕石群は、百鬼夜行が生み出した妖怪達を貫き消滅させていく。


「俺の事を出鱈目とか言うけどよ、お前の方が出鱈目だと思うぜ、俺はよ」


 呆れ顔で言うリオンに苦笑で返す。

 そもそも、ここからが本番なのだ。

 妖怪達を倒した事で妖気が空へと浮かぶ。

 それが集まり、一つの形へと成っていく。


「っしゃ、やるとするかマーガリン!」

「ええ」


 手をバシンと合わせ、構えを取るリオン。

 私もGungnirを手に出現させ、油断なく構える。


「空亡……それに、貴女は……マーガリン、ですか。何故神界の重鎮が妖魔界へ……?」


 即戦いになるかと思えば、霧状の百鬼夜行は言葉を発した。


「貴方、自我があるの?」

「元々はありませんでした。百鬼夜行とは、行いであり現象でしたから。ですが、ある神が私に意志を与えてくださいました。そして、私に役目をくれたのです」

「役目?」

「はい。私そのものが世界へと至るように……空亡、そしてマーガリン。貴方達の凄まじい力、取り込みます」

「「!!」」


 百鬼夜行の妖力が辺りを埋め尽くす。

 妖魔界を上から塗りつぶすかのように。


「チッ……こいつ、俺達に直接ぶつけるんじゃなくて、切り取るつもりかよっ!」

「正面から戦えば勝てないと理解しているのね。でも、こんな事をしても無駄よ」


 リオンと私に結界を張る。これで私達を取り込む事は不可能だ。


「分かっています。今の百鬼夜行足る私では力不足。けれど、私の中に居る間、貴方達は動けない。その間に、貴方達を超えれば良い」

「俺達を閉じ込めている間に、他の妖怪達を取り込むつもりかっ!」

「ええ。そうした後ならば……私の許容量が増えた後ならば……貴方達も吸収できるはずです」

「……」


 百鬼夜行の言葉には耳を貸さず、意思を与えたという神について考える。

 その神は最初から妖魔界に居たのだろう。

 そして、今になって動き始めた事、また地上に出ようとした妖怪達。

 これらは全て繋がっているのではないかと予想する。


「マーガリン?」


 考え込んでいる私を、リオンが不思議そうな顔で見てきた。


『大丈夫よ。こんな場所はいつでも出れるわ。それよりも、少し時間を頂戴。こんな事をしでかした神には、お仕置きをしないといけないから』

『おおっ!? 頭ン中に声がっ!? こんな便利な魔法もあるのかよ……。了解だ、俺にする事があればなんでも言ってくれマーガリン』

『そうね、今はお座りかしら』

『俺は犬じゃねぇからなっ!?』

「何故貴方は無言で百面相しているのですか……?」

五月蠅(うるせ)ぇよっ!」


 百鬼夜行の言葉に笑いそうになったけれど、顔には出さない。

 私達を百鬼夜行の中に取り込めたと思っている神は、恐らくそう時間を置かずに現れるはず。

 だって、不安でしょうし? この私を取り込めると本気で思っているのなら、そのおめでたい頭に理解させてあげないとね。

 誰に手を出したのか、教えてあげるわ。

いつも読んで頂きありがとうございます。

次もマーガリンの視点となります。

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